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星を超えて世界を変えた日~星が導くのは、希望か、それとも終焉か。~  作者: 廻野 久彩
第5章 星を蝕む座標

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プロローグ:干渉の始まり

世界は、まだそれを知らない。


名を与えるという行為が、どれほど深く──そして残酷に、この世界の座標を変えてしまうかを。



風が吹いていた。凍えるような夜風。

その中に、微かに焦げたような“何か”の気配が混じっていた。


空が歪む。座標が、軋む。星の軌道が、わずかに、狂う。


その兆しに、灰羽の隼が空を翔ける。


──記録せよ。これは、変質する観測点の物語。


灰のごとき羽根をもつ小さな隼、名をシェルムという。


誰のものでもなく、ただ“観測するために在る”存在。世界の狭間に存在し、語る者。


いま、その眼は、セファリア凍域を見下ろしていた。


不安定な座標、異常個体の魔力反応、そして──再び現れた“呼ばれていない座標”。

その中心に、“名を与えられた存在”がいた。


いや、違う。


──あれは“名を与えられた”のではない。


あれは“名を得た”のだ。自らの魂を震わせ、術式を変え、存在の座標を書き換えた。


それこそが、干渉の始まり。


やがて、星の底で──何かが、目を覚ます。


世界の観測は、もう静かではいられない。



星の座標が、ひとつ、狂った。


それは誰にも知られることのない、小さな“誤差”だった。その微かな歪みは、世界に静かに波紋を広げていく。


祈りにも似た術式が、雪に沈む大地で息づいていた。


呼ぶ声も、応える星もないはずのその地に、なぜか“痕”は生まれ、熱を帯びていた。


星神術──


それは本来、誰の手にも触れられぬはずの力。けれど、それを“知ってしまった”少女がいた。


彼女は、ただ生きるために、誰かを護るためにその力を振るった。


いつからか、力が先に目覚め始めていた。


──何かが、呼ばれている。

──何かが、目覚めようとしている。


星神の沈黙が続くなかで、その“痕”だけが、まるで何かを喰らうように、音もなく広がっていく。


それは祈りではなく、もはや、願いですらなかった。


名もなき術式が、空に牙を向ける。

星喰みの“予兆”は、確かに世界を揺らし始めていた。


少女はまだ、その意味を知らない。

ただ静かに、雪の底で──星の声が、揺れていた。

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