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出逢えた奇跡  作者: 琴音七色


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第24章『出逢えた奇跡に感謝します』

第24章『出逢えた奇跡に感謝します』



    1 花で告ったガラスのオジサン



 既に帰宅していた愛藍はスマホでその光景を目にしながら微笑み、Alessaとお腹の子を撫でた。そして、しばらくして晃太郎が帰宅した。会見場から持ち出したままの形で青いバラを差し出して愛藍を後ろから抱きしめた。

愛藍が


「お帰り、パパ! ……分かんなかったかぁw ベビーシューズ。……お母さんに持っててもらおうかな!」


 そう言って晃太郎から離れて、亡き母の写真の横へ置きに行った。愛藍が晃太朗のもとに戻ると、今度は晃太朗が愛藍の手を取り、もう1つプレゼントを差し出した。


「はい、これ……」


……それは、髪留めだった。


「あれ……、また作らせたの? …………えっ? 待って、これ……って……」


 愛藍は驚いた。……そう、今、晃太朗が愛藍の手のひらに乗せた髪留めは、愛藍が初めて晃太郎と出逢った日、スタジオで失くした母親からのプレゼントの髪留めにそっくりのものだったからだ。


「えっ、どうして?」


「ごめん、実物じゃないよ。実はね、俺、あの日スタッフさんの一人から聞いたんだよ、髪留めと愛藍のお母さんのこと。臨時で司会務めたことで収録後にお礼の挨拶をされて少し話し込んだんだよね。その時に色々と聞いて。そのスタッフさんと探したけど、なかったんだよね。で、編集の人にリハの映像見せてもらって映ってたから。で、富田に画像見せて作ってもらって。15年前に一度、愛藍宛で事務所に送ったんだよ。でも、その後、何も連絡なかったし、再会してからも何も話題にならなかったし、あのスマホの日記にも“初めて髪留めもらった日”って書いてあったから、愛藍の手に渡ってなかったんだろうなぁって。で、そのデザイン画がやっと見つかったって連絡来たから、また作らせた。だから、これで3つ目w」


「あーーっ、富田さんの『何個も』って、そういうことだったんだ!?」


「そう、そういうことw」


「じゃ、私にだけなんだね! プレゼントしたのは。良かったー。…………えっ、待って、15年前? あの時、数十分しか会ってないのに、わざわざオーダーメイドで作ったってこと?」


「ん? ……うん………………」


「なんで?」


「えっ、いやっ………………かわいいなぁって思ってw」


「えっっ、怖! ……私、あの時15歳、……えっ、未成年……えっ、こわーいっ。初対面で……えっ、初対面でオーダーメイド? こわーい! こわい! こわい! こわーい! 」


「愛藍………………やめて……、そういうの、本当にやめて……。あのね……40超えるとねぇ……本当……ガラスのハートになるんだよ。そういう歳のこととか……結構くるんだよ。…………えーーっ、っていうか、ちょっと待って、だってさ、中2の割には何か落ち着いてて大人っぽくてさ。しかも、お母さんからの贈り物失くしたって聞いたからさ……デビュー寸前で…………母親が……って聞いて、しかも、お父さんもいないって……。何とも言えない気持ちになってさ」

(晃太朗が再び愛藍を後ろから抱きしめる)


「え? でも、初対面でそんな……」


「うーん……、自分でもよく分からなかったんだよなぁ。だけど、あの時スタッフさんに愛藍の話を聞いて……何でかな……俺が見つけてあげたい! って思ったんだよね。でも全然見つからなくて」


「こうさん…………」

(愛藍が晃太朗の腕をギュッと握った)


「あとは、まぁ……、接点だけでも持っておきたいなぁと思ったんだよ。っていうか、なんだよ、さっき手紙で『その時に私のほうが先に晃太郎さんのこと好きになった』とか言ってくれてたじゃん。両想いだったんじゃないの? 俺たち。違うの?」


「ンフw あれはさぁ~、フフw ………………さぁ、おいで!」


 愛藍が一度、晃太郎から離れて振り向き、両手を広げて晃太郎を抱きしめた。そして


「……だったんだね! ……両想い!」


「……はぁ、あの後もうちょっと頑張ってたら、あの頃から俺たち付き合えてたってことなのかなぁ……。そしたら、もっと早く夫婦してたのかなぁ……」


「ううん、いい。私はいい。あの時ダメだったけど、ちゃんと、こうしてまた逢えたもん。これでいい。っていうか、あの時から始まってたとしたら…………犯罪だからねw」


「だよな……w」

 

