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ソーシャルな神様、始めました  作者: 九重市 九十九
プロローグ:チュートリアル
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仕事終わりの安らぎの一時……の、はずが。

 当作品をご覧頂き有難うございます。

 初めて書く作品なので、拙い点も多々見受けられるかと思いますが、頭を空っぽにして楽な気持ちで読んで頂ければ幸いです。




 一人だけしか居ないオフィスに、キーボードを叩く音が鳴り響く。

 時刻はもうすぐ夜二十ニ時。

 当然外はもう真っ暗だ。


 夏の夜は蒸し暑いが部屋は空調が良く効いていおり、部屋の中は快適な温度が保たれている。

 部屋には一人しか居ないのに勿体無い事この上ない。

 だが部屋に一人だけ居るその男はその事に気づく気配すらなく、文明の利器による快適さを一人享受していた。


 涼やかな部屋の中。

 男はただ無心にキーボードを叩き続けていた。




 ―・―・―・―




 現在俺、光林 真也は、業務改善のプレゼン資料を作るために残業中だ。


 残業と言うと昨今の世論から想像するにブラックな企業に勤めているのか?と思われてしまうかもしれない。

 だが安心して欲しい。

 ウチの会社はホワイトとまで言わないが、十分にクリーンな会社だ。


 残業すれば手当が出るし、休日出勤も年に一、二回程度しかない。

 その証拠にウチがブラック企業なのだとしたら、平日の夜遅いこの時間に部屋にはまだ何人もの社員が残っていただろう。




 パソコンディスプレイの隅に映る時計を見る。

 もうすぐ二十ニ時だ。

 明日は休日なので、今日は残業が許されている二十二時ギリギリまで作業を進めるつもりだ。


 今やっている仕事は、業務改善についてのプレゼンテーション用資料の作成だ。

 このプレゼン資料作りは残業してやるものだと、我が社では昔から決っているらしい。


 基本的にプレゼンは四人程度のチームで行うのだが、定時前だとそれぞれの仕事があって時間を合わせづらいのだ。

 なので、全員が揃うことが出来る定時後が最も都合が良い。


 ウチの会社は残業することが少ない。

 そのため、このプレゼンは残業手当を稼ぐ貴重な機会なのだ。

 普通は残業を嫌がる人が多いそうだが、上記の理由からウチではこのプレゼンに参加を希望する人は意外と多く、俺も希望して参加した口だ。




 時計を見ると、二十二時までもう数分という所だった。


 俺はタイムカードを記入するために席を立つ。

 両手を上にあげて、腰を反らして大きく伸びをした。

 長時間作業で凝り固まった筋肉がほぐれて気持ちがいい。

 そのまま腰を捻って、腰骨の辺りからゴキリといい音がしたところで力を抜き、壁際まで行ってタイムカードを機械に挿し込んでから、また自分の席に座りなおす。


 腰の座りが悪いので座る位置を調整しながら、ポケットからスマホを取り出し手早くロックを解除。

 後は帰宅するだけなのだが、この静かなオフィスの雰囲気が好きなので三十分ぐらい休憩してから帰ろうと思っている。

 ないとは思うが、疲れて交通事故に遭っても困るしな。




 慣れた手つきで画面を操作し、今ハマっているソーシャルゲームを起動する。

 昔からゲームが好きだったのだが、就職してからゲームをする時間が減っていった。

 そのまま疎遠になり、いつかはゲームをやらなくなっていくのだと思っていたのだが、同僚から勧められたソーシャルゲームにハマって、今では昼休みや休憩時間にこまめにプレイしている。


