【第二章】第十六部分
「ここは邪念が集まり過ぎており、ダメじゃ。戦う場所を変えるんじゃ。」
三人はエレベーターで二十階に移動した。そこは『戦闘室』というプレートのある、体育館の四倍ぐらいの広い部屋だった。
そこには人の姿はないが、赤のネコ型で耳のないロボットが何台か動いていた。
「ここなら安心して戦えるじゃろう。」
「そこにいるブサイクなロボットはいったい何なのよ?」
「それはバトルを公正に判断するアンパイアじゃ。敵でも味方でもないから安心せい。」
「こっちはひとりなのよ。卑怯だわ。警察って公権力を傘にきる最低なやり方だわ。アリは象を殺すのにも全力でやろうって言うの?」
「ちっちゃいことをバカにしおって。アリにも五分の魂があるところを見せてやるぞ。」
ゆりキュアたちはふたり同時に凪河に突進する。
「あががが。」
凪河は口をもごもごするが、声を出せない。
ミニスカロリスが、呪文を使えないように凪河の口を押さえている。と言ってもふたりには身長差という壁があり、そのためミニスカロリスは踏み台の上に立っている。
「はあはあ。この態勢維持も大変でちゅ。」
凪河があがくため、ミニスカロリスは踏み台昇降運動をしいられている。しかし、凪河も口を塞がれていて、魔法どころか、呼吸もままならなくて苦しんでいる。
「どうでちゅか。苦しいでちゅか。まあくんを助ける、つまり悪の幇助は大罪でちゅ。正義への無謀で浅はかな挑戦でちゅ。」
「ぐぐぐ。」
凪河のできることは唸り声を上げるだけ。
「あ~あ、こんなところでゲームオーバーかのう。ゲームセンターで戦う前に、ファミコンで練習しておくべきだったかのう。みみよ、そのままラクにしてやれ。」
「わかったでちゅ。キツいけど、ちっちゃいみみが大きい象を倒すなんて、しめしめでちゅ、締め締めでちゅ。はあはあはあ。さあ、これで、断末魔でちゅ。断髪婆さんでちゅ。」
「どこの地獄の老婆じゃ?」
むっとしたるとを無視して、ミニスカロリスは息切れしながらも凪河の口を押さえ続ける。
「ぐはっ!」
凪河が窒息して、事切れた!
「あは~ん。」
その瞬間に、ミニスカロリスが苦悶の表情で、腰を左右に振った。
「みみ、いったいどうしたのじゃ?あは~ん。」
今度は、るとが同じような顔をして、熱い吐息を吐いた。
「ロリキュアのニオイが私を呼び覚ましたのです!くんくん。」
「か、会長!無事だったのね。てか、復活したのね、体とエロ心が。」
息を吹き返した凪河は、ロリキュアふたりの胸部を蹂躙している憂果莉を呆れ顔で見ていた。




