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第10話 力の差

読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)


こう見えてもユリスは強いんですよ?

 俺は非常に腹が立っている。それは自分の都合で周りを考えないこの女―――――ルミナについて。

 俺もこれからそうなる立場として強くは言えないが、それでも学院を巻き込むほどの危険な魔法を使ったりしようとは思わない。

 もちろん、それがただの戦闘であった場合に限るが。


「言っておくが俺を傷つけられると思うなよ? 今はこんな見た目だが舐めてると痛い目見るぞ?」


「そこに関しては問題ないわ。先ほどの魔法陣を解除した時点で舐めるなんておこがましいほどに気持ちが納得してるのよ。『こいつはヤバい』ってね」


 その女は納得を体現するかのようにうなづいた。


「だったら、無駄な争いは避けるのが生き延びるコツだと思うんだが?」


「生き延びるコツって......一体どんな経験からその言葉を言っているのよ。それにその言葉が冗談じゃないことぐらいあんたの威圧から伝わってくるのはなぜかしら?」


 その女はそう言うとゴクリと唾を飲み込んだ。


 確かにその女の言う通り俺はあえて威圧を放っている。それもギリギリ耐えられるぐらいに調整して。

 それは当然無駄な争いを避けるためだ。

 何度も言うが俺はこの女に付き合う時間はなく、これからもかかわるつもりは無い。


 しかし、あの女はその威圧でもなお戦うことを選んできた。

 何がそのように決意させたかはわからない。それにその行動は同じ魔術師としては致命的だ。

 だが......


「その意気込みは悪くないな。だから俺にもう関わってこないようにしっかりと力の差を教えてやる」


「あんまり見くびらないでくれる? 私はこう見えても一学年トップよ。あんたがいくらヤバくたって結果はわからないわ」


「まあ、そうだな。結果に必ずはあり得ない。なら、その残りの僅かな希望をつかみ取ることだな」


「まるで悪役みたいなセリフね。それに口調も凄く変わってるし!」


 女は剣を構えたまま俺に向かって勢いよく地面を蹴って走り出す。

 得意の火属性魔法をかかとからブースター代わりに使っているのか初速が速く、二歩目までにかなりの距離を稼いでいる。

 となれば、俺の目の前までやってくるまでにそう時間はかからなそうだ。


 俺の正面から赤髪を激しく揺らした女が同じく紅い目で鋭く睨みつけてくる。

 それに対し、俺は左手をポケットに突っ込んだまま右手の人差し指だけをヒョイっと空へと向ける。

 その瞬間、その女の前に地面から土の壁が現れた。


 その突然の壁に女は驚きつつもターンすることで勢いを殺さずに最小限にその壁を避けていく。

 そして俺のすぐ横に現れると剣先を殺す勢いで突き刺してくる。


 その鋭さは僅かな突風のようなものを作り出して俺の胸に僅かな衝撃を与える。

 だがその剣先は―――――俺の胸の数十センチ手前で止まった。そのことに女は目を見開く。

 はあ、やっぱし手加減なしか。全く、俺じゃなかったら死んでる可能性大だぞ?


「!」


 俺はその場から動かなかった。もっと言えば動く必要がなかった。

 なぜなら女が俺の姿を一瞬見失った間に俺は障壁魔法陣を足元にセットしておいたからだ。

 発動条件は俺が攻撃された時。発動効果は相手の攻撃を一瞬止める。


 その一瞬だけで十分だ。特にこんな近距離―――――否、ゼロ距離ではな。

 俺は右手で指鉄砲を作り出すと銃口代わりの人差し指に風を収縮させた弾を作り出した。

 そしてそれを放っていく。


「バン」


 俺は口で効果音を出しながら、素早く両肩と額に三発の風弾を放っていく。なので擬音語としては「バンバンバン」となるのだが......まあそこはいいだろう。

 ちなみに、この効果音は昔に異世界人が作ったと言われる伝説のアーティファクト(※魔道具を超えるものの名称)である銃の擬音だ。実際に見たことはない。


 大気を押し返す風の球体が目の前の女を襲う。


「くっ!」


 その攻撃に女は肩を左右に大きく揺らすとすぐに大きく体を仰け反らせていく。

 二つの赤いツインテールが揺らめく中、女はそのまま体を大きく仰け反らせ左手を地面に着けていく。

 そして額に受けた衝撃を逃していくようにバク転すると素早く体勢を立て直した。


「炎を纏いし聖霊よ、我に力を! 弾けろ、 炎爆陣!」


「.......」


 女は後方に下がりながら、剣先をカチンと地面に当てて僅かながらのオレンジ色の火花を散らしていく。

 そして魔法を起動しようとさせるが何も起こらず、虚しい空気だけが周囲を包み込んでいく。

 そのことにその女は驚いた様子だが、当然ながらその魔法は俺が解除させてもらっただけのこと。


「お前は学習能力がないのか? 俺はお前のとっておきの魔法陣を解除した。なのに、こんな単純な魔法陣を解除できないわけないだろう?」


「無理よ! だって今のは私が咄嗟に仕掛けた魔法陣よ! それにユリスは何もしてないじゃない!」


「お前が足から脳内で組み込んだ魔法陣を転写する技術をもっているのは十分に凄いと思うがな、だったらなぜ解除も同じようなことができると考えない?」


「だって、それは解除するには魔法陣の解析の工程が必要なはず――――――」


「確かに必要だな。だがそれがオリジナルでなくすでに既存して一般化されている魔法陣だとすれば? 簡単な話だ。覚えればいい」


「無理よ......だって魔法陣の魔法だけでどれだけあると思ってるの!? それに通常の放出系の魔法や創造系魔法だって数多くの魔法陣があるのよ!? それらを全てを含めたら5000種類以上はあるのよ!?」


