僕が使える魔法
食事を終えるとシュナは乾燥させた薬草をひとつかみ、その辺の小石を手にとるとそれを黙々とすり潰していく。そして、初歩の水魔法で数滴の水を呼び薬草と混ぜ練り上げていったのだ。
まさかここでも…どんなに頑張って努力しても、数滴の水しか呼びだせなかった水魔法が役に立つとは思わなかったな。
シュナが一番得意としているのは闇魔法。しかも気配を消す魔法しかまともに使えない有様だ。
その次に、血止めと傷を薄く塞ぐだけの治癒魔法。あとは水と風の魔法もかろうじて使うこともできるが…その内容はあまりに酷く散々なものだった。具体的には数滴の水を呼びだしたり、そよ風を吹かせる程度のものだったのである。ちなみに、火と光魔法は彼と相性が悪いのか全く発動すらしない…。
魔物討伐に使えるような強力な攻撃、防御の高位魔法はもちろん、一族の小さな子供でも簡単に使える生活魔法すら満足にシュナは使えなかったのである。
以前は、一族の大人でも扱うのが難しい高位魔法も難なく操れる優秀な弟レイがとても輝いて見えたものだ。レイと比べてよく劣等感に苛まれていたこともあったっけ。けど今はそんなくだらないことをウジウジ考えていてもしかたがない。ない物ねだりはここでは時間の無駄にしかならない。とにかく自分にできることは限られている。それを冷静に分析したうえで考え…知恵と工夫をこらしこの厳しい冬を生き延びなけれならないのだ。
塗り薬が完成すると、僕は子犬を抱いて傷の状態を確認する。巻きつけていた布を慎重に解くともふもふの毛をかき分け傷口を見てみる。どうやら傷はひらくことなく、塞がったままで血も止まっているようだ。
ほっと胸を撫で下ろすと、作ったばかりの塗り薬を新しい布に塗りつけ怪我をしている脚にそっと湿布する。乾燥した薬草は葉だけでなく、幸運なことに小さな枝付きもあったので葉をむしり、小枝をちょうどいい大きさに揃え、怪我をしている脚に添え木として使うことにしたのだ。薬つきの布の上から布切れで巻きつけ添え木を挟み固定して、痛みが走らないように、布で作った紐で丁寧に結んでいく。
意外なことに薬を塗っている間も、灰色の子犬はちょっとプルプル震えてはいたが、暴れて嫌がることなくじっとしていたのだ。
「じっとできるなんて、お前は偉いな…」
「キャウ…」
僕は怪我をしているところを気にしながら、そっと子犬を抱き上げ頭を撫でたのだ。




