~一刀、恋姫達と日常を共にするのこと【拠点・四】~
大分お待たせしてしまいました。
今回もまた書き過ぎたって位書いたと思います。
入れ替わってしまった恋姫達と一刀の新鮮な日常。
そして、朱里の身に起きる出来事。
今回も是非見てくださればと思っております。
それでは、どうぞ!
【change⇔入れ替わっちゃった?後編】
ひょんな事から心と体が入れ替わってしまった桃花村の少女達。何の変化も見られないまま、一夜が過ぎた。
ではこれより、一刀と恋姫達との“ちょっとだけ”変わった日常を見ていく事にしよう……
時間は丁度昼を過ぎ、皆が食事を済ませた後。
屋敷の中庭に位置する鍛練場。ここではいつもの様に、武将達が己の武を磨く為に得物を振るう。または模擬戦を行い、互いに高めあっていく。そういう目的の場所だ。
「ふんっ!はあ!」
「っ!」
円を描きながら、舞う様に青龍偃月刀を振るう黒髪……ではない紫色の長髪の女性。対して、遠くに設置された的に狙いを定め、弦を引いて矢を放つ紫……黒髪の少女。
二人はいつも通り、自らの鍛練に励んでいた。しかし、傍らから見ていた一刀は、どこか違和感を感じていた。
それもその筈。
前回の話であった様に、二人の体は今、入れ替わってしまっているのだ。
愛紗は紫苑の体に入っており、紫苑は愛紗の体に入っている。
「ふぅ……少し速さに欠けるな。それに若干重く感じる」
「また外してしまいましたわ。体が変わってしまうと、こうも違うなんて……」
二人は口々に感想を述べる。
紫苑は弓の名手だが、長物の扱いには慣れてない上、偃月刀の重さについていけない。
愛紗も弓が下手という訳ではない。だが、かの黄漢升には遠く及ばない。
愛用の武器で本調子が出せず、はぁ……、とため息をつく愛紗と紫苑。
(いや、もうあれで本調子と言ってもおかしくないと思うんだけど……)
偃月刀を振り回す度に風切り音が鳴り、風圧が巻き起こる。
弓から放たれた矢が大気を切り裂き、真ん中の僅か1センチ横に突き刺さった。
流石は歴史に名を残してきた伝説の武将達。慣れない事態にも関わらず、その力量の片鱗を見せつけてくれる。
ハンデなんてものともしない二人を見て、一刀は何も言うことはなかった。
「ま、まあまあ二人共。そんなに落ち込まなくても」
「しかし、慣れない体のままでは、己の全てを出しきる事ができません」
「そうねぇ。いざって時に困るし……」
全体の士気にも関わる。
己の全力を発揮出来ない。
色々と問題は出てくる。早い所、元に戻らなければ……。一刀はどうしたものかと、頭をかく。
「さっきも見てたけど、やっぱ見慣れないな」
「私も最初はびっくりしたわよ~。目が覚めたらもう一人の私が倒れてるし、体は愛紗ちゃんになってるし……」
「ああ、それは私も同感だ」
「…………道理で胸がほんの少しだけ軽くなったと思ったら」
「紫苑、何か言ったか?」
「いいえ、何もないわ♪」
聞き流せない何かを感じ、愛紗は紫苑に問い掛けるも、穏やかな笑みを浮かべるだけで誤魔化された。
「もし、このまま元に戻らなかったら、どうなるのかしら」
「まあ、そんなに気を落とすなよ紫苑。きっと何とかなるって」
「一刀さん……」
肩に手を置いて励ます一刀。そして場を和まそうと思ったのか……
「それに、ほら、あれだ。“若返った”と思って、気楽に考えれば」
ビシュッ!―――と、一刀の顔の真横を一本の矢が通り過ぎた。風圧で髪がふわり、と跳ね上がる。
そして矢は速度を保ったまま、今度は重い音を出しながら、ど真ん中に命中した。
「―――か・ず・と・さん?」
「口が滑りましたごめんなさいすみません申し訳ありませんでした」
にっこりとした笑みだが、完全に黒いオーラを纏った紫苑。更には弦を引いたまま(いつでも射てる状態)の弓矢を突きつけ、一刀は即座にその場でひれ伏す事になった。
「はぁ、まったく。女性に対してそういう事は禁句ですよ?」
「は、はい……反省します………」
これには素直に謝る一刀。紫苑は頬を膨らませ、腕を組んでそっぽを向いてしまった。
「わ、悪かったよ紫苑。ホントごめん」
「……でしたら」
急に振り返り、紫苑は一刀の腕に抱きついてきた。突然の事に驚いてしまう一刀。
「愛っ、じゃなくて紫苑!何を―――」
「罰として……このままでいさせて下さらない?」
「へっ?あ、その……」
「駄目……ですか?」
不安な表情を浮かべ、上目遣いで見上げる愛紗こと紫苑。腕は豊満な胸に包まれ、一刀の顔が紅潮していく。
愛紗の体なのだが、普段の凛々しい雰囲気とは違い、大人の女性特有の色気と妖艶さが備えられていた。対応に困り、タジタジになる一刀。
(や、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……これはヤバい……!)
