もふもふの子犬
ぱっと見…少し大きめの灰色の毛玉のように見えた。だがよく見れば、子犬が洞窟の隅で丸くなっていたのだ。
灰色の毛には艶がありとても綺麗だ。角度を変えると毛は銀色に輝き、もふもふで長い尻尾も印象的だ。それに直立の耳もピコピコ動いてなんだかほっこりとした気分になる。麓の町で見かける橇を引く犬の子供に似ているようだが…?
でも、イメージとしては高級素材の狐の襟巻を思わず想像してしまう。
僕はそんなことを考えながらじっと見ていると、気配を察したのか子犬は、はっと僕を見たのだ。
ビックリしたように一瞬僕のことを見てプルプルと震えていたが、すぐに威嚇するような唸り声を上げる。
「ヴゥゥゥゥ…」
警戒するような唸り声。でも覇気がまったく足りない。洞窟の壁ぎりぎりまで下がると最後のあがきとばかりに抵抗しようとしているようだ。
この様子から、もしかしたら人間に追われてここまで逃げてきたのかもしれない。
でもなぜ…? こんな雪山に子犬がいるのだろうか?
それに子犬じゃなくって…狼の子供なのかもしれないな。
僕はさらに観察してみると、後ろ脚を引きずっていることにも気づいたのだ。ときおり引きずっている方の脚を舐めている。よく見れば赤く血に染まり怪我をしている。
どちらにしろ早く手当てをしないと…そう思って子犬に一歩近づくと、さらに警戒するような低い唸り声を上げてきたのだ。
駄目だ。近づけない…。無理に近づいても子犬の傷に響くだろうし、まずガブッと噛みつかれる。この際、噛みつかれるのはしかたないとしても…無理に捕まえようとしても、子犬の傷をさらに悪化させないかと心配だ。
ここは、無理に近づかず様子を見て、根気強く警戒心が無くなるのを待つしかない。
僕は敵意がないことを示すためこれ以上は近づくことはしなかった。君の敵ではないんだよっと僕は示したかったのだ。
完全な根競べだ。初めこそ唸り声を上げ続けていたが、僕がこれ以上近づかないことがわかると、表情を少しだけ和らげ僕の顔をじっと見ている。
黒色のつぶらな瞳が僕の顔を映していた。子犬の方も僕の様子を伺っているようだ。
僕は、警戒心が少し和らいだと感じるとポケットの中を探ったのだ。




