42. 竜の住処
目をキラキラ輝かせるリズに、わーキラキラおめめ可愛いなーと現実逃避を始めてみた。
ムリだった。
「え、ちょっと待って、魔導具……いやいやそれってあたしら聞いていいの?」
完全に予想外の方向から思いもよらぬ人に叩かれたような気分で、呆ける気持ちと困る気持ちが混ざって混乱する。
そもそもそれ口外秘とかじゃないの?
言って大丈夫なやつ?
「あ、えっと、外で大っぴらに公言しないなら、身内で共有するのはいいんだって。魔導具師の見解は重要だって」
「俺らは魔導具師じゃないぞ」
「え、あ! 身内ってそういう……ひ、秘密にしてて!」
魔導具師としての意見が欲しいだけで、今はまだ一般人には広めたくないって考えてそうだよね。
でもまああたしは半分関係者っぽい関係だし?
仮とは言えパーティメンバー同然のジオンとトールも、いざという時のための情報共有ってことで、外では知らないフリしてたら見逃してもらえるでしょ。
「わかってるって。ここだけの話な」
さりげなく頭を撫でるとは、ジオンもちゃっかりしてやがるぜ……なんてニヤニヤしながらクッキーをかじる。
でもそこは手を握る方が良かったかもね。
知人からの頭ポンポン撫では、年上枠というより保護者枠に通じるものがあるからね。
異性として意識してもらいにくそうだなって。
案の定、安心しきった様子で撫でられてるリズを見て苦笑するしかなかった。
ホントこの2人の道のりは長そうだわ。
「で、魔導具が関係してるってどういうことだ」
同じく呆れたように見てるかと思えば、遠慮なく詳細を聞き出そうと突き進んでいくトールに愕然とした。
ここだけの話とか言いつつ聞くの!?
いや確かに気になるけど!
どうしたら、とオロオロし始めたリズが哀れすぎる。
せめてジオンが止めなよ、と思えばこちらも興味津々って顔して話を待つ体制になってるじゃない。
えーとえーと……うん、よし、外では言わない。約束ね。
色々言っても、あたしだって気になってるのは一緒だもの。
ただの口約束ではあるものの、外では公言しないことを宣言して話を促すと、リズは諦めたように話し出した。
秘密の共有とかちょっぴりだけ悪いことって楽しいよね。
「あ、えっとね。白の捕食者が倒されたあと、奥地から謎の物体が出てきたんだって。それが多分魔導具みたいだって話をしてるらしくてね」
「みたい、なんだ?」
「ほとんど壊れてるんだって。本体部分のコアと、その一部である部品だけしか回収できなくて。どうも魔導具っぽいから意見が聞きたいっておじいさまが呼ばれて、一緒に調べたらしいんだけど、やっぱり魔導具だろうって。ただ、今とはまったく作りが違って……多分、古代文明時代の、って」
「っ!? 古だ(バシッ)ムグムグ!?」
「うるさい黙れ大声を出すな」
いやホントここだけの話だってのに大声はダメでしょ。
でも気持ちはわからなくもない。
もう千年以上前に滅びたと言われている、1つ前の文明の話なんて途方もない。
しかし魔導具ねえ……そういや飛び回ってたやつ、金属の部品っぽい見た目だったかも?