段々と顔の温度が熱くなってしまう。すると、不意に紫苑が一刀から離れた。一刀は思考がついて行けず、それに気づく事はなかった。
(でも、何て言うか……何だろう……こういうのも―――)
――斬!!
横ではなく、今度は前を何かが通り過ぎた。その際、前髪の何本かが空に舞う。
表情は完全に固まり、少しだけ目線を下に向ける。
偃月刀の刃が、そこにはあった。地面には亀裂が走り、自分の足の爪先に触れるか触れないかの位置に刺さっている。今度は、視線をゆっっっっくりと横に向ける。
紫色の長髪の女性は、偃月刀を振り下ろしたまま、微動だにしていない。髪で隠れて表情が見れないが、完全に怒っている事が容易に分かる。
「………………」
「紫お……あ、愛紗さん?」
「…………外したか」
「何を?ねぇ?何の事言ってるの!?」
「すみません、手が滑りました。長物の扱いには慣れていないもので……」
「いやいやいや、先程思っきし偃月刀をブンブン振り回してたよね!?素人の動きじゃなかったよ!?」
「手が滑りました」
「あの、だから……」
「手が!滑りました」
「……………………」
「手が滑りました……!」
「わ、分かった分かったオーケーオーケー理解したから偃月刀をこっちに向けないで!?」
目を細くしながら、こちらを睨んでくる紫苑こと愛紗。偃月刀を振りかぶるその姿は正に鬼神。さっきと同じように必死で謝り通す一刀。
〈おかあさ~~~ん♪〉
「あら、璃々」
誰もが近づく事の出来ない場に投げ掛けられる、明るく幼い声色。母親を呼ぶ小さな女の子、璃々。その後ろには、友達である壱与と、その友達の兄である昴がいた。璃々は手を振りながら、こちらへと走ってくる。トテトテと走っているその可愛らしい姿は、見ていると思わずこちらが笑みを浮かべてしまう。
紫苑はその場に屈み、両手を広げて娘を待つ。対して璃々も両手を広げて紫苑の方へと――――――向かわなかった。
「…………え?」
「お母さん♪」
「えっ?」
璃々は紫苑の横を通りすぎると、偃月刀を振り上げている愛紗に向かって抱きついてきた。抱きつかれた本人は、一瞬戸惑いを見せる。
紫苑は両手を広げたまま、固まっていた。
「り、璃々?一体どうしたのだ?」
「えっ?何言ってるのお母さん」
「いや、私は紫苑ではないぞ?」
「あれれ?」
「璃々ちゃん、紫苑はあっち……」
「あっ、間違えちゃった」
ガアァァァァァァン!?
紫苑、撃沈。
テヘッ♪と可愛らしく舌を出す璃々。
一刀と愛紗は苦笑しながら、紫苑の方を向く。
「「紫苑……」」
「うっ、うぅ…っ……!」
膝を抱え込み、地面にのの字を書きながら嗚咽を溢す紫苑。どんよりとした空気が漂い、落ち込んでいるのがこちらにも伝わってくる。
愛する娘に母親と認識されない。
紫苑は立ち直れずにいた。
その様子を見て、急いで駆け寄る昴と壱与。
「あ、愛紗……じゃなかった。紫苑さん、元気を出して下さい。ね?」
「紫苑さん……ヨシヨシ」
「うぅ……昴君……壱与ちゃん……!」
昴は懸命に励まし、壱与は小さな手で黒髪を撫でてやる。二人の優しさに感謝し、紫苑は更に泣き出してしまう。
「……ホントに、戻らないとな」
「ええ、私も思っていた所です」
「お母さん、ごめんね~」
璃々は紫苑に歩み寄り、壱与と同じように紫苑の頭を撫でる。一刀と愛紗はその姿を眺めると、早い所元に戻って欲しいと強く願うのであった。
その頃……。
「「はぁ~…………」」
朱里こと瑠華は寝台の上に体を預け、瑠華こと朱里は椅子に腰かけている。朝から二人は深いため息を洩らしていた。
「何も変わらず……ですね」
「朝に目を覚ましたらいつの間にか元に戻ってた……ていうのは流石にないか」
二人も他の武将達と同様、心と体が入れ替わってしまっている。しかし二人の場合、お互い異性の体に入ってしまっている。そう考えれば、色々と不自由な思いをする事になる。
厠に行く時や、風呂に入る時、着替える時。今朝も寝間着から普段着の着替えに手間取る事も。
「ホント……早い所、戻れればいいんだけど」
「仕方ないですよ。今は自然に戻るのを待つしか……」
昨日、今日とで精神的に疲れてきた二人。互いを気遣う事が連続して起こった為、これが毎日続くかと想像すると、二人は大きいため息を吐いた。
「このままじっとしてるのもちょっとな……気分転換にちょっと散歩しに行こうか?」
「外の空気を吸いに行くのも良いですしね」
気晴らしにと、二人は外に行くことを提案し、重い腰を上げた。
昼食を食べ終わってから少しの時間が経った頃。
「うぅ~~~…………」
「鈴々ちゃん、大丈夫?」
桃香……こと鈴々は苦しそうに机にもたれかかり、鈴々……ではなく桃香は気遣いながら、背中を擦っている。
