【第二章】第十九部分
「二人プレイ⁉ワクワク!」
迎え撃つ側に不協和音が生じていた。
重くかつビミョーという複雑怪奇な空気が流れているところに、審判がやってきた。やはり赤で耳のないネコ型ロボットである。
「ボク、ドラエロ悶。審判を務めるよ。どちらのチームもフェアプレイでね。なお、ここでは魔法使い放題なんだけど、不確実性の原理は誰に危害が及ぶか予測不能なので、使わない方が身のためだよ。とにかく位置に付いて。・・・用意ドン!」
「あわわわわ!」
「と言ったら、ピストル鳴らすので。」
「ガタガタ。って、昭和のギャグじゃ誰一人笑わないわよ!」
『バーン!』
凪河がクレーム付けてるうちに、スターターピストルが鳴った。
楕円形の2百メートルコースをミニスカロリスと憂果莉が走り出した。
力感溢れる憂果莉に対して、ロリそのもののミニスカロリスは幼稚園児のお遊戯レベル。走力の差は歴然としており、憂果莉は大差を付けて、カーブを悠々と曲がりながら中継地点へと疾走する。ミニスカロリスは内股で、息を切らしながら走っており、今にも倒れそうな様子である。
先行する憂果莉は有利かと思われたが、憂果莉の表情は決して楽しそうではない。むしろ苦虫を噛み潰したようなモチベーションの低い顔色である。足は動いていることから、早々と中継点に到達した。
「これの、どこが二人プレイなんです?」
ブチブチ不満をたれながら憂果莉は凪河にバトンを渡した。しかし、凪河はバトンを持つ手を強く握ったままである。
「ちょっと、会長。どうしたのよ。早くバトンを離しなさいよ。相手が来ちゃうじゃない!」「いえ、この手には温もりがありません。ゆりキュアの体温を右手が要求してるんです!」
憂果莉の手は、バトンの先を持っている凪河にじり寄って、その手をガッチリと掴んだ。
「こら、その手を離しなさいよ。動けないじゃない!」
「いいえ、この手は死ぬまで離せません。苦労してここまでやってきた自分へのご褒美なのです!ゆりキュアの手に萌え~!」
「離せ~!」
「離しません~!」
ふたりの力が拮抗して、動かない。その隙にヘトヘトのミニスカロリスが追い付いた。ミニスカロリスは、るとにバトンを渡すと、るとは凪河をあっさりと抜いていった。
しかし、るとは小柄であまりに足が遅かった。内股で、走ってるというよりは受験に失敗した中学生のような歩みである。