「お母さんが止めたのかもねw 大人になるまで待てあげてって。…………台本すり替えて良かったー!」


「あれなっっ! すっごい嬉しかった!」


「だって、めちゃくちゃ勇気出したもん!」


「いやっ、俺だって、スマホ渡したり、花買ったり、めちゃくちゃ頑張ったからな!」


「なんで? 何に? 何を? お花買うのに何をどう頑張ったの? 教えて! ねぇねぇ、何を頑張ったのぉ~???」


「いやっ、だから……、意味をさっ……店員さんにさぁ……」


「はーい、はーい! 店員さんにぃ~、何て言って~、お花をぉ~作ってぇ~もらったんですかぁぁぁ――――?」


「だから……、昔……、好きだった子にまた逢えて……すっごく嬉しいってのが伝わる花ありますか? って」


「ンフw 直ぐ分かったよ! 普通ピンクとか赤なのに“青で12本”って……ねぇ~。花言葉、知ってたしw」


「どういう意味なの?」


「んーん、誠実とか……夢が叶うとか……神の祝福……、あと……出逢えた奇跡とか…………。で、12本だから『結婚してください!』とかww」


「おぉーっと、初回でプロポーズしちゃってんじゃん、俺w 恥ずかしい……」


「www  …………………………こうさん……」


「ん? ……どした?」


「Alessaを守ってくれたこと、父を見つけてくれたこと、それから、母のくれた髪留め探してくれてたこと、ありがとう。お仕事のことも……他にもたくさん、ありがとう! こうさんとこの子に出逢えたこと、感謝しています……」


「……俺もだよ、ありがとう!」


 愛藍を抱きしめている晃太郎が横から顔を覗き込んだ。……愛藍は、やっぱりはにかんでいた。


「おぉーっと、こんな時間だ。愛藍、体調は?」


「ん、ハニージンジャーティーで一先ず落ち着いたかな」


「よし、じゃ、飯でも食べに行こうか! Alessaも入れるお店」


「うんっ!」



    2 由美子は生きています……



 つわりを考慮して、作らなくてもいいように愛藍へ外食を提案した晃太郎。そして、外食先でいつ何があってもいいように、古谷からもらった今治タオルを数枚出してきて愛藍のバッグに入れた。車に向かい、晃太朗がAlessaをまず後部座席に乗せ、愛藍を助手席に乗せてドアを閉めて出発した。愛藍は、そんな紳士的な晃太郎が大好きだと再認識しながら、助手席で外を眺めていた。すると、到着したのは、犬連れOKのオシャレなレストランだった。予約済みで個室に案内され、中に入ると…………


「Schön, dich kennenzulernen. Ich wollte dich treffen, Aila」


 晃太郎が愛藍に『お父さんだよ!』と伝えた。そして、愛藍の父が話を続けて両手を広げた。

 

「Du bist sehr hübsch.Du siehst genauso aus wie Yumiko. Ich habe alles von Kotaro gehört. Herzlichen Glückwunsch zu Ihrer Hochzeit.Lass mich dich umarmen」


 愛藍は、晃太郎に

 

「えっ、待って! ちょっと何言ってるか分かんない! でも、何となく……。この粋な計らい、ビックリだけど、いつか来るとは思ってたw こうさん、本当サプライズ好きだよね! ……手、広げてるから、とりあえず行ってくるね!w」


 と言って父の胸に飛び込んでみた。前回ドイツに同行してもらった通訳がついていた。


「初めまして、通訳の渡邉結友(わたなべゆうと)です。先程の会話から伝えさせていただきますね。……初めまして。逢いたかったよ、愛藍。とても綺麗だ。由美子にそっくりだ。晃太郎から全て聞いたよ。結婚おめでとう! 抱きしめさせて……」


「あっ、じゃ、私の話も通訳お願いします。……私も逢えて嬉しいです! …………今、私のお腹の中にあなたの孫がいますよ……」

 

「Super! Glückwunsch! (おお、おめでとう!)」

 

「ありがとう! 私の名前の“愛藍”は、愛するの愛と花の藍で愛藍と書きます。母の由美子が名付けてくれました」


「Uh-huh……(うんうん)」

 

「藍の花言葉は『あなた次第』です。母は自分が叶えられなかった愛や夢を私に託しました。私がシンガーになれたのは母の強い愛があったからです」


「Uh-huh……(うんうん)」


「母がその道を全力で支えてくれたのは、母が愛した人と同じ音楽の道だったからだそうです」


「Uh-huh……(うんうん)」


「デビューする少し前に母は亡くなりました。天涯孤独だと絶望したこともあったけれど、そうでもないって思えるほど、たくさんの人に支えられてきました。中でも最も私を支えてくれた人が、今、私の後ろにいます」


「Ich weiß. Es geht um Kotaro.(知ってるよ、コタローだろ)」

 