「だから? あいにくそれらの魔法陣は俺の頭の中にしっかりと刻み込まれている。無理だと決めつけるお前らには到底理解できないことだろうけどな」


「......」


 俺は頭を指でトントンと叩きながら、しっかりと頭の中にあることをアピールしていく。

 そのことに女は唖然とした様子で僅かに息を飲む音が聞こえるが、まあそれは当然だろう。

 今のご時世は魔法は才能のある属性だけ伸ばすという時代だ。

 もちろん、他の属性を伸ばした方が唱える学者もいるがそれらは少数派だ。

 確かにいろんな属性を挙げようと手を出すより、一つの魔法を極めた方がいいことだってある。


 しかし、それは魔法においては違う。


「お前らは知らない。魔法の本当のすごさを」


「すごさ?」


「ああ、特別に見せてやるよ」


 俺はそう言うと女に向かって右手をかざした。

 すると俺と女の周りに激しい風が渦巻いていく。

 そしてそれは竜巻のようになり始め少しずつ体を持ち上げていく。

 そのことに女は驚きでワ―キャーとうるさいが、俺はそれを無視しながら空高く上がると女の背中の服を掴み一気に足元に作り出した魔法陣を蹴っていく。


「神風」


「え――――――」


 俺は周囲を置いていくかのように高速で空中を飛んでいく。まあ、飛んでいくと言っても厳密には魔法陣の足場を突く出して蹴っているだけだが。

 今の神風は特別製で二人専用にしてある。そうしなければ、この女は今頃体がバラバラになって死んでいるだろうからな。


 そして俺は空中を走ること数分――――――学院から遠く離れた荒野にやってきた。

 

 その場所は俺がよく魔法実験で試していた場所でもはや第二の故郷感がある場所だ。

 俺は地面に衝撃なく下りると女を地面に投げ捨てる。

 一方、女はというと俺に投げ捨てられて尻もちをついたというにもかかわらず、先ほどの威勢はどこへいったのかというぐらい静かだ。


 そして少しして思考がハッキリしてきたのか俺の方に顔を向けて告げてきた。


「ねぇ、その体でどうやったらそんなに速く走れるの?」


 まず聞くのがそれか。俺の体には触れんな、これから痩せるつもりだ。

 というか、まだ思考がハッキリとしていないようだな。仕方ない。


「良いか? 俺の実力を黙ってくれるならいいものを見せてやる」


「いいもの?」


「ああ、お前ら貴族が弱いと散々罵っている魔力の融合だ。その一端を見せてやる」


 そう言うと俺はそこらにある手のひらほどの大きさの石を拾うと炎と風を石と一緒くたにして、それを複数の障壁魔法陣で囲っていく。

 石は炎と風によって高温に熱せられていく。


「空中にただの魔法陣が浮かび上がるなんて......」


 女はそんなことを呟いているが、まあお前らからしたらそれすらも驚きだろうな。

 俺はそんな女の様子を横目に見つつ、もう一つは炎と水を合わせて高密度の水蒸気にしたものに風の膜でコーティング、さらに圧縮していく。

 そしてその二つをそれぞれ右手と左手で操作しながらはるか遠くまで動かしていく。


「見てろ。これが爆発だ―――――地響光爆」


 俺は障壁魔法陣が壊れるぐらいにその二つをぶつけ合ったその瞬間――――――激しい轟音と地響き、地揺れを発生しながら巨大な爆発が起こった。


 その爆発はどんどんと大きくなっていき、空中にあった雲を跡形もなく消し飛ばしていく。

 はるか遠くにいるにもかかわらずその爆発はあまりに大きく、衝撃波と爆風で消し飛ばされそうになる。

 しかし、そうはならない。俺が防御障壁を張っているからだ。もっと言うなら轟音すら聞こえない。感じるのは地揺れぐらいだ。

 

 そして巨大な光輝く半円がなくなると周囲に立ち込めた煙を風魔法で散らしていく。

 それから女を連れて再び空中を飛んだ。


「嘘......」


 女は呟いた。

 俺の敷いた魔法陣から四つん這いになって身を乗り出すようにして――――――真下に広がる未だ赤いマグマらしき地面が残る大きく抉れた地面を見て。

 そして俺はそんな女を見ながら言う。


「約束は必ず守らせるからな」

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