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魔石が欲しかっただけなのに  作者: かに
SFはファンタジーに含まれますか?
17/39

今、魔法って言った?

僕がその場に到着したとき、すでに大勢は決していた。


人間とおぼしき一団と、何匹もの魔獣が戦っている。


あの熊の見かけをした魔獣は、僕も倒したことがあった。動きは遅いけど、硬いのと一撃が強いので、正直あまり戦いたくない敵だ。


それよりも僕は、人間のほうに興味をもった。この世界で、人間っぽい見かけの生物を見るのは初めてだったからだ。


「今すぐ立ち去れ!生き延びろ!」


環境探査機を通して、男の声が聞こえる。


「日本語?」


少なくとも、僕には彼が日本語でしゃべっているように聞こえた。


カメラ画像を見ると、その声の主は全身大けがをしていた。身にまとう金属製の鎧も、手に持つ大剣もすでにボロボロだ。


それほどまでにダメージを受けているのに、彼は再び立ち上がって剣を構えた。


僕は、素直に彼の根性に感心した。


「・・・隊長!」


彼のすぐそばで、別の声がした。


若い女の声だ。


カメラの視点を移すと、そこには槍を持った深緑色の髪の女戦士がいた。彼女も全身に傷を負っている。


地図上には、他にもいくつも赤い点があった。カメラで見る限り、どうやら彼女たちと同じ一団の兵士の陽だった。死んでいる兵士はいないようだったが、ほとんどが大けがをしていて、ろくに動くことができない状態に見える。


「最後の魔法を使う。その隙に逃げろ。チャンスは一回だけだ、しくじるなよ」


大剣の戦士が言った。


セリフから想像するに、彼が魔獣を引きつけている間に、女戦士を逃がす作戦らしい。


しかし、僕はまた別の言葉に興味をもった。


「今、魔法って言った?」


この世界の人間は、魔法が使えるらしい。


・・・それは是非、見てみたい。


僕は、いつでも逃げられるように注意しながら、彼らとの距離を詰めた。


熊の魔獣が二体、大剣の戦士に近づいていく。片方は、もう一方より一回り大きい。色も微妙に違うような気がする。


おそらく、ボスっぽい強い個体なのだろう。


僕は勝手にそう想像した。


・・・しかし


あの二体の攻撃を受けたら、さすがにヤバイんじゃないか?


以前に戦った時は、小さいほうの熊の一撃でも、結界ごと数メートル吹っ飛ばす威力があった。もちろん、そのときは自分ではなくて、囮に使ったイノシシっぽい動物に結界をはって、威力をためしたのだけど・・・


あの大剣の戦士の魔法がどんなものか知らないけど、まともにくらったら無事ではすまない。


「隊長、ご無事で!」


女戦士が走り出す。


直後、大剣の剣士が大声で叫んだ。


「グレートロックボルト!」


・・・詠唱?


剣士の剣先から発射された岩の塊が、熊の魔獣に激突する。


熊がよろめいて、後ずさりした。


「え?」


僕は思わず二度見した。


今、ゲートから岩を出したよね?


僕の出せる岩より、ずっと小さくて遅い。


でもあれは、「岩石射出機」を使った時に飛び出す岩だ。


大きいほうの熊が、剣士に向かって突進していくのが見えた。


「グレートロックシールド!」


彼のセリフに合わせて、地面から岩の壁が生える。


出現の仕方といい、出てくる岩の質感といい、僕が家を作るときに使った「土砂加工機」によく似ている。



ズガーン!



熊が岩の壁に激突する。岩壁は強度が足りなかったようで、熊はそのままの勢いで剣士に突進した。


「くっ!」


剣士が剣を構える。だが、それでは止めきれないことを、彼も分かっているようだ。


あれはやばい。


確実にやばい。


あの攻撃を受けたら、剣士は確実に潰されるだろう。それも、かなりエグいことになるのは間違いない。


どうする、助けるか?


いやしかし、この世界の人間と不用意に関わるのは・・・


んーーーーっ!!!


「・・・仕方ないなぁ」


僕は彼にゲートを設置した。



ガキーン!!



剣士が大きく跳ね飛ばされる。


剣士はふたたび馬車に激突し、荷台がバリバリと音を立てて砕けた。


「・・・いったい、何が?」


あれだけの衝撃でぶつかったにも関わらず、剣士はすぐに起き上がることができた。しかし、当の彼自身も、ダメージがほとんどないことに驚いているようだ。


・・・うまくいったな


剣士に攻撃がヒットする直前に、彼に「結界」を張ったのだ。ふっとぶ勢いは殺せなかったけど、衝突による物理的なダメージの大半は防げた。


「神のご加護なのか?」


自分をとりまく青白い膜を見ながら、彼がそう呟くのが聞こえた。


・・・違います。


それは僕の結界です。神様じゃなくてごめんね。


だけど、不意に現れた「神の加護」に勇気付けられたのか、彼の瞳には力が戻った。大剣を構えて、再び熊に立ち向かっていく。


よし。


結界もあるし、しばらく彼は大丈夫だろう。僕はそう判断して、環境探査機のカメラを女剣士のほうへと切り替えた。


「うわっ!!」


映った画面を見て、思わず声が出た。


女剣士を、何体もの熊が取り囲んでいる。僕が同じ状態に陥っていたら、次の瞬間には死んでいるところだ。


背筋に寒気が走った。


「エアーカッター!」


彼女は槍先を熊に向けて、魔法らしきものを詠唱している。


しかし、肝心の魔法は発動していないように見える。


「く・・・魔力が・・・」


彼女の呟きが聞こえた。


・・・魔力?


僕は首をかしげる。


彼女たちが使ってる「魔法」とやらが、僕の使っている「ゲート」と同じ仕組みなら、魔力が尽きるなんてことはないはずだ。少なくとも「ゲート」を通して使う「魔法」は、これまで打ち止めになったことがない。


火炎放射器も、岩石発射装置も、弾数は無限だ。ゲームだったらチートっぽい設定だけど。


・・・無限?


僕はふと、あることを思い出した。


今、彼女の様子を見るために使っているこの環境探査機。よく見ると、画面の下に黄色いバーみたいなものがある。ずっと、ただの画面の装飾だと思っていたけど、よく見ると98%という文字の表記がある。


これって、エネルギー残量?


急いで、他の装置も調べてみる。


岩石射出機、火炎放射器、自動調理器・・・どれも数値が表示されている。ほとんど減っていないせいで、今まだ気が付かなかった。


そうかー


もしこれがエネルギー残量なら、僕の「魔法」も打ち止めがあり得るってことか。いやあ、気が付いてよかった。


・・・って


今はそれどころじゃない。


熊に囲まれている彼女は、どう見ても絶体絶命だ。


「どうするかなー」


僕は腕を組む。


剣士はうっかり助けてしまったけど、彼らを助ける義理は僕にはない。


そもそも、襲われている人間を助けたからと言って、必ずしもいいことがあるわけでもない。


襲撃側の一味だと疑われて投獄されたり、助けた相手に「イーガ様の仇!」とか言われて何故か自分が襲われる・・・なんてことは、ゲームではよくあることだ。


とはいえ、目の前で襲われている人間を見殺しにできるほど、僕の心は強くもない。


「ああもう、仕方ないなあ」


僕はごしごしと両手で頭を掻いた。


あのデカい熊、魔石をたくさん出してくれるといいのだけど。


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