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第30話 魔物と修行

 しっかり休んだあと、午後からはナシルサへ向かって旅をする。鮭とばは非常食にもなるため、荷物にいれる。しばらくは保つらしいし、楽しみだ。


 三日ほど進んだ頃、森の中で私達は初めて魔物に遭遇した。


「本当にコレ、普通の成人男性に倒せるの!?」

「和美ちゃん頑張れー」

「グダグダ言ってないで戦ってみろ!」


 魔物はアカトラの指導のもと、修行の一環として私が倒すこととなった。

 相手は一体。トカゲが人間サイズになった感じで、地を這い、なかなか素早い。

 剣で対応しようにも目線としては下だし、ホウキのように構えてみても全然ダメ。

 運よく当たっても結構固い。

 魔物は人を見ると攻撃してくる習性らしく、追い払うこともできない。

 アカトラからは防御のタイミングの指示がくる。


「しっかりしなさい!勇者でしょう」


 エルは遠目に罵倒してくる。


「くっそー」


 十分位しても倒せなかった。だんだん息も上がってきた。

 あちこちド突かれてあざだらけだ。

 なんとか噛まれるのだけは回避している。

 仕方ないな、と、アカトラが寄ってきた。

 やっと休める!


「和美、手だけで戦う事を考えてはいけない」


 アカトラは特大トカゲを蹴飛ばしながらあしらった。

 そんなことを言われても、わからない。


「蹴るんだ。そして踏む。で、柔らかそうな所に剣を差せば良い」


 確かにアカトラがやるとトカゲは転がっている。

 有効のようだ。


「さあ、やれ」


 トカゲは私の方が弱いと見て食らいかかってきた。

 剣でいなす。

 すかさず、蹴る。

 バスケットボールをうっかり蹴った時のような衝撃。


「うわわ」


 踏むんだよね?

 うわー

 転がったトカゲの腹を踏むと、ぐにっと柔らかい感じがする。

 とりあえず指しやすそうな首あたりを狙い、下に向かって両手で剣を刺した。

 すると、ばふん、と黒い煙が出て魔物は消え去り、小さなトカゲがあとに残った。

 へ?

 思わずポカーンとしてしまった。


「煙を吸ってはダメ」


 ユキちゃんの声に我にかえり、みんなの場所へ向かった。

 煙は魔に関するものだと聞いたことがあったな、と思い出した。



「お疲れ様」

「ありがとう」

「なんか、和美は固定概念にとらわれているよな」


 アカトラが先生らしく言った。


「たぶん、もとの世界の武術のイメージが強いんだと思います」


 実際、人間が人間以外と戦っている様子や映像はあまり見たことがなかった。

 ゲームはあまり参考にならない。大体目線が同じか、とりあえず当たれば倒れるタイプしかやってない。

 さっきの戦いはむしろ、釣りとか生きた魚を捌くのに近い気さえした。対象はかなり大きいけれど。

 それに日本じゃ、ほとんど野生動物は銃か罠で倒す事が多いんじゃないかと思う。


「まあ、慣れだな。今晩は足技を練習しよう」



 そして夜には宿に泊まり、三人は私が初めて魔物を倒したお祝いをしてくれた。


 手元には、ヨーグルトドリンクと紅茶に似たお茶。


「和美ちゃんの初勝利に乾杯!」


 肉やキノコのゼリー寄せ、ピザのようなものなどなど、いつもより豪華な食事だった。


「これからも頑張りましょうね」

「しっかり休むのも修行のうちだ」

「足手まといならないようにな」

「はーい」


 私は胃袋も心も満たされた気がした。

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