「鈴々、まだ治まらないのか?」
「あ、一刀さん」
「お、お腹が破裂しそう……なのだぁ………」
一刀は部屋に入ると、真っ先に鈴々と桃香を見つけた。
昼餉をとった時、鈴々はいつもの様に、大盛りのご飯や料理等を口に運んでいった。そう、今は“桃香の体”であるという事を忘れてだ。
あまりのドガ食いに桃香の体の胃が驚いたのか、案の定腹の調子を壊してしまった。そのせいで、いつもは三杯の筈の白飯が、一杯の半分でギブアップとなってしまった。
「もっともっと食べたいのに……桃香お姉ちゃんはショーショク過ぎるのだ……」
「と、言われても……」
「今は状況が変わってるからな。あまり無理しちゃ駄目だぞ?」
机上に両腕を置き、その上に顔を埋める鈴々。一刀は鈴々の頭を優しく撫でてやる。
(う~ん、私って少食なのかな……?でも、これ以上大盛りのご飯を食べちゃったら……)
もし鈴々がこのまま大盛りを食べ続けたら、自分の体は絶対に太ってしまうのだろう。そう考えると、桃香は冷や汗をかく。
「それに鍛練しようと思っても、蛇矛が重くて持ち上げられないのだ……」
「鈴々ちゃんすごいよね。あんな重たい物を持てるなんて」
朝の鍛練の時だ。
鈴々は体を動かそうと、蛇矛を手にしたのだが、あまりの重たさに尻餅をついてしまった。その時、鈴々の体になっている桃香が近くにおり、その蛇矛をいとも簡単に持ち上げた。
「まあ、とりあえず今はゆっくり休んでな」
「鈴々ちゃん、部屋に行って、横になってようか」
「うん……分かったのだ……」
一刀は鈴々を抱き上げ(つまりはお姫様抱っこ)部屋まで連れていった。桃香は鈴々の介抱につく事にしたのだが、一刀が鈴々を運ぶ時、羨ましそうに見つめていたのは言うまでもない。
一刀はそのまま部屋を後にすると、今度は廊下で一人の少女と出会う。
「あっ星……じゃない、翠」
「よく間違えるな……まぁ仕方ないけど」
また間違えてしまう一刀に、翠は頭をかきながらそっぽを向く。
「ところで、翠は鍛練に行ってたのか?」
「ああ、昼飯がちょっとしか食えなかったからよ。体を動かせば空くかな……と思ったんだけど」
様子からして、あまり効果は出ていない様だ。その代わり、メンマを欲する様になったとか……。
「なんかすげえ食いたくなってさ」
「確かに、体は星のだしな」
「鍛練の方は動きにブレが出るし……どうしたもんかね~」
二人がそんな会話をしていると、そこにもう一人の少女が加わってきた。
「やあ、翠じゃなくて星」
「いい加減慣れないものか?」
「ごめん、やっぱり慣れないや」
あはは、と頭をかきながら苦笑する一刀に、呆れながらも微笑する星と翠。
「星も鍛練してたのか?」
「いや、私は高台で酒を…………見張りの役をしていてな」
「訂正しても遅いぞ?」
「昼間っからよく飲むよな」
ジ~~ッと見つめられると、罰が悪そうに顔を背ける星。二人は共に息をつく。
「酒も程々にしとけよ?」
「ああ、そうしておくよ」
「……あれ?やけに素直だな?」
彼女にしては珍しい返答を聞き、一刀は呆気にとられる。それは翠も一緒だった。
「どうかしたのか?」
「うむ……いつもの様に酒を楽しんでいたのだが……」
屋敷の外に建てられている見張り用の高台。そこで自由を堪能していたのだが、一杯か二杯目位で、頭がぼやけてきたのだ。それだけでなく、急な尿意にも襲われ、すぐに厠へと向かった。
用を足し、厠を出るも、また尿意が来て籠る事になり、それを何回も繰り返していった。
「という訳で、ろくに味わう事すら出来なかった訳だ」
「そりゃあ……翠の体だしな」
「おいそれどういう事だコラ」
「す、すんません……」
胸元を掴み上げ、ギラリと睨み付ける翠。怯んだ一刀は直ぐ様謝罪する。
すると突然、星が膝から崩れ落ちた。
「せ、星!?」
「大丈夫か!?」
「あ、ああ……すまないが、肩を貸してくれ」
二人は慌てて駆け寄り、星の体を支えてやる。微かに星の頬も赤くなっていた。
「情けない事だ……もう酔ってしまうとはな」
「あいにく、あたしはあんま酒とか飲まねぇからな。酒よりメシの方に目がいっちまうから」
「とにかく、部屋で休んだ方がいい。よっこらせっと」
「っ!?」
一刀は星の膝裏に手を入れ、先程の鈴々と同じ様に、お姫様抱っこで持ち上げる。正に不意討ちと言っていいほど突然な事で、星も目を丸くしていた。
「ちょっと揺れるかもしれないけど、我慢してくれ」
「……………………」
「星?」
「……ん?あっ、ああ、分かった。よろしく頼む」
我に帰り、星は慌てて返事を返す。この時、彼女の表情に赤みが更に増していたのだが、一刀はそれをお酒のせいと解釈した。果たしてそうなのであろうか……?