いや金属だからってのは安直なのかもしれないけどね。
「骨っぽい見た目の魔導具とかは珍しいよね」
「……え? あ、うん、そうだね」
とか考えてたら思わず関係ないことが口から出てた。
突然どうした、ってめっちゃ戸惑った顔で注目されてて、恥ずかしさにいっそ穴掘って埋まりたいんだけど。
「えっとね、骨系は強度と魔力伝導率とか抵抗値の問題で、あんまり適した素材がないんだ。一部の強力な魔物とかは素材として重宝されてるらしいけど、あまり出回らないね」
あー、だからわざわざ宵鴉は漆黒の悪魔に挑みに行ったのかもしれない。
あれは骨じゃなくて角だったけど。というか、あれレベルの魔物とかきつすぎる。
「ね、実際に骨を使った有名な魔導具ってあるの?」
むしろ何ならいいのか気になってきて、せっかくなので聞いてみた。
ジオンとトールも頷いてて、だよねーって気分になる。
「ええとね、最近なら200年くらい前に災害級魔物の獄炎楽鳥の骨から作られた空間遮熱魔導具──火山の溶岩の中まで入れるレベルの魔導具が有名かな」
有名だからって括りだとしても、最近で200年前なのね。
しかも100年に一度あるかないかで出る災害級魔物の素材を使って、溶岩……話で聞いたことあるだけだけど、岩どころか金属もなにもかも溶かしちゃうくらい熱いんだよね。
ちょっとスケールが違い過ぎるね。
「でも一番有名なのは、竜の骨で作った結界装置だね」
「……竜って、伝説ともお伽話とも言われてる、あのドラゴンのこと?」
「え、ドラゴンって伝説扱いなのか?」
「いや王都の方ではそう言われてるってことじゃないか」
「うん……王都の魔物は弱いし少ないから、深度4の魔物すらパニック起こすレベルの意識しかないかも……そっか、ドラゴンって、ホントにいるんだ」
そもそも王都は国の中心になる場所なので、なるべく外敵からの危険が低い場所を選んで作られることが多い。
安全なのはいいことだけど、時々こうして離れた土地との認識がかみ合わないことがあるんだよね。
「そうだよ。ドラゴンは空想の生き物じゃないよ。ずっと北の神竜帝国では今も目撃されるらしいし、昔はこの辺りにも住んでたって言われてるよ」
「お前、樹海の奥の山の名前、憶えてるか」
「え、っと……え、なんだっけ?」
「はは! まあ普段は話題に出ないし忘れるよなあ。あの辺まとめて『ドラヴァルト連峰』って言うんだぜ」
「竜の眠る山、なんて言われることもあるよ」
まさかのジオンにドヤ顔で解説されるとは! と愕然としつつも、まあ地元民なら何だかんだで馴染みもあるかと納得する。
魔物の森の奥に聳え立つ山に、竜の伝説。
なんかすっごい壮大な物語とかありそうじゃない?
なんてちょっとワクワクしながら、他にも珍しいものとか教えてよ! と、いつもと逆で今日はあたしが生徒になって色んな話を教えてもらった。
80年前に西の国で出た災害級のギガントタートルの甲羅で作った防壁だったり。
羽ばたきだけで一面を氷結させるグレイシアオウルの爪で作られた巨大な槍だったり。
砂漠の岩場の陰にしか咲かない花で作る火傷薬だったり。
そんな夢と冒険に満ち溢れた話を聞きながら、あたしたちの休日は過ぎていったのだった。
……まあそんな話を聞いたところで、明日からの探索に夢と希望を持ちすぎる気はないんだけどね!
なんたってあたしの理想は、身の丈に合った穏やかで楽しい日常を過ごすことだもの。
この素敵な日常を、あたしは満喫してやりますとも!
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『調査報告書
南部辺境領フォルナに隣接するラズヴェイン樹海にて未確認の浮遊型生命体と接敵。
特殊な形状と能力を持つ未確認生命体であることを確認。
非常に好戦的かつ強力なため鹵獲は困難と断定。
大規模戦術魔法による破壊を決行した。
作戦後は本体の大部分は消失したものの、幾つかの残存部品を入手に成功。
調査の結果、現地住民の協力を得て古代文明時代の自律型魔導具であると推定された。
残存部品の一部を本書とともに提出する。
また当魔導具の最初期出現地点の地下部に、膨大な魔素の集約を確認。
合わせて先日フォルナの冒険者ギルドへ、別地点の地下部に異常な魔力の集約地点が存在したとの報告あり。
近日中に当魔導具との関係性、類似性の有無を確認する。
蓋然性は低いが、ラズヴェイン樹海の魔素分布状況や当魔導具の好戦性を顧みるに、当樹海内に古代文明の遺跡が残存する可能性が皆無ではないと判断する。
近く南部辺境領フォルナ駐留の古代文明特設調査隊の編成を要請予定。
可及的速やかに対応願う』
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
これにて第二部、『選択編』完です!
セシルも色々抱えていたものを吐き出して、助けたい人を助けて、最後には契約書までビリビリに破いて、ずいぶんスッキリしたんじゃないでしょうか。
作者もスッキリしました(笑)というか、これを最初から考えながら書いてました(*ノωノ)もやせもやせー
面白かったのがエリオスと恋愛イベント?って感じになったところでブクマ離脱がやばかったです(笑)多分そうなるかなぁと思ってましたが、その通りの動きで驚きました(;'∀')
というわけでいったん一区切りです。このまま続きをやるか、新しいのをやるか悩みつつ、しばらくはこれを書いてた時に考えていた短編等を投稿していきたいと思います!
ここまで本当に読んでくれた皆様、本当に本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)!
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