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第2話 猫で猫でない

「やあやあ、あなたが救世の勇者さまですか。我が国をよろしくお願いしますね」


 暖かい部屋へ向かう途中で、若干偉そうな猫に出会った。長毛種で白い毛並み、またもや大きな猫だ。

 ジプチとは違い、高そうな生地の服を身にまとっている。

 おそらく護衛なのだろう、鎧を着けた、いかつい猫が5匹そばに控えていた。


「まだ決まった訳じゃ……」

「すみません、殿下。彼女はまだ異世界より召喚して間もないので混乱しているようで……私の部屋にて様々な説明をしなければならないのです。人間にしては薄着なので着替えも。失礼いたします」


 私が余計なことをしゃべる前に、と言わんばかりの勢いでデリックはまくしたてた。


 殿下と呼ばれた猫は好奇心に満ちた眼差しを私に向ける。


「私もついていってはいかんか? 異世界の話、聞きたいのう」

「申し訳ありませんが、彼女が落ち着いてから、こちらから出向きます。異世界人ゆえ、殿下に何かしでかしては大変なので」


 そうか、と殿下は残念そうにして、お付きに帰るぞと声をかけた。

 殿下達から離れたあと、デリックに今の猫達は? と聞いてみた。


「王太子殿下だよ。そして喋らせなくてやはり正解だったな。彼らは猫ではない。猫と呼ぶと非常に怒る。特に王族はね」


 私は首をかしげた。猫に猫と言って何が悪いのだろうか。


「君の世界の猫はあんな姿だったかい?」

「もっと小さかったし、四足歩行だったけど」

「だろう。ジプチ、ちょっと尻尾を見せて」

 はい!とジプチが後ろを向くと、そこには、

 ……いち、にぃ、さん?

 三本の尻尾があった。


「彼らは猫又族という。誇りが高く、猫とは近くて異なる種族でな。数えるときも何匹ではなく何人と言わないと怒られるんだ」


 デリックは怒られたことがあるようで、しばらく苦い顔をしていた。


「猫又族は尻尾が多いほど位が高いことが多いんですよ。魔力も多いとも言われています。一般人が二本尻尾のフタツマタ、魔術の素質のある者が三本尻尾のミツマタ、王族がヨツマタといいます。僕はミツマタなので師匠に弟子入りしたんですよ」


 そう補足したジプチは誇らしげに胸を張っている。チャーミングなこのぶち模様の猫又族はエリートだったのか、と私は少し意外に思った。

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