(まったく、この趙子龍がしてやられるとは…………やっぱり一刀はズルすぎる)
(ホンッッッット無自覚でやってんだからタチが悪いよな……)
そっぽを向きながらも、彼の腕の中で少し微笑む星。後ろから見ていた翠も、少しだけ顔を赤くしながら、ついていった。ついていく最中も、翠は目を離さなかった。その目にはどこかせがむ様なものが見えた。まるで自分もしてもらいたいかの様に。
そしてその事にはまっっっっったく気づいていない鈍感主人公である一刀。この物語でも、スキルを充分に発揮していくのであった。
青空に漂う白い雲。丁度良い天気の下、元気よく走り出す少年がいた。
「うわぁ~、すごいです♪」
村の道等を駆け回る少年、瑠華。といっても、中身は朱里なのだが。
散歩に出掛けた瑠華と朱里の二人。村の中を歩いていると、急にかけっこでもしようか、と瑠華が言ってきた。朱里は最初乗り気ではなかったのだが、瑠華が先手を打ってきた為、やむ無くする事となった。
強靭な脚力が自慢の瑠華。その速度は、本気を出せば姿さえも認識出来ない程だ(足を傷めてしまう可能性があるが)。走行中の向かい風が髪を揺らし、体全体に流れていく。
「風が気持ちいいです……♪」
「はぁ……はぁ…はぁ……しゅ、朱里………ちょっと、待って……!」
「あっ、瑠華君」
朱里は瑠華の姿=自分の体に気づき、スピードを緩めて制止する。
朱里の体になっている瑠華は、いつものペースで走っていた。だが、今は体が違う為、当然彼女の華奢な体がついていける訳がない。朱里は瑠華に駆け寄り、手をとって体を支えている。
「だ、大丈夫ですか……?」
「ぜぇ……っ……っはぁ、はぁ…だ…大丈夫じゃ……ない、かも…………」
結果、瑠華の完敗である。
肩は上下に揺れ、息も絶え絶えになっている。生まれたての小鹿の様に、足もガクガクと震えており、朱里が手をとってくれなければ、すぐに崩れ落ちてしまうだろう。
「ご、ごめんなさい。私、ついはしゃいじゃって……」
「い、いや、気にしなくていいよ……言い出しっぺは、僕、だしね……」
なんとか笑って見せるものの、顔には汗がダラダラと流れていた。いつの間にか、村から少し離れた林の中まで走ってきた二人。
朱里は瑠華の体を支えたまま、近くにある一本の木に彼を横たわらせる。尚も止まらない汗を、ハンカチで拭いていく朱里。
「ふぅ……っ……ちょっと、落ち着いてきたかな」
「確か、近くに河原があった筈。私、ちょっと手拭きを濡らしてきますね」
「ああ、うん……気を付けてね……」
胸元の服を掴んで扇ぎ、胡座をかく瑠華。スカートから“白いもの”がちらついている事に気づいていない。
普段の朱里からは決して見れない姿である。
「る、瑠華君!見えてますよ!?」
「えっ?ああ、ごめんごめん」
朱里に指摘され、扇ぐのを止める瑠華。スカートを正して、正座になる。
「ふぅ、それじゃあ行ってきますね」
「う、うん。気を付けてね」
朱里は振り返ると、川原へと向かった。その後、瑠華は深々とため息を洩らした。
「女の子って、色々と気を遣うものなんだな~……」
う~ん、と唸り出す瑠華。その際、腕を組んで胡座をかいている。ついさっき注意された事なのに、まったく気づいていなかった。
「よっ、こいしょ……はぁ~涼しい」
息もすっかり整った。丁度木陰の下におり、涼しい風も吹いていた。その心地よさに、瑠華は仰向けで寝転がる。
「それにしても、朱里の体になってる事すっかり忘れて……た…………」
すると、何かを思い出したかの様に、瑠華の表情が氷の様に固まる。
「ちょっと待てよ?朱里も今は“僕の体”って事は……」
やがて焦りの色が見え始めた。走り終わった後に出ていた汗とは、また別物の冷たい汗が頬に垂れ落ちる。
「まずい……!」
勢い良く起き上がり、瑠華は朱里の元へと駆けつける。その様は、正に鬼気迫る表情であった。
緩やかに流れゆく川の水。朱里はその川の近くに来ると、手拭きを暫し浸す。その際にも風は吹き、付近の木々の葉を揺らしていく。風鈴の様な役割を果たしている様で、こちらも涼しい気分になる。
「それにしても、私ったら、あんなにはしゃいじゃって……」
村や野道を元気よく駆け回った所を思いだし、恥ずかしさで頬を少し赤らめる。
いつもなら少し走っただけで疲れてしまうのに、今ではどれだけ走っても息切れ一つ起こさない。走っている内に段々と楽しくなり、つい夢中になってしまった。
「瑠華君に、子供っぽく見られたらどうしよう……」
瑠華からすればまったく心配はないのだが、朱里だって一人の女の子。想いを寄せる異性の目を気にしてしまう。
「と、とりあえず落ち着きましょう。うん、落ち着こう……」
深呼吸をして気持ちを抑える朱里。落ち着きを取り戻し、浸していた手拭きを取る。
