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今日あたしは筆頭聖女を辞めました。  作者: そらのたまご


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20/20

20 セシルという新しい友人①

━━(o'д')从('д'o)━━


リズ視点です


 視界をふさぐ大きな茂みを抜けると、そこは一面の青い花畑だった。

 ひとつひとつは小さな花だけど、ぽっかり開いた空間の地を埋め尽くす優しい青色は、とても鮮やかで印象的な光景だった。


「お、何ココすげーじゃん」

「ネティラの群生地か……圧巻だな。せっかくだからここで休憩にするか」

「リズもそれでいいか?」

「え、あ、うん。大丈夫」

「よーしじゃあ、あの辺でメシだ!」


 この花畑を見ていると、同じ髪色をした新しい友人のことを自然と思い出してしまった。

 そのせいでちょっと反応が遅れて焦るけど、わたしが時々ぼんやり考え事をする癖があることを知っている年上の友人たちは、ちっとも気にしないで場所を選んでる。

 そういう大らかなところに、わたしはいつも救われている。


 だから2人が──ジオンとトールが困っている時は、わたしも2人を助けたいと思ってる。

 いつからかそんな気持ちが強くなって、冒険者が使えそうな魔導具を作っては、2人に渡して試してもらっている。

 役に立つなら嬉しいし、使い勝手が悪いようなら改良する。

 そうして2人を手伝うことも魔導具作りの経験になるからって、遠慮する友人たちに強引に押し付けて困らせたこともあった。


 ちょっと強引だったかな、と今なら思う。

 でもそれくらい、2人の役に立ちたかった。


 ──わたしは、小さい頃から魔導具に夢中だった。

 生まれた町は音楽や絵画といった芸術が盛んなところで、両親は魔導具に関わっていなかったけれど、有名な魔導具師だったおじいさまから贈られた魔導具が家にはたくさんあった。

 わたしは一日中でも魔導オルゴールを眺めていられたし、観察してはその仕組みを想像していた。


 でもそんな幼児は、他の子供には異質に見えるもので。

 本当に小さい頃は一緒に遊んでいた子たちも、話が合わなくなって少しずつ離れていった。

 容赦なく「リズちゃんって変なことばっかり言ってて、ぜんぜん面白くない」って言われたこともある。


 どんどん孤立して、次第に部屋にこもって魔導具を触っているだけになったわたしを心配して、両親はおじいさまに会いにフォルナまで連れてきてくれた。

 初めて訪れたおじいさまの魔導具店は、宝箱みたいだった。


 夢中になって魔導具を見て、おじいさまに付いて回って、質問漬けにして、資料や文献を読みふけっていた。

 そんな風に生き生きと過ごす娘を見て、両親はおじいさまと相談して、おじいさまの住むこの街にわたしを預ける決心をしたらしい。


 どうしたいか聞かれた時は、両親と離れることが不安で泣いた。

 でも同時に、魔導具への興味と渇望と──周囲になじめない生活に戻ることへの恐怖を抱いた。

 ここなら、おじいさまと一緒なら、わたしも『変な子』じゃなくなれるのかなって……一度でもそう思ったら、家に戻る勇気は出てこなかった。

 わたしは『普通』から逃げる道を選んだんだ。


 その時からわたしはフォルナの街でおじいさまと暮らしている。

 最初の頃は何もかもわからないことだらけで、随分とおじいさまに迷惑をかけた気がする。

 特に人間関係に関してはひどいものだった。


 知らない人が怖くて、優しく話しかけられても声が出ない。

 おじいさまや両親に近い大人ならまだしも、同年代の子供相手には顔を上げることすらできなかった。

 そんな自分がイヤで仕方なくて、やっぱり家に引き籠るように魔導具のことばかり考えて過ごしていた。


 2つ年上のジオンに出会ったのは引っ越してきて1年近く経った頃だった。

 大きな商会を経営しているジオンのお父さんが、仕事の依頼でおじいさまの魔導具店に訪れた時に、ジオンも一緒にやってきたのだ。

 その日が初めて、お父さんの仕事に同行を許された日だったらしい。

 三男だから将来的に商会に携わるかはわからないけど、色々経験しておいて損はないので、とおじいさまとジオンのお父さんが話しているのを、わたしは店の隅っこの台の後ろで聞いていた。


 台の後ろなのはたいした理由はない。

 たまたま店の掃除をしていたわたしは、来客に驚くあまり裏に下がることも、ましてや出ていくことも出来ずに隠れていただけだ。


「ねえ、何してんの?」


 俯いて小さくなっていたわたしは、突然話しかけられて飛び上がりそうになった。

 実際にひぇって言ったような気もする。

 わたしの驚きように向こうも同じように驚いてから、突然わくわくした顔で隣に座り込んできた。


「かくれんぼ? オレも隠れたい!」


 意味が分からなかった。

 ちがう、って言いたいのに声が出てこなくて、無言で小さくなるわたしを気にした様子もなく、彼は同じように身を縮めて話しかけてくる。


「オレね、ジオンって言うんだ。あのおじさんの子供。きみは? おじいさんのお孫さん? 名前教えて? いま何歳? あ、オレ10歳な」


 にこにこ笑いながら矢継ぎ早に話しかけられて、わたしは返事ひとつできないまま固まっていた。

 何を言えばいいのかも、どうしたらいいのかもわからなくて、ただ俯いてやり過ごすことしかできなかった。

 

