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 僕は……  作者: イナカのネズミ
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~ 第5章 思わぬ出会い…… 突然の訪問者、そして別れ ① ~

~ 第5章 思わぬ出会い…… 突然の訪問者、そして別れ ① ~



 僕が黙々と洗い物をしていると絵里香がリビングに戻ってくる。


 「ソフィーの様子はどうだ?」

 僕は洗い物をしながら絵里香に尋ねる。


 「幸せそうな顔して爆睡してるわよ」

 絵里香は呆れたかのように言うとソファーに座る。


 「そうか……珈琲でも飲むか?」

 洗い物を終えた僕が絵里香に問いかけると小さく頷く。


 僕がドリップコーヒーをカップにセットし湯を注いでいると絵里香が心配そうに話しかけてくる。

 「ソフィー、明日帰るんでしょう」

 「迷わないかな……」

 じつは僕も絵里香と同じことを心配していたのである。

 ここからだと電車を3回乗り換えなければならず土地勘の全くない外国人のソフィーには難しいのではないかと思っていたからである


 「……」

 僕は何も言わずに黙っている。


 「空港まで送って行った方がいいんじゃないかしら」

 絵里香はそう言うとテーブルの上のテレビの電源を入れる。

 我が家のテレビはインターネットのブラウジング機能があるので絵里香はネットで空港のまでの経路を検索し始める。


 「確か……午後1時48分発だったわよね」

 「余裕を持って空港に1時間ほど前に着くようにするね」

 絵里香はそう言うと時間を入力して経路を検索し始める。 

 テレビの画面に幾つかの経路が表示される。

 「ここからだと11時前に出た方がいいわね」

 絵里香が検索結果を僕に伝える。

 僕は珈琲カップを手に絵里香の隣に座ってテレビの画面を見る。


 「これは……グー〇ル〇ップか……」

 僕は少し嫌そうに言う……

 何故なら、こいつにはたまに騙されるからである。

 以前にグー〇ル〇ップのナビを頼りに母の運転する車で出かけた時にとんでもない山奥に誘導された経験が何度かあるからだ。


 僕は信用のある某検索サイトにアクセスする。

 IDとパスワードを入力して検索を開始する。

 「2番目のやつ、これがいいな……」

 僕がそう言うと絵里香も頷く。

 「問題は誰が付いて行くのかだ……」

 僕がそう言うと絵里香が僕の方を見る。


 「2人で行こう……」

 絵里香はそう言うと僕の方を見てニッコリと笑う。


 「まぁ……別にいいが……」

 僕はそう言うとテーブルの上に置かれた珈琲カップを手に取ると珈琲を少し口にする。

 「絵里香、部活の方は大丈夫なのか?」

 「大会が近いとか言ってなかったか?」

 僕が少し心配そうに問いかける。


 「土日は出来るだけ休む事にしているのよ」

 絵里香の言葉に僕は納得する。


 「そうか、それじゃ2人で行くか」

 僕がそう言うと絵里香も珈琲を飲み始める。

 30分ほど絵里香と世間話をした後でお互い眠りに就くのであった。



 目覚まし時計の音で目を覚まし時計の針を見ると7時過ぎを指していた。

 「うっう~っ」

僕はベッドの上で大きく手足を伸ばす。

 「うっ!!!」

 「うぐぐぐくっ!!!」

右足が攣ってしまい少しの間ベッドの上でのたうつ破目になる。

攣った右足の痛みが無くなるとベットから出てリビングへと向かう。


 「あれっ……」

僕は思わず驚きの声を上げてしまう。

 「えっえっ絵里香……」

休みの日、こんな時間に起きてくるような奴ではないからである。

 "さっき、足が攣ったのはコイツのせいだな……"

僕は足が攣ったのを絵里香の早起きのせいするかのように心の中で呟く。


 「兄さん……今、とっても失礼な事を考えてなかった」

 僕の顔を見で絵里香が不機嫌そうに言う。


 「あっ その……」

 絵里香の鋭い勘に思わず焦ってしまい口籠ってしまう。


 「まぁ……いいわ……」

 「それよりも何か作ろうか」

 絵里香が朝食を作るような事を言う。


 「ひっ! 」

 僕は思わず恐怖に怯える声を上げてしまう。


 「何よ……私だってパン焼いてベーコンと目玉焼……」

 「それと……珈琲ぐらい入れられるわよ」

 怯えている僕に絵里香は不機嫌そうに言うのだが……

 絵里香の口調と態度からな心なしか何処となく危なさが漂ってくるような気がする。

 「それはそうとして、兄さん……」

 「和室で寝てるソフィー起こしてきてくれない」

 僕は絵里香に頼まれてソフィーを起こしに和室の前まで来ると仕切り襖の前でソフィーに声を掛けるのだが……当然、起きるはずがない。

 "流石に忍び込むわけにもいかないし……"


 僕が部屋の前で悩んでいると絵里香がやってくる。

 状況を察したのか、呆れたように小さな溜息を吐くと襖を開けて部屋の中へ入って行く。

 部屋の中から絵里香がソフィーに何度も声を掛けているのが聞こえてくる。

 暫くしてから絵里香のソフィーを起こす声が聞えなくなる。

「oh!!!」

 静まり返った部屋の中からソフィーの悲鳴が聞こえた後に苦しそうな声が聞こえてくる

 腰を屈めお尻を抑えたソフィーが呻きながら這うようにして和室から出て来る


 "まさか……絵里香の奴……"