「早く戻らないと」
そして朱里は振り返り、瑠華の元へと戻っていく。
――憎イ――
「えっ……?」
何とも形容し難い声が聞こえ、朱里は足を止めてしまう。
「だ……誰………?」
辺りを見回すも、その場には朱里一人だけだ。さっきまでの涼しい風も、今は冷たく吹き抜けていく。
まるで時間が制止した様な、不気味な感覚に襲われ、朱里は体を震わせる。
――恨ンデヤル――
「な、何……!?」
耳に入っていく恐ろしい声。今度は、一言だけではなかった。
――何デアイツナンダ……――
――俺ノ……俺ノモノダァ!――
――奪エ!奪ウンダァ!――
――貴様、裏切ッタナ!?――
――許サナイ……!――
――ヨクモヨクモヨクモォッ!!――
――末代マデ呪ッテヤル!!――
――何故ダ……何故私ガコンナ目ニ……!?――
怨み、妬み、憎しみ、怒り。
負の感情を深く宿した言霊が、朱里の頭の中を支配していく。
「い、いや……やめて……やめて………もう聞きたくない……………!」
次々と流れてくる憎悪の言葉に、朱里は耳を防いでいる。しかし脳内に響き渡る恐怖の声は収まらない。
――殺シテヤル!!――
「…ぅぅ……いやぁ……怖いよぉ……………!」
その場に蹲り、閉じている瞳から、大粒の涙が溢れ出てくる。だが、追い討ちをかける様に“声”は止まない。
――死ネ――
「っ!?」
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
――死ネ――
「……ぁ……ぁぁ…………」
流れ出る涙で頬は濡れ、呼吸も憔悴しきっている。瞳からは光が失われつつあった。
「……助…けて………誰、か……………」
心は恐怖に囚われ、ポツポツと呟く朱里。小さい声量で、まず誰にも気づかれはしないだろう。
次の瞬間、無意識なのか、意識をもってなのか。朱里は微かに口を動かした。
「……瑠華……く…ん………」
朱里は静かに、ゆっくりと瞳を閉じていく。
〈朱里ぃぃぃぃぃぃぃ!!!〉
呼び起こされた様に、目を大きく開く。
呼ばれた方向を向くと、こちらへと走ってくる一人の少年の姿が見えた。
「……瑠華…君……?」
視界が潤んでおり、両手で目を擦る。はっきり見ると、赤いベレー帽を被った金髪の少女。つまりは自分の姿があった。
瑠華は息を切らしながら、朱里の元へと辿り着いた。
「はぁ……はぁ……朱里、大丈夫……!?」
「瑠華、君…………瑠華君!!」
「えっ、うわっ!?」
朱里は急に瑠華の胸元へと飛び込んだ。瑠華は対応出来ず、尻餅をついてしまう。慌ててしまう瑠華だったが、朱里の様子を見て、冷静になる。
体が震えていたのだ。
すると瑠華は思わず、彼女の頭に手を乗せて、優しく撫でていた。自分も一刀にしてもらった時、これで落ち着いた事があったからだ。
「ごめん、朱里……気づくのが遅くて」
「瑠華、君……うっ、うぇぇぇぇぇぇん!!!」
「大丈夫、もう大丈夫だから……」
朱里は瑠華の胸の中で、何かが弾けたかの様に泣き出した。脆く、儚い子供の様泣きじゃくる彼女を、瑠華は黙って優しく受け止めていた。
朱里も絶えず嗚咽を吐き出していく。彼の姿を見た瞬間、心が救われた様な感覚が起きた。思わず彼の事を抱き締める朱里は、身を包んでくれる安心感に気を緩める。
彼の存在のおかげで、朱里の心を支配していた負の感情はなくなっていった。
「落ち着いてきた……かな?」
「…っ……ん………」
場所を村の名物である桃の木々がある野原に移した瑠華。朱里も落ち着いてきて、泣き疲れて眠ってしまった。瑠華の肩を枕がわりにして、すやすやと静かに寝息をたてている。目尻には泣いた跡が残っていた。
「………………」
瑠華は顔を正面に戻し、一息つく。その表情には、どこか影が落ちていた。
「朱里に怖い思いさせちゃったな」
恐らく、かつての自分と同じ体験をしてしまったのだろう。瑠華は罪悪感でいっぱいだった。
朱里が体感した、あの恐怖の時間。それは、瑠華が“全てを失った日”から彼が体験した出来事でもある。
かつて憎悪に支配され、“あの姿”で暴走した。初めて人間を殺してしまったその日以来、瑠華は毎晩その悪夢に苦しめられてきた。
延々と流れ続ける怨鎖の声。耳を塞いでも鳴り止まない、夜もろくに眠れない、正に生き地獄だった。
その地獄は、制御するのに二年は掛かった。
何度も震え、怯え、苦しい思いをしたが、それでも復讐心を胸に抱いて、ようやく耐え抜いた。
「早く元に戻んないかな。そうすれば、もうあんな怖い思いはさせられずに済むのに……」
あの地獄をすっかりと忘れており、結果的に朱里を苦しめてしまった。自分が甘かった。しかし、記憶の中から消し去りたい、思い出したくもないものである事も事実。
