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魔石が欲しかっただけなのに  作者: かに
難易度はルナティック
38/39

チャンスは効果的に活用するタイプ

いやー、大漁大漁!


僕は積み上げた赤魔石を見て、とても満足していた。


これだけあれば、ミッションクリアした上に、いくつかの魔法をレベルアップしてもお釣りがくる。リンとヒョウにもお裾分けできるな。


あの男は、二度と魔法が使えなくなったけど、手加減はしておいた。無駄に丈夫だったし、死にはしないだろう。妙なことを言いふらさないように、ちょっぴり記憶もいじっておいた。リンたちにちょっかいを出すようなことは無いはずだ。


今回は、なぜか軍隊に入ったり、通信しながら仲間の補助したり、なんだか疲れたけど、結果的には大収穫でよかった。


さっそくミッションをクリアしておこう。


「実績解除:空間跳躍ワープを解放しました」


いつものアナウンスが響く。


さっそく、ワープ機能を宇宙船に搭載しなければ。そのために必要な材料は、赤魔石と、あれと、これと・・・


コンコン


「どうぞ」


リンとヒョウが談話室に入ってくる。


急いで赤魔石を懐へとしまう。


「ただいま戻りました、シュゲン様」


師匠マスター、戻りましたッス!」


元気そうで何よりだ。


「このたびは、助けていただいて、ありがとうございました」


「さすが師匠マスターっす。先輩でも苦戦した敵を、一発KOだったんスよね!?」


一発KOではなかったけどね。といっても、できなかったわけじゃなくて、しなかっただけだけど。


僕は二人の賞賛をうけて、新たな満足感を得ていた。


・・・しかし一発KOとか、こっちの世界でも言うんだ。


「それで、シュゲン様、ひとつお願いがあるのですが・・・」


「何?」


「助けた少女のことです」


少女?


ああ、そういえば。あの賢者とか言い張ってた男が魔力を吸い出していた子がいたな。たしか、蒼色の髪の毛の女の子だった。


「どうかしたの?」


「ゲートが完全に壊れていまして・・・治すには、わたしたちと同じように、ステラへ連れていくしかなさそうです」


はあ、なるほど。


「彼女を助けたいの?」


「・・・はい」


リンがうつむく。


前にも同じことがあったな。


そうして、助けたのがヒョウだったりするのだけど。


「お願いっス、師匠!あの子を助けてあげてほしいっス!」


透き通る碧い瞳で、祈るように僕を見るヒョウ。


「うーん」


僕は腕を組む。


正直、助けることに問題はない。


でも、助けるとなると、この二人の手前、あれをやることになる。


「あれ」だよ「あれ」!


僕は、リンとヒョウの首に付けられている、革の首輪をちらりと見た。


そう、隷属の首輪のことだ。


いい加減やめたいと思っている。


っていうか、これって偽物なのに、どうして彼女たちは気が付かないのだろうか?


すぐ気が付くだろうと思って、あえて黙っていようと思ってたのに。いつまでたっても気が付く気配がない。それどころか、僕が言うことに全力で従ってしまう。


ひょっとして、間違って本物を付けてしまったんじゃ・・・と思い、「鑑定」してみたけど、何度調べても「ただの革の首輪」だった。


いったい、どうなってるのか・・・


「もちろん、シュゲン様には絶対服従を誓わせます。彼女もその覚悟です」


ああ、やっぱりそうなるのかー


はあ。


「わかった」


「ありがとうございます!」「あざっス!師匠マスター!」


「でも、本人から話を聞いてからだよ?」


「心得ております!」


手放しで喜ぶ二人。


僕がダメとかいったら、二人が泣き崩れるのが目に見えてる。そんな状況に、僕が耐えられるはずもない。


僕はがっくり首を落とした。


「それから、シュゲン様」


「あ、うん」


慌てて姿勢を正す。


「いただきました、『試練』についてのご報告なのですが・・・」。


試練?


ああ、火属性の魔獣のことか。


「火属性の魔獣、見つかったの?」


「申し訳ございません。残念ながら、少数のファイアバードの生息地を見つけたのみです。赤魔石が定常的に得られるような、大型の火属性の魔獣の生息地は、未だ発見できておりません」


そうか。


エルフの長老とかいう反則技をもってしても、火属性の魔獣は見つけられなかったんだ。ってことは、この国の近辺で火属性の魔獣を見つけるのは、絶望的かもしれないな。


ただ、魔獣を召喚する方法でも集められそうなので、火属性の魔獣が見つからなくても、何とかなりそうな気はしている。


ひとまずは大量の赤魔石が手に入ったことだし。火属性の魔獣を探索するのは、宇宙跳躍ワープの開発の後でいいかな。


そうそう、二人にも少しおすそ分けしておかないと。


師匠らしさを見せられる数少ない機会だ。


僕、チャンスは効果的に活用するタイプなんだよね。


「それなら・・・」


おもむろに懐へと手を入れると、赤魔石の入った袋を掴んだ。予め、二人に渡すためにいくつか取り置きしておいたのだ。


「これを・・・」


「その、シュゲン様」


すると、懐から手を出す直前に、リンが珍しく僕の言葉を遮った。


「どうしたの?」


僕は手を止める。


「火属性の魔獣の生息地は見つからなかったのですが、代わりにこれを発見できました」


リンの視線の先を見て、初めてヒョウが大きな袋をかかえていることに気が付いた。


「ほんっと、師匠のおかげッスよ!」


ヒョウは嬉しそうに言うと、抱えていた袋の中身を机の上へと出す。



ざらざらざら・・・



「え?」


袋から転がりだしたものを見て、僕は目を丸くした。


「赤魔石です」


リンが誇らしげにいう。


僕は、山と積まれた赤魔石を二度見した。


いや、三度見・・・十度見くらいした。


それは、間違いなく赤魔石だった。どこからどう見ても、赤魔石以外の何物でもなかった。


・・・なんで


なんで、こんなに大量にあるんだ!!?!?!?


