【第二章】第十二部分
「理由は、極めてシンプルじゃ。ヤクザの監視のために、警察署が隣にあるのじゃが、ヤクザにとって、それがいちばん安全じゃ。つまりこの事務所ビルは警察に守られておる。ワシらスケパンデカは警察組織の別働隊じゃから、警察に守られるヤクザ事務所にいて、なんら問題ないんじゃ。危険なモノほど、安全装置は万全なんじゃよ。」
「逆説的ね。まあそんなことはどうでもいいわ。それより、鍵を刑務所、じゃなくて魔界に落として、女の子にしちゃったのは、お人形なのね?」
「その通りじゃ。みみから聞いたんじゃな。折檻じゃ、おしゃぶりな奴め。」
「おしゃぶりじゃないでちゅ!おしゃべりでちゅ。」
「さして変わらん。おしゃぶりをくわえてる方がお似合いじゃ。」
「ご先祖様、ひどいでちゅ。みみは、一生懸命、鍵たんの秘密を守ろうとバトルしたでちゅ。運が味方せず、天に任せて、唾しただけでちゅ。」
「ことわざを複合して、ワケのわからんことを言うな!ワシが鍵を魔界に落としたのは、はっきりとした理由がある。それを話して進ぜよう。ワシの本名は、スケパンデカルトじゃ。」
「スケパンデカルト⁉だから、るとって名乗ってるの?」
「そういうことじゃ。名前の通り、スケパンデカの総帥がワシじゃ。ワシの忌まわしき大過去はこんなことじゃった。
ワシは世界の創造者のひとりじゃった。たくさんある世界の中で、この世界を任されたワシはいつも世の理、つまり法則を作っていた。法則がなければ人間は生きていけん。法則は生きるためのルール作りなんじゃ。人間に法則を自分で発見したと思い込ませて、それを成功体験、モチベーションとして、進化の手助けをすることもワシの仕事じゃった。発展なき未来に灯火を付けて、道しるべにしてやったというワケじゃ。
法則はやがて発展して、法則魔法を生んだ。ここで作られたものが魔法の原型になったんじゃ。
三平方の定理が成立するものを三角形と定義した。ワシはこれをピタゴラスに教えた。
アルキメデスの原理が成立するものの根拠が比重であることを、ワシがアルキメデスに教えた。実はやつらもスケパンデカじゃった。法則魔法が使えたんじゃ。実際に、隠れ警察として、治安維持に役立っておった。だから有名になったのじゃが、魔法のことはやがて忘れ去られて、理論だけが継承された、というより魔法を使えたのはピタゴラスやアルキメデスたちだけて、魔法力は他の者には使えなかったんじゃ。だから法則理論だけが残ったんじゃ。」
「はあ?だったら、男のスケパンデカがいたってこと?」
「あやつらは立派な女子じゃ。その後の男尊女卑の流れの中で、歴史は勝手に書き換えられたんじゃ。」
「アタシたちが使ってる法則魔法って、どんな原理なの?」




