25-4 ネコ戦士、モンスター研究家に手紙を送る
サンダードラゴンが避雷針の役割を果たしてたおかげで、雨季が来ても森林地帯やその周辺に雷が落ちなかった…という事実に私は衝撃を受けた。
前のサンダードラゴン亡き今、サンちゃんが避雷針の役割を果たすことになるんだ。
そう言えば、モンスターの神様にへばりついてたムシみたいなものだった四頭のドラゴンたちは、それぞれ大陸の四方を守護する立場だったって話だ。
サンダードラゴンが西の守護者になったのは、大陸の中では雨の多い西から南の地域を雷による被害から守れる能力を、神様からもらっていたからかもしれない。
こんなの、ケラーさんが知ったら狂喜乱舞ものじゃない?
サンちゃんと一緒に村に戻った私は、早速ケラーさんに手紙を書いて送ることにした。
サンちゃん…サンダードラゴンは雷をその身に受ける体質らしく、前のサンダードラゴンがいなくなったせいで、今年の雨季に森のリンゴの木に雷が落ちて枯れたこと。
サンちゃんが生まれ育ってきたので、もう雷は落ちなくなったらしい…ということを手紙に書いて、私はカールさんに送ってもらった。
「ケラーさん、この間倒れたけど大丈夫かな…」
「そうだにゃあ。元気でいてくれるといいんだけどにゃあ…」
カールさんとそんなことを話していると、返事を持って伝書鳩が戻ってきた。
カールさんは返事を読み始めて、怪訝そうな顔をした。
「…ケラーさんじゃなくて、ダナンさんて人が来るって…」
「ダナンさんにゃ…?」
ダナンさんはモンスター研究所の観測隊士で、飛行士だ。
ケラーさん、そんなに体の具合、悪いの…?
ケラーさんのことを心配してたら、翌日ダナンさんが馬に乗ってやって来た。
「ネコ戦士殿、お久しぶりです!」
ダナンさんが馬から降りて挨拶してくれたので、
「久しぶりにゃ!…ケラーさん、体の具合、良くないのにゃ…?」
と私はおそるおそる尋ねてみた。
するとダナンさんは
「いいえ、体調が悪いというわけではありません。ただ、もう高齢ですし、先日ベリー村で倒れたということもあり、私が代理で参った次第です」
と言った。
「…そうなのにゃ…」
そう言いながら、私がカールさんと顔を見合わせたら、
「所長はネコ戦士殿からのお便りに興奮していたのですが、先日倒れた件は陛下にもご報告申し上げておりましたので、陛下が所長の体を憂慮なさり、王都から動かぬようにと命ぜられたのです」
とダナンさんは言った。
「王様の命令じゃ、仕方ないにゃあ」
ケラーさんは多分70歳ぐらいだと思うし、王様が心配するのも仕方ないよねぇ…
そう思いつつ、私はカールさんちにダナンさんを案内した。
とりあえず、ケラーさんの代理ってことなので、私はダナンさんにことの次第を詳しく説明した。
「なるほど、森林地帯に雷が落ちたことは、モモイロヒヒたちから聞いたのですね」
カールさんちの椅子に座って机に向かい、ダナンさんはノートにメモを取った。
前にケラーさんが私んちに来て、モンスターの神様から聞いたこの世界の成り立ちをメモしてたノートだった。
私がノートをじっと見ていると、ダナンさんはそれに気づいたようで
「このノートは所長に持たされたものです。ネコ戦士殿とサンちゃんから詳細を聞き、書き記してくるようにとのことです」
と私に言った。
ケラーさんがダナンさんにこのノートを託したのは、もしかしたら、ダナンさんにモンスター研究所長を継いでもらいたいからかもしれない…
私は、前の村長が亡くなって、カールさんが新しい村長になった時のことを思い出した。
世代交代ってのは仕方がないことだけど…淋しいなぁ…と思っていると、
「サンちゃんはどこにいるのですか?」
とダナンさんが聞いてきた。
「サンちゃんはまた脱皮して大きくなったから、もう私の家にいられなくなって、広場に簡易的な家を建てたのにゃ」
私はそう説明しながら、広場の方にダナンさんを連れていった。
「こんにちは!サンちゃんだよ!」
広場に建てたテントみたいなサンちゃんの家にダナンさんを連れて入ると、サンちゃんはダナンさんに挨拶をした。
「サンちゃん…立派になったねぇ…」
すっかり大きくなったサンちゃんを見上げて、ダナンさんが目を丸くしていたら、
「サンちゃん、もっとおおきくなるよ!とうりゅうさんがいってた!」
サンちゃんはそう言って笑った。
そしてサンちゃんは、ダナンさんに尋ねられるままに、サンダードラゴンの体質について説明をし始めた。
「サンちゃんがいるとね、カミナリはサンちゃんにあつまるの」
「カミナリはサンちゃんのからだのなかにたまるけど、たくさんになったら、ままにおしえてもらったやりかたで、カミナリだすんだ」
「ままにおしえてもらったやりかた?じめんにつのをさして、つちのなかにカミナリだすんだよ!そしたらだれにもめいわくにならないの!」
ダナンさんは、サンちゃんの言葉をノートに書き留めていった。
そしてダナンさんは私に向かって
「サンちゃんは本当に優しくて賢いのですね。ヒトともこうやって自然に話せますし…ネコ戦士殿と同じく、モンスターとヒトとの架け橋になってくれそうですね」
と言ってほほ笑んだ。
「サンちゃんの未来はサンちゃんに決めてほしいから、そうなって欲しいとかは私からは言えないにゃよ。ダナンさんは、ケラーさんの後を継ぐのにゃ?」
私がそう返すと、ダナンさんの顔がこわばった。
「…はい…所長からはそう言われています…」
と言ってから、
「ですが、少しでも長く…所長が所長でいてくれることを、私は願っております」
ダナンさんは、そう続けた。
「そうだにゃあ。私も少しでも長く生きて、サンちゃんを見守りたいにゃ」
私の言葉に、ダナンさんはうなずいた。
そしたらサンちゃんが
「まま、サカナいっぱいたべて、ひゃくねんがんばろう!」
と言ったので、
「百年は無理にゃよ!」
私は笑ってサンちゃんにそう返事をした。
それでも…百年は無理でも、少しでも長く、この子を見守れますように…!
最近うちのネコは、ゆっくり一段ずつ階段を下りるようになりました。以前は、たたたたたたっ!と小気味よい音を立てて走って下りていたんですが…これも老化ってことなのかなぁと思うんですが、ジャンプ力とかは相変わらずです。そこらの違いはやっぱりナゾだなぁと思います。




