三。来るな
不定期更新とはいえ少し期間空きましたね。申し訳ないですね
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護衛など、必要なかったのではないかと思えるほど平穏に色夢の端へと着く。結構近かったな。赤も名残惜しいが、しょうがない。そう思えば、俺の故郷たる青の幻想的な気配より赤の血生臭いほどの鉄のと硝煙の香りの方が合っていたのだろうか。
「これで依頼完了だな?あとは・・・お見送りってとこか」
アーテレイアが軽く会釈をし、笑顔でそう言った。こういった依頼は珍しいそうで、貴重な経験だということで感謝された。依頼をしたのは、職権乱用ともいえる強引なものだったとは思うが、そうだとしても楽な依頼を出したものだ。体を動かすことが無ければ退屈だろう。少なくとも俺はそう思う。窮屈な場にいるよりは、自由な場で仕事をしたいものだ。
「このような辺境まで送っていただき、大変遺憾ながら感謝いたします」
「大変遺憾ながらは余計だろ?せっかく送ってもらったんだから」
まったく本当に、俺以外の人間を下に見るやつだ。魔法使いというものは身分社会が未だに現役だ。王という身分を一番上としてまた、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と続く。世界統一を取った国の言語が元らしいが、もはやその国の名前を知る者すらいない。この世は栄枯盛衰と諸行無常にまみれている。
「煙草がなくなる前に着いてよかった。俺はいったん本部に戻らないと・・・報告書は俺が挙げておく。お前らは別の用があるんだろ?」
「これだからヘビースモーカーは。ボンプ、前から言ってるが煙草はもう少し控えた方が良い。体に毒が過ぎる」
「煙草と酒はほどほどがちょうどいい。それじゃ行くよ。送ってくれてありがとう」
俺達はボンプとアーテレイアに感謝と別れを言った。彼らは俺達から離れてゆく。
「バリアそばの空中に出ます。ですから」
「海に落ちるまでにバリアを開けばいいんだろ?わかってる。」
エノプロウラは二人が見えなくなったころに鈴を鳴らした。
そして、青く染まる。
(※)
ぎゅんと、勢いをつけて行きましょう。早くしないと置いていかれる。私はそんなのは嫌です。貴方は、何かを代償にする時は真っ先に自らの命で支払おうとします。皆の命位、もう少し気軽に賭けてもいいのに。どれだけ言っても結論は変わらないのでしょう。だって、相談もなしに出て行ってしまったんですから。だから、追いましょう。どこまでだって着いていこうって当の昔に決めていますから。
「リヒ、最短距離で行けばどれくらいになりますか?」
「飛ばして8時間・・・って所ですね。一度に3人ずつしか飛ばせませんし、青の中はジャミングされていますから、直接は飛ばせません。なので、青から一番近い場所に飛んでから海路になります。」
「面倒だな。もっと簡単な方法ねェのかよ?置いて行かれちまうぞ」
そうジンが言うと、「他の方法は無くはないのですが」とリヒが口ごもる。実際、私達が使える手段は限られている。事実それ以外は論外と言っていいでしょう。緑の夢の道も、正規の入口が事務所の位置から見て青の方向とは間反対に位置していますから。私達に魔法は扱えませんし、カイ姉さんは空間を切れるけど、その先は安定しませんから。カイが言う。
「現実の街路だと入り組んでしまい時間がかかる。いっそ、夢の中を突っ切っていけないかな?」
「無理じゃろ。前の異変での変化も研究もまだ終わっておらんし、そも儂らじゃぁ通行許可も出んじゃろうて」
ハス爺が付け加える。新規異変が発生するなんて本当に久しぶりの事らしく、研究者連中がとっても楽しそうに夢へと入っていきました。研究者は未知と探求という二文字以外には目もくれないようです。そのせいで、安全が確保されるまで、という期間不明の立ち入り禁止が赤い夢全体に発令中なのでした。
でも、どのような手段にしろ、青に行くなら密入国しかありませんから