「それに“あの姿”を見られたら、僕は……僕は……」
瑠華はそれが一番怖かった。闇に心を奪われて暴走した“あの姿”。あれだけは誰にも見られたくない。
一刀にも、皆にも……。
何より、朱里には絶対に……
「………………」
何故か彼女にだけは見られたくないという思いが強かった。確かに朱里も勘づいてはいるが、“あの姿”はまだ見ていない筈。瑠華はそう自分に言いつけ、納得させる。しかし、彼女に対する気持ちに関しては理解する事が出来なかった。
ふと、彼女の方を見る。
「……ん…………」
「………………」
気持ち良さそうに眠っている。
自分の体でなければもっと良かったのだが…………。
彼女の寝顔を見ていると、こちらまで瞼が重くなってきた。
「ふぁ……ねむ………ちょっ、と一休………み………………」
頭が少し垂れ下がり、瑠華も眠りについた。
その時、体を動かした事と、朱里が寝返りをうった事で、朱里はそのまま瑠華の――――――
時が夕方へと近づいてくる頃。
場所は屋敷の方へと変わり、一刀は自主鍛練を終えると、手拭いで汗を拭き取り、廊下を歩いていた。
「っと、そうだ。皆の様子も見に行っておくか」
皆の様子が心配になり、一刀はまず愛紗の部屋へと向かった。
扉の前まで来て、ノックをする。
「愛紗、入るぞ~?」
……返事がない。
一応入る合図はした為、部屋に入る一刀。寝台の上には、愛紗が泣きつかれた様に眠っており、側にある椅子には紫苑が腰かけて、コックリ、コックリと夢の中に旅立っていた。
「寝ちゃってたか……」
一刀は二つある毛布を見つけると、まず愛紗に羽織らせ、次に紫苑に被せる。その時、紫苑が身をよじらせる。
「う~ん……」
「……なんか、子供みたいだな」
思わずクスッと笑ってしまう一刀。いつの間にか、彼女の綺麗な黒髪を撫でていた。いつもの凛々しい姿もいいが、今回の穏やかな所や、こういうあどけない寝顔も可愛らしい。
一刀が撫で続けていると、黒髪少女の瞼が、ゆっくりと見開かれた。
「あっ、起こしちゃったかな?愛紗……じゃなくて、紫苑だよな」
「……………………」
「ん?どうしたんだ、紫苑?」
「~~~~~~~っ!!?」
「へっ?」
「は、離れてくださいっ!!」
「ぐへっ!?」
目が合った瞬間、彼女は顔を沸騰したやかんの様に紅潮させ、一刀を突き放した。肺が圧迫された感覚に遭い、背中から壁に激突する。ズルズルと地面に落ちていく様を、愛紗……紫苑?は睨んでいた。
「あ、あれ……?」
「あれ、ではありません!寝ている最中に、あんな……あんな……!お前と言うやつは―――」
「ちょっ、ちょっと待った!」
「言い訳は無用だ!」
「も、もしかして………………愛紗?」
「えっ?私は…………………………あれ?」
一刀の言葉に、愛紗は自分の体を見回す。長く艶やかな黒髪、下を向けば見慣れた豊満な胸。そして何より、紫苑の体が椅子に座っていたのが決定的だろう。
「も……戻った!?」
「マジか……やっぱり時間制だったんだな」
戻った事を確認すると、愛紗はほっと胸を撫で下ろす。
「はぁ……一時はどうなるかと思ったが、やはり自分の体が一番だな」
「ああ、愛紗はやっぱりそうじゃなくちゃ。黒髪がよく似合う、凛々しくて可愛い女の子の愛紗が俺は好きだな」
「っ!?ま、またお前は!!」
「ちょっ、どうしたの!?」
「うるさいうるさいうるさ~~い!!」
またも無意識発言を発射する一刀。一瞬で顔を赤くした愛紗。ポカポカと一刀の胸を叩く。当然、一刀はまったく理解していない。
「う、う~ん……あらあら?」
二人の騒ぎで目が覚めた紫苑。何が起こっているのか分からず呆気に取られる。しかし、愛紗と今の自分の姿を見て、元に戻った事に一安心。そして、また一刀が何か言ったのだと悟り、微笑ましく見守っていた。
すると、部屋の扉が開かれた。
「おかあさ~~ん、お腹空いた~~~」
「あら、璃々」
部屋に入ってきたのは璃々ちゃん。夕食の時間になっていたらしく、母である紫苑の元へとやってきたのだ。
紫苑は今度こそ、と両手を広げ、璃々が来るのを待つ。
璃々は、トテトテと走りながら、紫苑の方に――――――――――は行かず、
「…………………………………………え?」
「おかあさん♪」
「えっ!?」
寝台の上にいる愛紗に抱きついた。驚いている愛紗には構わず、璃々はすりすりと胸に頬をつける。
「ほら、今度は間違えなかったでしょ?」
「………え~っと、璃々?」
「璃々ちゃん……残念だけど、紫苑はあっち」
「……あれれ?」
頭の上に?を思い浮かべながら、璃々は首を傾げる。すると、手をポン、と叩く。
「あっ、璃々間違えちゃった」
ガッ!ガッ!ガッ!ガアアアアアアアン!!!!
