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浮気しましょう?

「もしかして貴方、私が好きなの?」


「……えっ」


放課後の教室。白く綺麗な髪と水色の瞳をした女の子ーー椿ちゃんこと愛嶋椿が私のことを静かに見ながら聞いてきた。

それに対して私ーー立花栞は小さく声をあげることしか出来なかった。


それは元々の性格が大人しいからといった理由もあるけど、それ以上にその言葉が図星で否定することもだからといって肯定することも出来なかったからだ。


私は目の前にいる少女ーー椿ちゃんのことが好きだ。

一目惚れだった。白い髪も水色に透き通った瞳も整った顔立ちも全てが好きだった。

だけども彼女のいわゆる美人と呼ばれるであろう姿を見るたびに自分が椿ちゃんとは不釣り合いなのだと分かってしまう。


椿ちゃんの瞳に写る自分の姿を見る。黒髪のショートヘアーに地味な顔立ち、瞳だけは椿ちゃんと同じく青色でだけどもそれだけ。


クラスメイトはそんな私を可愛いとは言ってくれるけど美人だとは言ってくれたことはない。


だから、何となくずっと自分は椿ちゃんとは恋人にはなれないと思っていて、だからその恋心はずっと黙っているつもりだった。


「その、なんでそんなこと聞くの?」


「それはね……」


椿ちゃんがそっとこちらに近づいてくる。そして私の頬を優しく撫でてくれた。

それだけで心臓は飛び跳ねて嬉しいやら恥ずかしいやらといった色んな感情が溢れてくる。

きっと鏡を見れば私の顔は滅茶苦茶赤くなってるんだろうなぁと恥ずかしくなった。


「私が栞のこと好きだからよ。だから……もし良ければなんだけど」


そういって椿ちゃんは私の髪の毛を触りながら腕を背中に回してゆっくりと抱き締めてくれる。

椿ちゃんの体ってこんなに暖かいんだって。

そして好きな人に抱き締められるのってこんなに幸せなんだって思った。


「一緒に浮気しましょう?」


頭が真っ白になる。勿論知っている。椿ちゃんに彼女がいることを。

そしてその彼女は私の幼馴染みで私の大親友であることも。

だからこれはそんな親友を裏切る誘い。それは分かっている。自分が最低だってことも理解している。


でもそれは頭の動きであって心の動きではない。

理解していたって好きって感情は収まるわけがないのだ。

私の心はその言葉に凄く嬉しいと喜んでしまっていた。


「……私も椿ちゃんのこと好き」


幸せすぎて思考が定まらない。だけどもそんな幸せの中で私は椿ちゃんの綺麗な顔を見る。

夕焼けで赤いのかそれともやっぱり私のことが好きだから赤いのか、それは分からないけど。

椿ちゃんの顔も赤くなっていた。だけどもきっとそれ以上に私の方が赤くなっている自信があった。


「……そう、嬉しいわ」


椿ちゃんは私の言葉に意地悪っぽい笑みを浮かべるとそっと顔をこちらに近づけて。

ーー優しいキスをしてくれた。

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