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1話『はじめまして』③



SHRが始まる数分前の教室内は騒がしくどこか浮き足立っているようだ。聖弥が自分の机の元へ行くとその隣に今まで無かった真新しい机と椅子が置かれていた。怪訝に思いつつ教科書や筆箱を机の引き出しにしまう。

「今日転校生来るらしいよー」

「うっそ、うちの学校の編入試験受かったの!?すごくない!?」

「女子だって」

「えー女の子か」

担任が来るのを空を見ながら待っていれば、大きい声で繰り広げられる女子生徒たちの会話は興味がなくても耳に入った。

 なるほど、転校生が来るのか。だから皆こんなに浮き足立っているのだ。特に仲良くする気もない聖弥からしてみればどうでもいいことだけれど。しかしこの時期に編入してくるということはそれなりに優秀な人間なのだろう。

 聖弥の通っている私立青蘭学園は、この地域では有名な進学校である。この学園に通っていれば周りからは「優秀ね〜」と言われ、生徒の大半がみなが必死に勉強している有名大学に滑り止めとして易々と合格するのだ。そんな学校の編入試験は入試よりも難しく、滅多に合格する者はいないと言われている。だから転入生が来るということはそういう事なのである。


 ガラリと教室の扉がひらかれる。入ってきたのは昨日さんざん聖弥を怒っていた担任で、「ほら、席に付けー」と生徒に促した。既に大半の生徒は席に座っていたためほとんどが形式化したものである。

「お前たちも知ってると思うがうちのクラスに転校生が来た。入ってこい」

ざわざわと騒がしくなる教室内、入ってきたのはさほど身長の高くない女子生徒だった。茶色がかった黒髪を背中あたりまで伸ばし、ぱっちりとした大きな目、澄んだ碧色の瞳、ニコニコと笑顔向け自己紹介を始める。宮代羽依ミヤシロ ウイそれが彼女の名前だ。

 元々転校生なんて興味がなかったはずなのに、一度姿を見ると何故か目が離せなかった。見たことも名前を聞いたのも初めだと言うのに田舎のおばあちゃん家みたいなどこか懐かしさを感じる。なぜかは分からないのになぜそんな感覚が湧き出てきているのか、聖弥は不思議でたまらなかった。

 目が離せなかったせいか、ふと転校生と目があう。すると転校生は一瞬目を見開いたあと再び目を細めにこりと笑った。いきなりのことに驚き思わず目をそらすと「宮代の席は窓側の一番後ろな」と担任の声が耳に入る。ああ、なるほど、転入生は自分の隣に来るのか。考えてみれば当たり前のことであるはずなのになぜその考えが浮かばなかったのか。

 目を逸らしたせいで気まずいはずなのに、転校生である宮代は聖弥の席まで来ると「よろしくね」と先程と変わらない笑顔を向けた。

「あ、ああ」

初めて聖弥を見る人間は、彼の耳に付いているピアスの量に驚いて、勝手に怖い人だと認識するため滅多なことで声をかけてくることはない。それなのに宮代は自分の姿を見ても全く動じず周りの生徒と同じように挨拶をしてきた。ということはそれなりに変わっている人間なのか、それとも肝が座っているのか、人の見た目を気にしないタイプなのか、見た目で判断してくるここの生徒たちよりは幾分かマシに見える。

 いつも通りSHRを始める担任の声をBGMに再び目線を空へと向ける。その視界には今までなかった新しい人物が描かれていた。



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