「考えるだけ無駄です。リヒ、ワープの準備をお願いします」
「わかりました。でも、全員は遅れませんからね!僕は戦えないし、青にもいい思い出が無いんです。しかも、この後事務所に事情聴取が来るって話ですから。3人までですよ?」
「わかってますよ。おじいちゃんと兄妹は残って。私と、カイ姉さん。後は・・・リヒで行きましょう」
人選理由は簡単です。青の周りにはバリアが張られています。そのバリアで青は鎖国をしているわけですね。そして、そのバリアは決められた人間以外を弾くものだと推測します。そこでカイ姉さんの出番です。カイ姉さんは大体のモノは切れますから、もちろん魔法も切れるんですよ。実体があるなしに関わらず、大抵のものは切れる。だからカイ姉さんは必須です。
「な!ん!で!僕なんですか!いい思い出が無いって言いましたよね?!僕事務員なんですけど!」
私が探したいのでもちろん行きます。私が行きたいので。姉さんの必要性も十分でしょう。なぜリヒなのか。ジンは医者で引っ張りだこですし、デリには保護者が必要です。ハス爺は多分長旅は好まないでしょうし。つまりは消去法ですね。
「私は密入国するときのバリアを切らないとだし、雨ちゃんは一番探したいだろうからね。それに、青までの道を知ってるのはリヒだけだから」
「わかりましたよ。前には出さないでくださいね・・・」
しぶしぶと了承を得て、私達は青へと向かいました。
リヒが呪文を唱える。呪文といえど、意味があるものとないもので分類されるらしいが、私にはそんな学はありません。リヒの呪文は聞き取れないので、おそらく意味のないものに分類されるのだと思います。
数秒して、リヒが呪文を唱え終えると、私とカイ姉さんの肩に手を置いてこういいました。
「二人とも、行きますよ!」
そうすると、視界が一瞬にして暗くなりすさまじい力が体にかかります。それは、意識が途切れてしまいそうになるほどの力で、私は意識を手放さないように集中します。
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ふと、瞳を開ければ視界が戻り、先ほどまでいた事務所とは似ても似つかない海岸―――埠頭でしょうか。いえ、港へとついていました。
「大丈夫ですか・・・?」
息を切らしたリヒがそう言った。カイ姉さんは大丈夫だと返し、私も同じように返しました。海の方を見て目を凝らせば、水平線に揺らいでいるものが見えます。あれがバリアでしょう。
「船を借りる必要がありますね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!こんなところで船を借りれるわけがないじゃないですか!」
ここは鎖国中の青と狭い海峡を挟んだだけの場所です。しかも、青は未だに閉鎖的で、近づく船も雷が落とされるだなんて噂があります。だから、船の心得の無い人間には船を貸してはくれないそうです。
「それなら船長ごと雇いましょう!」
「私の棺桶をボートみたいに使ってもいいけど?無理なら最悪泳いで行こうか」
私とカイ姉さんの提案はめちゃくちゃなものだった。もちろんリヒは静かな怒りを宿して言った。
「僕はちゃんとした船じゃないと認めませんよ・・・!そもそもですね、密行しようだなんて連中、まともな船仕事する人は乗せようとなんて思いませんよ・・・」
私もできれば60キロも泳いだり、ボートでこいだりとかはしたくない。最悪の場合であればそうするつもりではあります。私たちの会話はしばらくの間続いた。内容が内容なので、少し離れた路地裏で話し込んでいました。すると、その路地を作っている建物の中から怪しげな会話が聞こえるではありませんか。そちらの内容は、というと。そちらも同様に青への密行を計画しているご様子。これはこれは、いいことを聞いた。
「これは使えますね・・・」
「これは楽しめそうだね・・・」
「嫌な予感しかしないんですけど?」
