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第12話 放課後デート#1

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)

「リーゼルちゃん、良かったグッドタイミングだよ」


「ん? 何かした?」


 僕がリーゼルちゃんに話しかけると彼女はその言葉に不思議そうな顔をする。

 ごめんね、勝手に巻き込んじゃったことなんだ。

 でもここでユリスの追及を避けるためにはこうするしかなかったんだ。


「なんというか......そうユリスが話あるみたいなんだ! だからそれが何か聞いてあげて。僕は少し急ぎの用があるから」


「男装がバレかけたの?」


「ははは、なんのことかな? ともかくそれじゃあね」


 僕は急いでリーゼルちゃんにそう言うと走って距離を取っていく。

 そして校舎裏に隠れると一先ず安堵の息を吐いた。

 リーゼルちゃんは会うとどうにもその質問を毎回してくる。しかも違うと言っているのに聞き方が断定的なんだよなぁ......


「それにしても......」


 僕は校舎裏から覗き込むようにユリスとリーゼルがベンチで話しているのを見た。

 そして思うことがある。どうしてユリスはリーゼルちゃんにしか視野に入れないのだろうかと。

 ユリスがリーゼルちゃんに好意を持っているのはわかるんだけど、その目がどうにも好きという感情とは程遠いような目をしている。

 一言で言えば達観していて強い目をしている。

 

 それが何かわからない――――――だから思うんだ。


「ユリスって不思議な人だな......今はどんなことを考えているんだろう?」


**************************************************************************


 どどどどどうしたものか!? なぜこうなって俺の隣にリーゼルがいるんだ!?


「(はむはむはむ)......食べる?」


 そう聞くリーゼルから差し出されたパンが目の前に。俺は一先ずそれを受け取った。

 だがその手は思いっきり振るえていた。


 ハッキリ言おう。俺は物凄く動揺している。

 本来リーゼルに出会うイベントは前日から精神統一して腹をくくって挑んでいるのだが、まさかこんな不意打ちを食らうとは。

 ささささ、さて、落ち着け俺。ここは一旦冷静になれ。

 たとえここにリーゼルがいようとも変わらない態度を続ければいい。

 出来るだけ過去に沿った俺自身を。


「そ、それで何か用かな?」


 やべっ、声がうわずった。


「ん? レイナから『ユリスが用があるから』って聞いたけど?」


 レイナー! 何を急に言ってやがんだ! これじゃあ俺が何かを切り出すまでずっと俺のターンじゃねぇか!

 だがリーゼルの口から名前のそれも呼び捨てバージョンが聞けたことは評価してやろう。

 とはいえ、ここは何と言えばいいのか......あ、あの話題でいこう。


「そういえば、またになるけどあの時は助けてくれてありがとう」


「あの時のことなら問題ない。私の友達を傷つけるのは許さない」


 ほわー! リーゼルから友達認定いただきました! よっしゃあ! なんか今日はツイてるな!