紫苑、またも撃墜。
「うっ、うっ………うあ~~~ん!!」
「し、紫苑……」
「……ドンマイ」
「おかあさん、ごめんね~?」
子供の様に泣き出してしまった紫苑。そんな彼女に深く同情する一刀と愛紗。璃々はまたも謝りながら、おかあさんの頭を撫でている。
そしてその日の夜は、親子仲良く抱き締めながら眠ったという…………。
因みに他では…………。
【桃香と鈴々の場合】
「うっ…うぅ~~……………」
「桃香お姉ちゃん、大丈夫か~?」
「お、お腹が爆発しそう……うぷ」
「じゃあ、今度は桃香お姉ちゃんは寝ておくのだ。鈴々はご飯を食べに行ってくるのだ♪」
「えっ鈴々ちゃん?看病とかは?ねぇ?鈴々ちゃん?」
元のチビッ子に戻った鈴々は、夕食を食べに出ていった。桃香が体型の事を気にしていた為、少ししか胃が膨らんでいない。満タンにしようと、鈴々は部屋を出ていった。
「そ、そんな~~…………うっ!お、お腹が………うぇ~~ん……」
鈴々のとんでもないドカ食いで満腹感がありすぎる桃香。更には原因である鈴々にも見捨てられ(本人に悪意なし)、ベッドに横になったまま、えんえんと泣き叫ぶのであった。
後で一刀が様子を見に来てくれて、嬉しい思いをしたのはまた別のお話。
【星と翠の場合】
「「うぅ~…………」」
お互い、別々の寝台で仰向けに寝転がる二人。顔は青ざめており、気分が優れないのが見て分かる。
「す、翠……お主…酒はあまり飲まないうっ……のでは、なかったのか……」
「わ、悪ぃ……星の体なら、いけると……うっ、思ったけど………調子に、乗りすぎた………」
そう、二人は共にお酒でダウンしているのだ。星は翠が飲みすぎた為、気分を悪くしている。翠は、星が慣れない体で飲んでいた為、体が酔いに対応しきれなかった。
「お、お主なぁ……もうちょっと、うぐっ……加減という……ものをだな……」
「星だって、人の体……勝手にうぷっ……いじくりやがって…………これでおあいこ、だろ……?」
「うぬぬ……」
そう言われると何も反論出来ない。そのまま星と翠は、寝台の上でひたすら酒の副作用と戦っていた…………
と思いきや、様子を見にきた一刀が二人の部屋に入ってきて、優しく看病してくれたのであった。
空は夕焼け色に染まり、そろそろ夕飯の支度を始める時だ。
それでも、まだ家に帰っていない二人がいた。
「…………う~ん……?」
眠りから覚め、目を開ける朱里。次の瞬間、瞳を大きく開く。
「る、るるるるる瑠華くんっ!?」
「……ん…………」
思わず声を上げてしまい、両手で口を塞ぐ朱里。幸い、瑠華は起きていない様だ。
何故朱里は驚いたのか?
それは…………瑠華の頭が自分の膝の上にあったから。つまり、自分は瑠華を膝枕してあげている状態になっていたのだ。
(えっ?えっ?ど、どうして!?何で瑠華君が私の膝に!?あれ?瑠華君がいる……ということは………やっぱり!私も元に戻ってる!!)
只今絶賛混乱中の諸葛孔明。顔を赤くしながらも、状況を把握して、呼吸を整え始める。
(と、とにかく元に戻れたのは確かですね……。それにしても、何で瑠華君が私の膝に………)
「……んっ…………」
「………………可愛い……♪」
クールな雰囲気とはまた違う、子供の様な可愛らしい寝顔。可愛いと言ったら彼は怒るかもしれないが、事実だから仕方ない。思わず頬が緩み、朱里は無意識に瑠華の頭を撫でていた。なぜ膝の上にいるかなんてもうどうでもいい。むしろ良い(朱里にとって)ハプニングだ。
そよ風が流れていき、木にもたれながら夕日の光を眺める。
こんな幸せな時間が永遠に続けば…………
そう考えていると、不意にあの“恐怖”が過った。
「……っ………!」
瑠華の体で感じ取ったあの恐ろしい声。もしかしたら、彼はあの様な恐怖を何度も体験したのだろうか。そう考えると、恐怖で体が震え、同時に瑠華の事を痛々しい表情で見つめた。
“あの村”でもそうだった。全身闇の様な黒ずくめに身を包み、優しさの欠片すら失った彼の姿。あんな姿は見た事もなかった。いや、見たくはなかった。
あんな優しい彼があんな姿になるのは嫌だった。元に……元の彼に戻ってほしい。
そう願うしか自分には出来なかった。
結局、その時は一刀達のおかけで事なきを得たが、朱里は少しの後ろめたさを感じていた。
仲間に瑠華の事を伝えずに自分で隠していた事。つまりは仲間を信用していなかった様にも見受けられる。朱里はそんなつもりはなかったのだが、もし瑠華がこれ以上居場所を失い、自分の元を去ってしまったら?