ざっと見ても100個以上ある。僕が集めた数の倍はあるだろうか。


あまりに信じられない光景に、僕はただ金魚のように口をぱくぱくと動かすことしかできなくなっていた。


「シュゲン様が、わたしを逃がして下さるときに『拠点アジトを探索するように』とおっしゃいましたよね。ですから、ヒョウと二人で拠点アジトを再捜索致しました。すると、地下に隠された実験場のような場所に、この赤魔石が大量にあったのです」


「よく見つけたね・・・」


喉から声を絞り出す。


師匠マスターは、これが沢山あるのを知ってて、あたいたちに探索するように言ったんスよね?流石っスよ!」


「おかげさまで、わたしたち二人がミッションをクリアして、なおこれだけ余りました」


ええええっ!?


二人分のミッションクリアに使って、まだこれだけあるの!?


ってことは、僕が集めた量の三倍くらいあったんじゃ・・・


「シュゲン様のご厚意に従いまして、わたくしたちは十分に使いました。あとはシュゲン様に献上いたします」


ご厚意って、何??


「実験室は、実に巧妙に隠されておりました。念入りに探索するように命じられていなければ、間違いなく見過ごしておりました。シュゲン様の『神の目』のおかげです。、わたくしたちだけでの発見は覚束きませんでした」


・・・いや、だから『神の目』って何!?


そんなスキル持ってないって!


気が遠くなりつつある僕に、リンが状況を詳しく説明してくれた。


実験施設内には、破壊された多数の魔力炉と、実験メモがあったそうだ。メモによれば、銀髪男が火属性の魔獣を呼び出す実験を、そこで繰り返していたらしい。魔獣を召喚しては処分するという作業の繰り返しだ。その結果、大量の赤魔石が残ったと。


ただ、あの男には赤魔石の価値が分からなかった。だから、実験室内にそれを放置していたということらしい。


・・・そうだったのか


あの自称賢者、袋に入れていた赤魔石は数個だった。だから僕は、魔獣の呼び出し実験をしたにしても、せいぜい数匹しか呼び出せなかったのだろうと勝手に思い込んでいた。


まさか百体というレベルで召喚していたとは。


そりゃ、そんなことしたら馬鹿みたいに魔力使うわな!


奴隷とか攫ってきて、魔力を吸いだしてた理由はそれだったのか。


・・・ってか、賢者の力の限界とか言ってたのは何だったんだ?


マジ意味がわからん!


これまでの僕の赤魔石集めの労力は、いったい何だったんだ・・・?


「凄いッスよ。魔法も強化し放題ッスね!」


遠くでヒョウの声が聞こえる気がする。


「ステラでの開発も、大幅に進むでしょう、しばらくは、ステラでの活動が主になりそうね」


「あたい、強化したい装置がたくさんあるんスよ。リン先輩、いろいろ教えて欲しいッス!」


「ちょっと、ヒョウ。少しは自分の頭を使いなさい。いつも、シュゲン様がそうおっしゃっているでしょう。・・・ですよね、シュゲン様?」


「・・・・・」


僕は膝から崩れ落ちた。


幸い椅子に座っていたので、リンとヒョウには気づかれなかったのだけど・・・


「シュゲン様・・・?」


師匠マスター?どうしたんスか・・・・あ!!」


突然、何かに弾かれたように、二人が僕から離れた。


「シュゲン様、お疲れのところ、申し訳ござませんでした」


僕は、うつろな目を彼女たちに向けた。


いつのまにか、リンが跪いている。ヒョウは・・・相変わらず土下座にしか見えない。


「このように長居を致しまして・・・あの子の様子を見てまいりますので、わたしはこれにて失礼します!」


「あ、あたいも、そ、その、掃除しにいくッス!」



バタン!



そのまま二人は、逃げるように部屋を出て行ってしまった。


あとには、ただ大量の赤魔石の山だけが残った。


「・・・疲れた」


がっくりと肩が落ちる。


「今日は風呂入って寝よう・・・」


僕はゲートの使用を停止した。



ちなみに魔石は後で三等分しました。


そしてその後、僕は全力で魔獣の召喚魔法の開発に取り組むことになった。それはそれは、筆舌に尽くしがたい、壮絶な実験を繰り返す羽目になったのだけど・・・


まさしく、難易度はルナティック!


「あの男、よくこんな実験やってたなあ」


少しだけ、あの銀髪男を偉いと思ってしまった僕は、何だか負けた気がしたのだった。


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