リヒの訝しげな声に、私がしようとしていることを読まれたような気がした。仲間ですし、私は頭もよくありませんから、思考を読まれてしまってもしかたがありませんね。
「密行するであろうその船に密航しましょう。ちゃんとした船じゃないですけど、れっきとした船ですよ?これなら文句もないですね?」
「どうせ、ハイと言うまで続ける気でしょ?これ以上はめんどうなんで、それでいいですよ」
リヒはしぶしぶ、あきらめたように了承した。これで、計画は完了。この密行者の船に密航して、青のバリアを破り、ヴィレを追う。これで行きましょう。
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「し~ず~か~に~!行きましょうね!」
「そういうが雨ちゃんが一番うるさいからね?」
それから隠れ、日が暮れた頃。怪しげな発着場の建物の入り口の傍で、私たちは期を見計らっていました。建物の中にいるのはだいたい10人程度でしょうか。こんな少人数で近づいただけで雷が落ちるバリアに挑もうだなんて、無謀にもほどがあります。
「そういえば、カイさん。なんでレニ副所長のこと雨ちゃんって呼ぶんですか?」
「雨ちゃんがレイニーだから」
「僕、今初めて上司の名前を知った気がします」
「今は私の名前なんてどうでもいいでしょ!早くしないと!」
私がリヒのどうでもいい質問を一蹴したら、立てかけてあったパイプを倒してしまいました。やらかしました。これはばれていないことを祈りたいですが。
「誰だ!」
虚しくもばれてしまいましたね。100パーセント私が悪いですね。でも、問題ありません。彼らは犯罪者です。今は自分のことは棚に上げて、彼らを倒してしまいましょう。一応、私たちの事務所は公的機関の管轄ですから、越権行為には当たらないはず。
「行きますよ二人とも!」
「は~い」
「やっぱりこうなるんじゃないですか!派手なことしたくないんですよ!僕は!」
リヒが真っ先に突っ込み、「爆ぜろ!」と叫ぶ。すると左手から鋭い光を発し、密行未遂者の目をくらませる。初歩的な目くらましの魔法だ。本来は爆発するらしいが、リヒが未熟だからか光だけの効果になっている。次にカイ姉さんが文字通り切り込み、まともに閃光を食らった相手を死なない程度にみねうち。5人ほどが抵抗する間もなく倒れました。閃光を食らわなかった数人が船へと走り、甲板へと繋がるはしごを登り始めました。
「あと半分、船に乗り込んだよ!雨ちゃん!行けるね?」
「勿論!」
私はガントレットから蜘蛛のごとく糸を伸ばし、乗り込んでいる密航者より早く甲板へと昇る。甲板へ手をかけていた2人足蹴にして落とします。あと2人。彼らはしごを大きく揺らし、その反動で甲板へ上ってきました。まるで海賊のよう。その二人が曲剣を取り出し、左右から私を切りかかる。
「同時にきてたら、もう少しキツかったですね。初歩がなってませんね」
「急に現れて襲ってきあがって!この野郎!」
ガントレットで曲剣を受け止め、鳩尾を殴る。よろけ、力の緩んだ手から剣を奪い、もう一人へと投げる。私は投げると同時に強く踏み込んだ。相手は投的を弾くが、はじくために振り下ろしたので私の打撃を防ぐ手段はもうありません。
「なんなんだよテメェらはああああああ!」
そう叫ぶ密航者の顔面を殴り飛ばし、彼は気絶しました。本当に青へ密行するには戦力不足だ。無謀にもほどがありましたね。3人に1分程度で片づけられる戦力でよく夢を跨ごうとしたものです。
「ふう。にしても、この船、結構大きいですね。」
彼らの身元はあとで確認するとして。いったんこの船を調べてみましょうか。
「お~い!雨ちゃ~ん!あたしたちで使うにはそれは大きすぎるよ~!」
「ですから!それに付いてるであろうボートをもらっていきましょう!そこにボートがあるでしょうから降ろしてください!」
それを聞いて私は甲板からつり下がっているボートに倒した2人をのっけて降ろした。私は甲板から飛び降り、ボートに着地する。その衝撃でボートが揺れ、私は海に落ちてしまった。すぐに地上に上がった。カイ姉さんが大笑いしている。