二度と会えなくなってしまったら……
そう考えると、何も言えなかった。
「私に……何か出来たら………」
自分には何も出来なかった。最初から一刀達に相談するべきだった。なのに勝手に思い込んで事を悪くさせてしまった。
朱里は更に落ち込みを見せる。
しかし、一刀達からの言葉を思い出し、首を横に振って弱音を振り払う。
「弱気になっちゃ駄目……いつも守られてばかりだけど、いつか私が……瑠華君を…………」
密かな思いを胸に秘める朱里。
ただ、今はこの時間をゆっくりと過ごしたい。瑠華と“二人だけ”の時間を……
“二人だけ”の………………
「…………っ!」
ここで朱里は気づいた。今思えば、ここには誰もいない。自分と、瑠華しか……
「い、今なら、誰も…………」
キョロキョロと辺りを厳重に見渡す朱里。
「右よし……左よし……後ろよし……前よし」
前後左右共に誰もいない。確認すると、ゆっくり下を向く。そこには当然、瑠華の寝顔がある。
「…う~ん………」
「すぅ……はぁ…………」
何かを決意したのか、朱里は一呼吸置くと、覚悟を決めた顔つき(若干顔が赤い)で瑠華の顔を見る。
そして目線は、瑠華の口元に運ばれている。
「………………」
体を少し曲げ、顔を、唇を瑠華の方へと近づける。そして目を閉じ、徐々に徐々に自らの唇を瑠華の口元へと持っていく。夕焼けの色も混じっているのか、顔は完全に真っ赤で、心臓の鼓動が耳の中でドクン、ドクン!とうるさく鳴り響いている。
瑠華の寝息と、朱里の少しだけ荒い吐息がぶつかり合う。
そして……口と口とが触れ合う――――
「う~ん……」
「んむっ!?」
寝返りをする瑠華。そして朱里の唇は、瑠華の柔らかい頬に触れた。
(えっ、ええええええっ!!!?)
ボンッ!と湯気を出し、顔を更に熱くさせて、朱里は素早く起き上がる。
このタイミングで!?と思う位に寝返りをうった瑠華。中々ガードが固い様だ。
(わ、わ、私ったらなんてことをっ!?瑠華君の許可なしにあんな……あんな……もう、私のバカバカバカバカ~~~!!)
ポカポカと自分の頭を叩く朱里。一時の気の迷いとは言え、不意打ち当然の事をしようとした自分を叱りつける。
「うぅ~~……はぁ」
なんとか冷静さを取り戻し、一息つく朱里。この場に一人でいる(瑠華が寝ている為)というのが幸いだった。もし誰かに見られでもしたら、恥ずかしさのあまりもう顔も見れなくなるだろう。
落ち着きを取り戻し、もう一度瑠華の顔を見つめる朱里。
「やっぱり、駄目ですよね。ちゃんと、瑠華君の気持ちも考えないと……意味がありませんから………」
「…………」
「もし、私が想いを伝えたら…………あなたは答えてくれますか?」
すやすやと眠っている瑠華に対し、耳元で呟く朱里。もう一度見てみると、何やら幸せそうに微笑んでおり、朱里もそれを見て笑顔になる。
互いの気持ちを知ってから、精一杯示していこう。
そう決めた朱里は、もうしばらくの間、この時間をゆっくりと過ごした。
ゆっくり……ゆっくりと…………。
目を覚ました後、瑠華が恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてた事と、それを見て可愛いと感じて朱里がクスクスと微笑んでいたというのは、言うまでもない。
再見♪
因みに、その怪しげな壺を作った仙人?は……
貂蝉「あらん?私が作った壺じゃなぁい。まさかこんな所に埋まってたなんて」
瑠華「……で?何の為に作ったんですか?」
貂蝉「これを使って良いオノコと入れ替われば~、風呂場へ入った時怪しまれないじゃなぁい?」
瑠華「つまり……そんな下らない事で今回の騒動が起こった訳ですか」
貂蝉「若気の至りってやつよん♪瑠華ちゃんもそんなに怒らな~いのっ♪朱里ちゃんと入れ替わってムフフ♪な事になったく・せ・に♪」
瑠華「ぼ、僕は別に……」
貂蝉「あらあら~?もしかして、も・し・か・し・て~~?」
瑠華「…………」(ブチッ!)←何かが切れた音。
~しばらくお待ち下さ―――
貂蝉「あっ、瑠華君!そんな、そんな氷の様に冷たい瞳で睨みながら撃剣を振り回さないで!あん♪そんな事されたら私……私……ぶるぅああああああ―――」
~もうしばらくお待ち下さい~
一時間後……。
瑠華「はぁ……はぁ……はぁ……やっとくたばったか」
一刀「ど、どうしたんだ瑠華?」
瑠華「別に……何でもないよ?」
一刀「そっ、そっか……。ああそうだ。朱里が探してたぞ?」
瑠華「っ!?」
一刀「ほら朱里。瑠華はこっちに―――」
朱里「瑠華く~ん……“オハナシ”はまだ終わってませんよ~~……?」
瑠華「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
直ぐ様全力疾走で逃げる瑠華。
だが孔明の策によって直ちに捕縛され、その後……
一刀「瑠華…………強く生きろよ(色んな意味で)」
おふざけな感じで書いてみました。機会があればまた書きたいと思っております。
見てくださり、ありがとうございました♪
次回もお楽しみに♪
それでは!




