【第一章】第十一部分
放課後はあっという間にやってきた。
「時間通り、やってきたわね。さすがは校則に厳しい生徒会長だわ。」
凪河を前にして、なぜかもじもじする憂果莉。
「スケパンデカに興味あるのです?」
「興味?興味というか、会長が公園でしてることを聞きたいわ。」
「あれはスケパンデカと呼ばれるスーパーヒロインです。猫柳さんの家はゆりキュアやってるんですよね。それに近い存在です。」
「ど、どうして知ってるのよ。ヒミツにしてるのに。」
「偶然居合わせて、その勇姿をみたのです。私、現代の義賊、ゆりキュアに憧れているのです!」
「ゆりキュアなんて、アニメ世界の住人よ。そ、そんな架空のヒロイン、いるわけないわ。そんなことより、会長の言うスケパンデカだっけ、会長はそのスケパンデカなのよね?」
「はい。れっきとしたスケパンデカです。日夜活躍しています。」
「あんな恥ずかしい格好で?生徒会長って、やっぱり露出狂、いや露出女王なのね?」
「ち、違います!私だって、あのコスチュームは恥ずかしいのです!できれば辞めたいけど、使命だからできないのです!」
「使命ですって?昨日、鍵をさらった人がそんな正義の味方みたいなことを言うの?」
「鍵?いつも遅刻してる黒霧鍵さんのことですか?」
「自分で拉致っといて、よく言うわね。鍵は昨日この公園で会長に連れ去られたんじゃないの。早くアタシに返しなさいよ。もしかして、監禁して、あんなことや、こんなことや、ひょっとしたらそんなことまでやってるんじゃないでしょうね?」
「猫柳さん、妄想激しいです。もしかしたら、ご自分がしたいことをのたまっているのではありませんか?」
「も、妄想なんかしてないわよ。思考の暴走を止められなかっただけよ。ただのファンタジーよ。」
「たしかに黒霧さんは、遅刻常習犯で素行の悪さは、処罰の対象には十分過ぎます。しかし私は黒霧さんを拉致などしておりません。」
「でもアタシはこの目でハッキリ見たのよ。あれは間違いなく会長だったわ。」
「スケパンデカはみんなこのコスチュームを着ているのです。一瞥しただけで、顔まで判別するのはわりと難しいです。それほどの至近距離だったのです?」
「い、いやそこまで近くはなかったけど、アタシには生徒会長に見えたわ。」
「人間には思い込みという大脳の錯覚があります。暗い中で、恐怖心が大脳を誤作動させて、ネコヤナギを幽霊と間違ってしまうことと同じです。初めて見た奇妙なコスチュームです。そちらに気を取られて、対象を特定しようとするあまり、すでに記憶にある私を重ね合わせたという可能性があります。私を記憶に留めていてくださる、それ自体に萌えます。ぐへへ。」
「ちょ、ちょっと、ヘンタイぶりっこはやめなさいよ!アタシの記憶が万全ではないかもしれないわ。でも会長ではないという判断材料もないわよ。」




