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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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~ 異的大陸 亜米利加・合衆国 ➀ ~

  ~ 異的大陸 亜米利加・合衆国 ➀ ~



 僕は今、初めて一人で外国の地にいる。

 一足早く、留学のため現地の下見に来たのである。


 "思った以上に……広いなぁ……"

 デカいリュックを背負いスタンフォード大学のキャンパスにやってきた僕は……あっけなく迷子になっていた。

 "まぁ……どうにかなるだろう"

 僕は心の中で瘦せ我慢するように呟くと大きめのウエストポーチの中から折り畳んでいた案内書を取り出す。


 合格してから暫くしてスタンフォード大学から家に送られてきた小包の中に入っていた、いわゆる"入学の手引書"のような物である。

 合格した新入生にはスタンフォード大学から小包が届くのである。

 中身は、帽子とかトレーナーとかコップとかが入っているのであるが、その全てに大学のロゴが入っているので記念品のような物であろう……と僕は思っていた。


 正直、恥ずかしくて大学のロゴの入った帽子とかトレーナーとかを着て街中を歩く気にはなれない……

 日本では"東京大学"とロゴの入った入った帽子とかトレーナーとかを着て街中を歩いている奴などいないからである。


 ……などと思っていたのだが、ちらほらと大学の送られてきた小包の中に入っていたのと同じロゴの入った帽子とかトレーナーとかを着てキャンパスを歩いている人を見かける。



 僕は、素直に手引書にかかれている通りに留学生インフォメーションセンターに行って話を聞くことにする。

 40歳ぐらいの白人の恰幅の良い中年の小母さんが詳しく説明してくれる。

 話を聞いていると僕と同じぐらいの多種多様な人種の子たちが同じように受付に訪ねてくるのが見える。

 "流石はアメリカだな……"

 などと今更ながら感心する僕であった。

 

 入寮時にIDカードが発行されるので手続きを忘れないように念を押された。

 毎年のように手続きを忘れたりIDカードを受け取らずに行ってしまう留学生が結構いるそうである。


 大学の学生寮の一つを案内してくれるということなので案内してもらう。

 "思った以上に凄いな……"

 まるで一つの街の住宅街ように幾つもの学生寮が街路樹が立ち並んだ道路を挟んで立ち並んでいる。

 その中の一つに入れてもらい学生寮内を案内してもらった。


 家内は広く綺麗で生活に必要な物が全て揃っており、僕が思っていた学生寮とは全く違いとても良い環境である。

 学生寮と言うより大きな家という感じであった。

 スタンフォード大学の授業は6月初めに終わり、9月半ばまで夏休みだそうで卒業が決まった学生の中には既に寮を離れた人もいるとの事。

 案内してくれた小母さん曰く"日本人もいるわよ"と言っていた。

 僕にも"友達が出来るのかな"と自分に問いかけるが答えが返ってくるるわけもない。


 現地で生活するのに気にしていた言葉の方は、問題なさそうである。

 実際に現地の人と直接、ネイティブな英語で会話をする事など無かったからである。

 母に感謝である……。

 案内してくれた小母さんも初めは日系の米国人だと思っていたようで日本生まれの日本育ちだと言ったら少し驚いていた。

 「本当に日本人なの……」

 「今までの日本人とは随分と違うわね」

 笑いながら欧米人特有のジェスチャーが何となく僕にとって新鮮に感じられた。 


 スタンフォード大学は、家庭年収が12万5000ドル未満の学生の授業料は無償、さらに家庭年収が6万5000ドル未満の学生は寮費などの他に下宿代も無料なのだ。


 米国の州立大学は州の税金で経営されているため地元民には学費の免除などの措置があるが州外や留学生にはこのような措置はない所が殆どなのである。

 この時はまだ絵里香の収入の事は考慮に入っていなかったのであるのたが。


 スタンフォード大学の授業料は年間約4万ドルする、そこに学生は寮費などの下宿代もかかってくるのだから……免除が受けられないと結構な出費になるのである。

 因みに、ここだけの話であるが、後に僕は"世帯分離"という方法でこの窮地を脱する事になるのである。


 そして、特に気していた治安の問題であるのだが大学のある周辺の治安は良いとの事であった。

 とは言え、米国の治安が良いと日本の治安が良いは随分とその度合いが違っているのではあるのだが……


 それよりも僕にとって深刻な問題になったのは食い物である。

 米国の食い物は予想通りであった。


 経費を安くするのと食事事情を知るためにeconomy hotel(安全面からランクは高め)での宿泊、要するに日本で言うちょっといいビジネスホテルの素泊まりである。

 朝昼晩と三食を現地の店で外食して取る事となるのだが……


 米国人の寿命を縮め病気の元凶とすら言われている、ハンバーガー・ピザ・コーラと言う"三大悪魔の食べ物"が町中に溢れている。

 流石はジャンクフードの本家だけの事はあって現地の庶民的なレストランのメニューなども量はなんの問題ないが味付けは濃く脂質・糖質・塩分はマックス値であるというのがわかる。


 盛り付けもワン・プレートにドバッドバッとぶち込んだ代物である。

 店員はファンキーでフレンドリーで良く言えば家庭的だが悪く言えば礼儀知らずである。


 日本に観光に来た米国人が……

 "日本では小さな食堂でも米国の高級レストラン並みのサービスが受けられ、しかもチップが不要だ"と言って感心するのが良く分かる。

 


 

 試しに僕は3日間、朝昼晩と間食も含め地元の異なった庶民的なレストランで9回食事をしたのだが、パン・肉・卵・チーズ・芋が基本でその殆どが焼くか揚げただけであり味付けも塩・胡椒・ガーリック・ケチャップ・マスタード・ソースなどで極めて単調である。


 つくづく日本の出汁と醤油と味醂と酒の偉大さを思い知った僕であった。

 そして、僕の大好きな魚の煮付けや野菜の煮物などがない。

 それなりの日本料理店もあるが価格が日本の3倍から4倍と馬鹿高いのである。

 因みに、ラーメン屋もある……


 スーパーマーケットがあるので入ってみたら、やや割高だが米とレトルトのライスや日本の食材もあったのでこれで自炊する事になる事になりそうである。

 まぁ……自炊に関しては、経験と実績があるのでこれについては全く不安はない。


 3日間、スタンフォード大学周辺をくまなく散策した後で僕はこの街を後にした。

 スタンフォード大学は学内だけでなく立地も凄く良い環境にあり周辺も緑豊かで予想以上に良い所であったと言うのが僕の率直な意見である。


 せっかく、カリフォルニア州にまで来たのだから、帰り道に空港のあるサンフランシスコ観光でもしようと思っている。


 スタンフォード大学からサンフランシスコまでは電車があり一時間ちょっとの距離である。

 日本とは違い電車の時間はかなりいい加減なので計画通りにはならない事は考慮して時間にはかなりの余裕を持って計画を立てておいたのであるが……

 と言うか、日本のように正確に時間通り電車が来る国の方が珍しいのである。


 母の実家に里帰りしたついでにヨーロッパ各国へ旅行に行ったこ事が何度かあるが10分や20分の誤差は常識で某国(イタ〇ア)の地方の電車やバスの時刻表に至っては1時間に4本とかで時間すら書かれていない。


 が……流石は異的大陸の亜米利加合衆国だけの事はあり、この国の常識は僕の予想を遥かに超えてくるのである。



  ~ 異的大陸 亜米利加・合衆国 ➀ ~


  終わり


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