 "あれをやったのか……"

 その姿を見て僕は、間違いなく絵里香の奴が寝ているソフィーのお尻の穴に一発ブチ込んだのだと確信する。

 "うわ~痛そう"

 などと思っていると何だか焦げ臭い匂いと煙がリビングから流れてくる。

 "まずいっ! 火事だっ!! "

 僕はお尻を抑えて蹲っているソフィーを後目に焦ってリビングへ駆け込むとトースターから煙が上がっている。

 "なんだ……パンが焦げているだけか"

 トースターから黒焦げのパンを取り出し流し台のシンクに放り込みリビングの窓を全開にして室内に籠った換気していると絵里香がすまなさそうなそうな顔をしてリビングの入り口に立っているのが見える。


 「ごめんなさい……」

 絵里香は俯いたまま小さな声で僕に謝る。


 「気にする事はないぞ」

 「サッサとソフィーを起こさなかった俺も悪い」

 僕がそう言うと絵里香はニッコリと笑う、その傍でソフィーがボサボサの髪の毛のままボォ~っと立っている。


 "なんか……焦げ臭いんだけど……"

 そう言うとリビングの中をキョロキョロと見回す。        

 "寒っ! ゲッ! 窓開け放しじゃないのよ"

 マイペースのソフィーの様子に僕も絵里香も失笑する。

 "何よ……"

 気を悪くしたソフィーが少し不機嫌になっていると父が血相を変えてリビングに飛び込んでくる。


 「火事かっ! 」

 薄汚れ灰色になった作務衣に手ぬぐいを禿げ頭に巻き付け手には小槌を持っている。

 「火元は何処だっ!!」

 焦って部屋の中を探しまくっている。


 「オヤジ……パンが焦げただけだ……」

 「朝飯出来たら呼ぼうか」

 僕が父に呆れ顔で言う。


 「……パンが焦げた……そうか……」

 「飯が出来たら置いといてくれ……後で食う……」

 そう言うと恥ずかしそうにそそくさとリビングを出て行った。


 そんな、父の姿を見て3人揃って笑いを堪えなくなり大笑いする。

 簡単な朝食を食べ終えると2人で空港まで送る事を伝えるとソフィーはホッとしたような表情になり絵里香にキスをする……

 そして、僕にもキスをしようとすると再びソフィーのお尻に絵里香の指がめり込んだ。

 "oh! oh!oh!"

 呻き声を上げながら、お尻を抑えてリビングの中をクルクルと3回ほど回った後で絵里香に耳元で小声で何か言っているのが微かに聞こえてくる。

 "これ……女の子には絶対にダメです"

 "少し的を外れると大変な事になります"

 真顔で絵里香に"指浣腸"の危険性を訴えているソフィー……

 そんなソフィーに絵里香は困ったように顔を赤くしているのであった。


 ソフィーが荷物をまとめ終わり、家を出る時間になる。

 玄関で靴を履いて家を出ようとすると父が小さな小箱を持ってこちらに来る。

 そして、ソフィーに小箱を手渡す……

 その小箱を開けたソフィーの顔が歓喜の表情にそれから涙を流しながら父に抱き着き何度もお礼を言っている。


 小箱の中身は小柄ナイフであった……

 銃刀法違反にならないように短めに作られており土産物として持ち帰れるものであるが、れっきとした玉鋼を鍛え焼き入れをしているので日本刀のような波紋が入っている

 有名な刀匠の父が打った物なのでそれなりの価値があると思うが、そんな野暮な事を言うつもりはない。


 家を出て電車に乗り、三回乗り換えをして空港に到着する。

 空港に着くまでソフィーは恐ろしいほど黙ったままだった。

 飛行機の搭乗手続きを済まし、暫くすると搭乗が始まる搭乗口のすぐ近くに来た時にソフィーが急に話しかけてくる。


 "Danke ... es war eine tolle Erinnerung"

 「ありがとう……最高の思い出になったわ」

 "Wir sehen uns wieder... lass uns irgendwo treffen"

 「また……何処かで必ず会いましょう」

 「サ・ヨ・ウ・ナ・ラ……」

 ソフィーはそう言うと急に僕に抱き着きキスをしてお尻を抑えて慌てて走り去る


 僕は突然の事に呆然としていると絵里香が不機嫌そうに話しかけてくる

 「兄さん……大丈夫……ボォ~っとして」

 「本でも、当に迷惑な(おんな)だったわね……」

 僕の耳には絵里香がソフィーの悪口を言っているようには聞こえなかった


 その後、ソフィーの寝ていた布団の枕の下に封筒が置かれている事に気付く、封筒の中には現金で3万円とネットのメルアドが記されたメモが入っていた。

 無視するのも気が引けるので無事に帰れたかどうかの安否確認を兼ねてメールを送信すると直ぐに返事が返ってきた。


 無事に帰り着いたようである。

 その後、何度かメールのやり取りがあったが徐々に回数が減っていき、今では完全に縁が切れたようになっている。

 因みに、ソフィーのメルアドはそのままの状態で僕の携帯に残っている


 そんなある日、僕の携帯に友達の北村から1通のメールが届く。

 そのメールを読んだ僕は余りの衝撃に全身が凍り付く。


 "斎藤が事故って死んだ"


 僅か1行だけのメール……

 旧友との突然のそして永遠の別れであった……



~ 第5章 思わぬ出会い…… 突然の訪問者、そして別れ ① ~


終わり


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