 内心で渾身のガッツポーズ。

 話したのは入学試験の時とあの暴力事件を合わせるとたった二回だけなのだが、まさかそう思ってくれているとは。


「そういえば、リーゼルさんはいつも何か食べてるね」


「美味しいから。それに太りにくいからダイジョーブ。それと呼び捨てでいい」


 リーゼルは右手で服の上から自分のお腹の肉を摘まもうとする。

 だがその華奢な体には脂肪のしの字もないので空を摘まむのみ。

 ―――――くっ、可愛い。


「それにしても、ユリスの方は痩せてきたね」


「まあ、最近はダイエットしてるからね」


 俺がそう言って腹の肉を摘まみながらリーゼルを見るとなぜかリーゼルはシュンとした悲しそうな顔をしている。

 まさかそんなに俺の腹の肉の触り心地が気に入っていたのか? そんなに気に入ったものだったのか......なんか急にダイエットしづらくなってきたな。

 だが今後のためには動きやすさは必須。痩せるか現状維持か。なんという究極の選択なんだ。


 俺が頭の中で葛藤していると不意に隣から手が伸びてきた。

 その手は俺の腹の肉に迷わず伸びていき摘まむとプニプニと触感を楽しんでいく。


「これが最後。しっかりと堪能する」


 どれだけ俺の腹の肉が好きなんだ。余計に痩せづらいじゃないか。

 だが俺は血涙する覚悟でダイエットすることを決めた。

 これは覚悟の証だ。俺がリーゼルを助ける、その時までの。


 リーゼルは俺の腹をひとしきり堪能し終えると突然ベンチを立ち上がった。

 その動作によって揺れ動く銀髪と制服の裾、スカートの端がまるで一枚絵のように俺の視界いっぱいに広がった。

 そんな目を奪われている俺にリーゼルはジト目で告げる。


「少し時間空いてる?」


 そう言って右手に持っていたパンを一齧り。


 あれ? これって放課後デートでは?


*************************************************************************


「おばさん、チュロスを二つ」


「え、リーゼル......さん? 僕の分はいいよ」


「呼び捨てでいい。それと美味しいから食べてみて」


 そう言って俺はリーゼルが買ったチュロスを一つ受け取るとリーゼルのキラキラとした視線をそのままに口に含んでいく。

 すると口の中にチュロスの甘さが広がっていきリーゼルが買ってくれたということも相まってとてつもなく美味い。

 昔に召喚された勇者が広めたと言われているがさすがだな。

 というか、ここはなんだ? 天国か?


「それにしても、急にどうしたの? まさかこれを食べさせたいから?」


「ん、リバウンド目的」


「な!?」


「半分冗談」


 くっ.......半分冗談か。ということは、半分本気ってことじゃねぇか。なんだその理由、可愛すぎかよ。


「でも、それともう一つ聞きたいことがあったから」


「聞きたいこと?」


 リーゼルは落ち着いた賑わいの通りを俺より少し前へと早足で歩いて行く。

 そして、右足をかかとを地面につけてクルっと俺の方へ向きを合わせるように回っていくと食べかけのチュロスを俺に向けて聞いた。


「ユリス、ルミナと何かあった?」


「!」


 俺はその言葉に思わず目を見開く。それはここに来て新情報を得たからだ。

 まさかここでリーゼルとルミナに繋がりがあったとは驚きだ。

 だがそれで言うと納得することもある。あの女が過去の俺に対してどうしてあれほど高圧的だったのか。


 あの女......リーゼルに何を吹き込んだんだ?

 これは本来の正史にもあった放課後デートだが、こういう展開になっている以上歴史は変わっている。


 本来ならリーゼルに出会ったこの時点まで全く歴史の変動がなかったら、その時にこっちから実力をばらして起こり得る出来事への完璧な護りを作ろうとも考えていた。


 だが俺が入学試験の日にリーゼルと話すという時点で歴史が変わっている。

 つまりこの歴史は俺が何かを仕掛ける前に変わってしまっているということだ。

 となれば、この先の歴史に変動がある可能性が高い。


 そしてその出来事が俺にも対処できないことならばどうすることも出来ない。

 まあ、その可能生の方が低いのだが、ないとも言い切れないので出来る限り正史通りに動いた方が俺自身も動きやすい。

 だからあの出来事が起こるまで隠すつもりだったのに......あの女め、余計なことを。


 まだそのことはリーゼルに伝えることは出来ない。

 仲良くなったとはいえ、まだ話して三回目だ。そんな相手に「この先未来で死ぬ出来事がある」と言ってどうして信じてもらえようか。


 それに俺とリーゼルのかかわりは過去の歴史でも特徴的な出来事は言うほどない。

 今俺が変えようとしている歴史も俺がただ自己満足にリーゼルから貰った恩義を返そうとしている行動でしかない。


 さて、どうするか......


「沈黙は肯定と見なす」


 考える時間もあまりなさそうだ。

 ここは上手くはぐらかすしかない。

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