「笑わないでください・・・」
私はびしゃびしゃになった髪を絞りながら、ふてくされたように言った。カイ姉はごめんねぇと私のガントレットを引き抜き、ひっくり返して中の海水を抜いた。服も絞った。
「あの、レニ。もう少しデリカシーとかないんですか?」
振り返ると上着を頭からかぶり、こちらを見ないようにしたリヒがいた。そういえば人前ではあまり肌を見せない方がよかったのでした。ヴィレのことで頭がいっぱいで、常識すら忘れているなんて想定外ですね。絞った私の服を、カイ姉さんがバカみたいに振り回して乾かしました。私はその服を急いで着てリヒに言いました。
「もういいですよ」
「はい。もっと人間らしいふるまいをしてくださいよね・・・?心臓に悪いですから」
人間らしいふるまいですか。昔と比べれば、情緒もありますし十分人間らしいとは思いますが。しょうがないですね。それはそれとして。おろしたボートはモーターボートのようです。この密航者たちの戦力は下の下のくせして、船はすごくいいものを持ってるみたいですね。私たちはボートに乗り込みエンジンを回します。
「行きましょう。早くしないと遅れてしまいますから」
(※)
海上。襲撃した港から10分程度。私たちが青の方向へ進むたびに、空が暗くなり雷が鳴る。幸いなことに雨も風もなかったのでずいぶんと楽な航海になりそうです。
そのまま進み続けてまた10分。雲の発生源が見えてくる。あれが青と外を分けるバリアだ。あの雲が防護壁として、密航者から領域侵犯を阻んでいる。
「魔力の高まりを感じます。そろそろバリアに補足されますよ!」
リヒがそう言ってすぐ。正面の雲壁から雷が飛んでくる。カイ姉さんが刀を抜き、その刃で雷を受け止め海へとはじく。船が揺れ、海が叫ぶ。
「おおっと、しびれるね~自然の雷よりも強力みたいだ」
「しれっと凄いことしてるますよこの人!ここって物理が効かない夢の中じゃないんですよ!?」
「理想は現実になるって言いますから!カイ姉さんはロマンチストですからね!」
「説明になってませんよぉ~!」
雷を退けたカイ姉さんは居合のような構えをとる。どうやらカイ姉さんの射程範囲に結界が入ったらしい。
「おいで。私の――――」
カイは空を掴み、引き寄せて無を取得した。空が、雲が、屈折したかのように曲がる。そして、例えるなら綻んだ布を断つようにするりと刀で風を切る。
「空が・・・切れてるんですか!?これって?!」
「わぁ――――綺麗!」
ただ一筋線が空に浮かび上がる。風船に圧縮された空気がはじけるように暴風が起こり船が揺れる。振り下ろした一閃が、元から何もなかったかのように削り取られた。
それと同時に、別の位置の空が裂ける。その裂け目から、青い光を纏う二人が陸へと飛んで行った。あれは、きっとヴィレだ。
「あれ、ヴィレだ」
「ん?嘘だろう、あの風の中で何か見えたのかい?」
行かないと。置いていかないで。
「行きましょう。陸まで少しですから。漕ぐ必要もありません、糸を飛ばして船を引きます」
私は陸の方へと手を伸ばし、糸を飛ばす。良い所に木があったのでそれに糸をつけて引っ張る。力を籠めすぎた用です。船が勢いよく飛び、私たちも陸地へ飛んで行く。
「ああもう!やっぱりこうなるんじゃないですか!はちゃめちゃだ!だから嫌だったんですよ!」
リヒが防御呪文を唱え、私達はバリアの中に入る。まるで砲弾のようなそれが、ビーチに落ちて砂埃を起こす。
「雨ちゃん、早くしないとね」
「はい。バレましたね。リヒの魔法で探知に引っ掛かりました」
「僕のせいみたいにするのやめてもらえますか・・・?」
「いや~面倒だね!全部切っていいかい?」
「だめ~。私達はヴィレを持って帰るためにきてるんですから」
「レ二さんかそれ誘拐って言うんですよ」
さて、どうでもいい雑談はおいておいて、彼らをかたずけないと。私達を止めれれるのは、ヴィレだけですからね。