 少しして息子の姿が見えないことに気付いたおじさんがわたしたちを見つけ、固まっているわたしを見て、何かあったのだと勘違いしたらしく慌てて謝ってきた。

 さっきまであんなに勢いよく話しかけてきたのに、今はおじさんの隣でしゅんと落ち着かなさそうにしている。

 その落差が少しだけおかしくて、気付けばわたしは笑っていたらしい。

 すると、それに気付いたジオンがぱっと顔を明るくした。


「そうそう、かわいい顔してんだから笑ってろよ。今日はもう帰るけどまた来るからさ、そん時は友達になってくれよな!」


 好意も悪意も他意もなく、思ったことを言ってるだけってわかる、裏表のないまっすぐな心が垣間見える言葉だった。

 混乱しながらも、その時思ったのだ。

 きっと彼は嘘をつかないし、人を傷つける言葉も吐かない人だって。


 わたしの臆病な心が、ちょっとだけ踏み出してみたいなって、友達になれるかなって、初めてそう感じた人だった。

 何年も殻に閉じこもっていたのに、ほんの数分のきっかけで簡単に開きたがるのだから、我ながら単純だなって苦笑いしか出ない。

 心の底では寂しかったんだろう。

 それ以上に怖がりだったけど。


 ジオンならいいやって思わせてくれる、彼はそういう魅力を持っていると思う。

 初めて会った日から、わたし的にはたった半年で名前を呼び捨てにできるようになって、1年後にはジオン繋がりでトールとも親しくなった。


 わたしの3つ年上のトールは、お父さんが元冒険者で、今はジオンの商会で護衛として働いてる。

 ちょうどわたしとジオンが会った頃にお母さんを病気で亡くしていて、お父さんが護衛仕事で街の外へ出る時に、1人で過ごしていることを知ったジオンが、じゃあ一緒に遊ぼうぜ! と誘ったのだとか。


 心配とか世話するとかじゃなく遊ぼうぜ、なところが心底ジオンだなって思う。

 ちなみにトールも同意見。

 でもめちゃくちゃポジティブで楽しいことを見つけるのが得意で、猪突猛進なとことかちょっと手が掛かるとことか、勇猛なのに抜けてる、そんなジオンだからわたしたちは心を開いたし、大切に思っている。


 いつの頃からかよく3人で話をしたり買い物に行ったりするようになって、性別関係なく仲のいい友人として過ごしていた。

 でも15歳になったトールが冒険者登録をして、そこから少しだけ関係が変わった。


 お父さんについて護衛の仕事を教わったり、街を離れることがあったりして、自然と3人で集まる時間が減った。

 トールの姿を見て思うところがあったのか、翌年にはジオンも冒険者登録してしまって。

 まだ具体的な将来について想像できていなかったわたしは、取り残されたような気持ちで、2人を待つ時間にこれからのことを何度も考えた。


 色々考えても、最後に行きつく先は『魔導具が好き』なことと『命がけの職を選んだ2人の役に立ちたい』ばっかりだった。

 だったら本当に役に立てるようになろうと思った。

 そして本格的に魔導具について学ぼうと決めて、正式におじいさまに師事することにした。


 きっかけが2人のためだったのは、魔導具師として不純だろうか、と考えたこともある。

 でもおじいさまは、動機よりもその先の努力と結果を重視する人だったから、理由を問わず真剣に指導してくれた。

 ただ、指導はめちゃくちゃ厳しかった。


 魔導具は生活を豊かにするものであり、命を守ることにも脅かすことにも繋がるものだと、おじいさまはことあるごとに説いてきた。

 分かっているつもりで最初は分かっていなかった。

 精製の失敗で大けがをした時、痛みと恐怖と、命の危険を感じてやっと理解した。

 部屋のランプがちゃんと光らないって言われて、『ああ失敗作ですね、ごめんなさい代わりをどうぞ』、じゃ済まないこともあるんだって。


 安心して使えるように。

 誰かの命を脅かさないように。

 誰かの命を守れるように。


 それが、わたしの魔導具師としての矜持だ。

 

 だからこそ、ジオンとトールに渡す魔導具も、ただ作って終わりにはしたくなかった。

 実際に使ってもらって、問題があれば改良する。

 使った感触や意見を聞けること自体、わたしにとっては大きな経験になる。


 そうして2人のための魔導具作りに力を入れているうちに、机の上で考えるだけじゃなくて、自分の作る魔導具が実際にどう働くのかを確かめたい気持ちが、次第に大きくなっていった。

 それに、祖父の手伝いをするにも、採取や手続きのために冒険者の資格はあった方がいいと思った。

 だから16歳の時に、わたしも冒険者登録をしたんだ。


 危険のある森に入るまでには、準備や訓練で登録からさらに1年かかった。

 魔導具の試運転をするだけなら、必ずしも奥地まで行く必要はない。

 だからしばらくはFランクのまま、深度1から2の辺りをうろうろしてるつもりだったのに……何で森に入って半年でDランクなんだろう?

 いまだにちょっと理解できてない。


 いや、うん。どう考えても新しい友人のせいなんだけどね。


最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')

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