「私が笑顔でいるだけで幸せだ!って顔して見つめてくれたりw 車の運転が下手でも馬鹿にしないで上手になるまで根気よく教えてくれるし、上手になれば褒めてくれるし。歌って踊る時の私も、料理してる時の私も、全部愛してくれるし、私が間違った方向に舵を切れば戻してくれて、危ない目に遭えば全力でそこから救い出してくれる頼もしい人です。父性を感じる素敵な人です」


「Uh-huh……(うんうん)」


「デビューした日に母からもらった髪留めを失くしたんですが、その時に彼と出逢いました。時を隔てて再会して、たくさんのことを2人で乗り越えて夫婦になれました。髪留めの紛失は母の計らいで、私と彼を引き合わせてくれたのだと思っています。あと、こうしてお父さんに逢えたのも、お腹に赤ちゃんを授かれたのも、彼の強い愛があるから。母が私の名前に込めた願いを叶えて、私はたくさんの愛に包まれて、とても幸せに生きています。私が彼への愛を貫くことが、母の愛の続きになると思っています」


「Das stimmt! Aila…………Yumiko…………Ich wollte Yumiko wiedersehen.(そうだな! 愛藍……由美子に……もう一度、由美子に逢いたかったよ。)Das erste, was ich Yumiko geschenkt habe, war eine Haarnadel.(俺が初めて由美子にプレゼントしたのも髪留めだよ)」


「えっ、そうなの!? 凄ぉーい! 」


 愛藍が話し終わると、通訳を含めて自分以外が皆、号泣していた。涙を奪われた愛藍は、仕方なくバッグから今治タオルを出して男どもに渡していった。



    3 皆の愛を紡ぐ人



 先にAlessaの食事が来たので、愛藍が少し離れたところでご飯やお水をあげていた。みんなの食事が来るのを待っている間に、晃太郎が話し出した。


「愛藍、ここから、ちょっと仕事もかねて話すけど……。実は、愛藍が無事に移籍出来た背景にお父さんのサポートもあったんだ。Delightsに掛け合ってくれたんだよ。その恩返しと出逢いを記念して、俺たちの事務所設立後の第一弾をAilaのニューシングルとアルバムのリリースでいきたいと思ってて。で、先ほど新しい命が芽生えたことを知りましたしww ……お腹の赤ちゃんのために作ってあげないか?(愛藍が笑いながら数回うなづく) で、愛藍が作ったその楽曲のストリングスをお父さんとそのメンバーで演奏やレコーディングしてくれるって話で、もう、お父さん側がノリノリなんだけど……。どうかな?」


「ヤバい……、こうさん、どうしよう…………」


「…………分かった、そっち行くw」


「was ist passiert? (どうした?) Aila, alles in Ordnung? (愛藍、大丈夫?)」


「あー、渡邉さん、えっと、お父さんに『橋が決壊した』って伝えてもらえる?w 『修復工事に時間がかかる』って。あと、嬉し涙だから心配いらない! って」


「w ……了解です!」


晃太朗が愛藍のもとに向かい、頭を優しくなでながら


「びっくりしちゃった?」


と聞くと、愛藍が突然叫んだ。


「あーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!」


「何? どした? …………どした? 愛藍?」


「……ん? うっっ…………動いた? かも……???」


「えっっっ、マジで?」


「うん…………、たぶん……マジのやつ! ぷに! って、一瞬……」


 晃太郎が愛藍のお腹に手を当てると……微かに胎動を感じた。晃太郎は、嬉しすぎて声も出ず、口を大きく開けて驚いていた。


「Was dieses Mal passiert ist? (今度は何が起きたの?)」


「渡邉さーん、赤ちゃん動いた! って伝えて……」


「Das Baby bewegte sich im Bauch! (赤ちゃんが動きましたよ)」


「Oh!  Glückwunsch!  コタロー!  Komm hierher und trink mit mir.(おお、めでたい!コタロー、一緒に飲もう)」


 通訳から父の言葉を聞いて、晃太郎が愛藍に言った。


「なっ、……酒好きだろw」


「うんw なんか…………ごめんね。飲まれないでねw …………でも、こんなお父さんとの奇跡の出逢いをくれたのは……こうさんだよww」


「最後、笑ってんじゃんw …………んーん、責任感じるねーw」


 と和んだところで、晃太郎は、愛藍のお腹に顔を近づけて


「今度は、ちゃんと約束守って逢いに来たんだな! 偉いぞw」


 と言って、かつての病院でのエピソードを全て晃太朗が聞いていたことが露見した。愛藍は、やっぱりなぁ! といった表情で晃太郎を見つめた。そして、幸せを嚙み締めながら気持ちを伝えた。


「こうさん……」


「ん?」


「私にも、この子にも、ちゃんとパパがいるね。ありがとう! 大好きだよ」


 愛藍は、お腹に手を当てている晃太郎の手に自分の手を重ねて、はにかんで笑った。


挿絵(By みてみん)


End

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