 今やっているゲームは『神様の箱庭』という良くあるソシャゲだ。

 神様となって箱庭世界を成長させながら、箱庭世界から得られる信仰ポイントで英雄と呼ばれるキャラを手に入れ、それらを強化して敵対する邪神と戦う。

 なんとも有りがちだが、他のソシャゲと違った特色もあって中々飽きないゲームだ。


 その特色の一つが、登場するキャラの多さだ。

 毎週の様に新キャラが続々と追加され、その予算は何処からでているのかと噂されるほどのキャラ数。

 現時点でも二千キャラは超えているらしくソシャゲとしては破格のキャラ数だと言えるだろう。


 その上ガチャの種類も豊富だ。

 課金ガチャが無く、全てのガチャはゲーム内通貨である信仰ポイントを消費して引くことが出来る。

 その信仰ポイントも箱庭要素で時間経過で得たり、邪神と戦って戦果として得たりと、手に入れる機会が多い。

 要するに、ガチャをどんどん引けるので俺みたいなガチャ好きな人間にはぴったりなゲームなのだ。




 ゲーム画面を起動してすぐに、信仰ポイントを確認する。

 今日は昼休みからスマホを弄ってなかったので結構なポイントが貯まっていた。

 早速ガチャを回そうとガチャのラインナップを確認する。

 今日は夕方から夜までメンテナンスだったから、事前に確認したメンテでの更新内容が正しければ、また新しいガチャが登場してるはずだ。


 運営のお知らせ通り、新しいガチャが二つ追加されていた。

 一つは並行して実施されている攻略イベント関連のガチャだが、もう一つはイベントとは関係のない新規のガチャだ。

 イベントと関係ないガチャの名は、『蜃気楼の旅人ガチャ』。


 消費する信仰ポイントが高い代わりにレア度の高いキャラが出やすく、最高レアリティである☆9の英雄も出るらしい。

 当然このガチャ限定の英雄も入っているのだとか。




 イベント関連ガチャの方も気になるが、あまり攻略イベントに参加しない俺としてはもう一つのガチャの方が気になる。

 街の管理を効率よくするのにも英雄を使うので、高レアで能力が高いキャラは俺にとってもありがたい。

 何よりガチャで高レアのキャラが出ると嬉しい。

 俺は仕事で疲れた心を癒やすためにも、早速ガチャを回してみる事にした。 




 まずは十連続ガチャ……確かに全体的に高いレア度のキャラが出てるようだが、☆6が最高レア度だった。しかも、もう持ってるキャラだ。


 続いてもう十連続。一人だけ☆7英雄が居たが、残念ながら男だ。俺のキャラ名簿に男は必要ない。


 更に続いて十連続。ダメだ。最高が☆6だった。でも一人だけ新キャラで女性英雄だったので、一応あとで確認しておこう。


 もういっちょ十連続。また最高☆6で新規女性が一人だけ出た。これもあとで確認だな。


 まだまだ十連続……。


 って、もう信仰ポイントがないのか。

 ポイントも見ずに連続で回していたら、気付けばもう殆どポイントが残っていない。

 一応、あと一回分のポイントは残っているが……。

 もう一つイベント関連のガチャもあることを考えると、このガチャは一旦これで終わりにした方が良いのだろうな。




 だが、俺はもう一回ガチャを回した。


 いま回したいから回すのだ。

 高レア女性キャラがまだ一人も出てないのだ。

 俺は、仕事で疲れた心を癒やしてくれるような、可愛い女性キャラが欲しいのだ。


 もしも、このラスト一回で高レアの女性英雄が出れば、きっと俺は気分良く退社し家路につくことが出来るだろう。

 他に手に入れた二人と合わせて三人。

 三人目の新しい女性キャラが欲しい気分なのだ。




 そして出てきた英雄は。


 ん?性別が書いてない?

 って、レア度9のキャラだと?最高レアリティのキャラじゃないか。

 ぶっちゃけガチャを回したいだけじゃなく、可愛い女の子を集めたくてゲームをしてる俺としては、最高レア度のキャラでも女性キャラかどうか分からないと微妙なんだが……。


 というか、キャラの画像がよく見えないだと?

 ええっと、名前は……あれ?名前もよく見えない?

 いや、『ファントム』……か?

 ファントムってことは幻影?どういうキャラだこれ?

 ☆9だし特別なキャラか?それとも、何かの素材キャラなのか?




 そう思ったその時。

 俺の視界が急にぼやけ始める。

 何事かと思った時にはもう遅く、身体の感覚は既になくなっていた。


 もう、何が見えているのか認識できない程にぼやけた視界の中で、『ファントム』という名前の文字だけがくっきりと見えている。

 何かの病気かと思い、今オフィスに自分しか居ないことを思い出して戦慄する。

 しかし、次の瞬間には意識を失っていた。




 ―・―・―・―




 深夜に差し掛かったオフィスには、人の姿はない。


 無人の部屋を蛍光灯は照らし続け、空調は無意味に温度を保ち続ける。

 一台だけ点けっぱなしのパソコンは、操作の途中で退席したかのように資料作成ソフトを起動したまま、誰かが操作するのを待ち続けていた。


 翌朝。会社に来た同僚が不審に思い、上司へと連絡。

 上司がパソコンを点けっぱなしにした社員へと電話をかけるが、電話は通じなかった。


 数日後には家族から捜索願が届けられ、警察が現場を捜索するも足取りは掴めず。


 半年経つ頃には日々の喧騒に紛れ、時折噂されるだけとなり。


 数年経つ頃には、殆どの人々の記憶から、彼の存在は忘れられていった。




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