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【第二部完】今日あたしは筆頭聖女を辞めました。  作者: そらのたまご
第1部 再出発編

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05 美味しいものっていいよね

(*´ノ旦`*)ズズー


 ぽかぽか暖かい陽射しが降り注ぐ大通りをご機嫌でずんずん進む。

 目指すは冒険者ギルド。

 そう、あたしは今日から冒険者になるのだ!


 それもこれも、ジルさまおすすめのお店で食べたリオネの実が美味しすぎたからである。

 鮮やかな薄紅色の果肉、ふわりと鼻にぬける香り、とろりとした食感、口いっぱいに広がる甘さ。

 サラダの端っこに親指大の実が二切れそえられてただけだけど、食べ物に感動で震えたのは初めてだった。


 見たこともない果物だったから、店員さんに根掘り葉掘り聞きまくった。

 いわく、ここ南部辺境領のさらに南に広がる魔物が生息する森でしか取れない果実で、昔から領地の中で育てようと試行錯誤しているけど、うまく実が成らないらしい。

 でも特に旬の時期はないようで森では年中実っているらしく、魔の森特有の魔力を含んだ土と空気のせいではないかと研究中なんだって。


 真っ黒な固い皮に包まれているけど、熟すと甘い香りが漂ってくるので食べ時は分かりやすいこととか。

 でも野生の木が生えている場所の近くに狐型魔物の巣があるので、あまり持ち帰ってくる人はいないんだとか。

 そんな直接関係ないことまでしつこく聞き出してみた。


 結論は出回りが少なく、値段も高め。

 たまたま入手できた時にしか出さないので、今日食べに来た人はすごいラッキーだったらしい。

 ちなみに両手で包めるほどの実丸ごと1つ分で、今日の食事代全部合わせたくらい。


 お金はたまーのご褒美な超贅沢品と考えたら出せなくはない、けど、そもそも実物が売ってない。

 教えてもらった情報によると月に2~3度見かけるくらい。

 だからひとまず他の美味しいものを求めて、宿の人とか街の人とか、そこら中でいろんな人に聞いたおすすめの店巡りをして、その合間に市場とか見回ってたけど、1度も見つけられなかった。


 おお、リオネの実よ……こんなにあたしをトリコにしておいて、なんて無情な……!


 嘆いている間に、さらに困ったことが起きた。

 ──美味しいものが多すぎるんだが?


 あたしはこれでも王都の商会育ちなので、平民の中ではそれなりにいい生活をしてきた自覚がある。

 でもこの街では、魔物の森でしか見ない魔物とか植物とか珍しい素材が多い上に、それらを無駄なく消費するための試行錯誤の時間が桁違いなの。


 魔物の森がすぐそばにあるということは、当たり前だけど魔物の脅威に直面することもたくさんある。

 非常時には頑丈な外壁を閉鎖し、街ごと籠城することもあるらしい。

 自給自足をモットーに食料生産にも力を入れているし、そんな場所だから無駄を排除し、節約、倹約することに余念がない。


 そうしてできたご当地品の多いこと……!

 しかもクオリティめちゃ高。

 閉じこもってる間に出来ることなんて限られるから、どうせならと普段は出来ないような挑戦や研究を始めるらしい。


 今まで食べなかった魔物の肉を、どうにか美味しく食べられないか試したりとか。

 陶器の新しい絵入れや焼き方を試してみたりとか。

 その辺の雑草に潜む成分を調べてみたりだとか。

 いつもゴミとして捨てていたものを使って、いろんな人がいろんな実験を始めるらしい。

 それが積もり積もったら、時々すんごいものが出来たりするんだって。


 何それ……って、さすがのあたしも最初は絶句した。

 でも王都のものよりよっぽど心惹かれるものとか、いっぱいあるんだけど。

 え、これ実家に知らせた方がいい感じ?

 ちょっと遠いけど仕入れルート作っても損しなくない?


 とか悩みつつ楽しく過ごしてたら、リオネの実に続いてあたしの心を震わせるものに出会ってしまったの……。

 ニトロバードの卵という、これまた魔物の森特有の食材に!


 オレンジがかったオムレツは、塩だけというシンプルな味付けだけど濃厚なのにクリーミーとか脳が混乱する美味しさだった。

 ニトロバードの骨で取った出汁で野菜と肉を煮込んだスープもめちゃうまだったけど、あたしは断然、卵に惹かれた。

 でもリオネと異なり、こちらは卵1つが子供の頭ほどあるらしい。

 本体の大きさははたしてどれくらいなのか……そもそもどうやって持って帰ってきたんだろう。

 さすがにその辺のことは関係者に聞かないとわからないね。


 ってことで、おすすめ料理に加えて魔物の森とか冒険者のことも情報収集開始!

 いろんな仕事の人の目線から見る魔の森のことを教わって、元冒険者って人にも話を聞けた。


 ふむふむ、奥に行くほど魔力がこもってて、魔物も強くなるのね。

 ほほう、この木材の価値がそんなに高いとは。

 え? 毒があるのに人気なの?

 採取に討伐、護衛……この辺は何となくイメージ出来るかも。

 へー! 荷物ってそうやって運べるんだ!


 知れば知るほど、いつの間にか魔の森に興味津々だった。 

 危ないから魔の森には行かないように、って言われたこともあるけど、期待と好奇心がどうにも止められない。

 しかも他の料理にも香辛料やら付け合わせやら、チマチマと魔物の森産のものを使ってるって聞いたらさー、もう結論なんて決まってるよね。


 出回らないなら自力で取ってくる、これしかない!

 しかも出費を抑えつつ逆にお金を稼げるとか一石三鳥サイコー!

 ジルさまから貰った分がたっぷりあるとは言え、お金は有限だからね。


 こうしてあたしは、聖女の次は冒険者になることを決めた。

 そしてこれから手に入れるだろう美味しいものを夢見て、にっこにこでギルドに向かうのだった。


最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')

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