表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 僕は……  作者: イナカのネズミ
14/200

第4章 ~ 思わぬ出会い…… 突然の訪問者 ④ ~

~ 思わぬ出会い…… 突然の訪問者 ④ ~



 古民家カフェから帰った後で、僕はいつもの通り母のコレクションの日本刀の手入れをしている。

 今日は15振りを手入れしているのだが……今日はいつもと少し違っていた。


 「……」

 ソフィーが目の前に座ってジッとこちらを見ている視線を感じる。

 "やっぱり……こうなるよな……"

 僕は心の中で呟くとソフィー話しかける


 「"Willst du es nehmen?" 持ってみるか」

 僕がソフィーに尋ねると何度も大きく頷く、僕は手にしていた刀(刃渡り70㎝)をソフィーに手渡す。


 「"Erstaunlich schwer……" 意外と、重いわね……」

 「"wunderschönen……" 美しい……」

 ソフィーは初めて直接手にした刀を目にして感無量といった表情である。

 そんな、ソフィーに僕は気掛かりな事を話す。


 「言っておくが……」

 「日本の普通の家には刀なんかはないからな」

 「僕の家は父が"刀匠"だからあるんだぞ」

 僕がそう言うとソフィーは"そうなの"と言うような表情をする。


 「私って幸運"Glück"だたのかな」

 ソフィーはニッコリと笑って小さな声で言うと僕の方を見る。

 "Ich möchte den Arbeitsplatz von Kanetsugus Vater sehen..."

 「カネツグのお父さんの仕事場が見たいのだけど……」

 "Darf ich……"

 「ダメかな……」

 ソフィーは少し遠慮がちに僕に頼んでくる。


 「オヤジに、一度聞いてみようか」

 僕がそう言うとソフィーは満面の笑みを浮かべ目を輝かせた。


 この事を親父に相談すると快諾してくれる。

 趣味趣向には国境も性別も年齢も関係ないと感じる僕であった。


 仕事場に入ったソフィーは既に異世界にいるような錯覚に囚われている。

 感激のあまりに声も出ないようだ。

 頬被りに白装束の父の姿はソフィーの目にはさぞや神秘的に映った事であろう。


 父の説明を僕はドイツ語に通訳しソフィーに伝える。

 それを聞くソフィーの目は本当に輝いている、そんな僕にもう一人の僕がいつもの事を問いかけてくる……

 "お前は、何がしたい……"と、僕には答えることは出来なかった。


 気を良くした父はソフィーに日本刀を用いて実際に物を斬る据物斬りを体験してもらうと言い始めるのであった。

 当然、僕は反対した。

 理由は真剣を用いて実際に物を斬る据物斬りは危険だからである。

 しかし、その気になってしまったソフィーを止めることは出来なかった……


 僕は"どうせやるなら"と思い絵里香に頼んで服を貸してもらいソフィーに着てもらう事にする。

 当然、着付けは絵里香に任せた。

 始めにソフィーが僕に服を着せて欲しいと頼んできた時、僕を見る絵里香の目に殺意を感じて恐ろしかった。


 羽織袴に据物斬り用の真剣を手にしたソフィーは僕に自分の携帯電話を手渡す。

 あれこれとポーズをとって写真と動画を撮りまくっていると、据物の用意が出来た父が呼びに来る。


 始めに剣術の心得のある父が手本を示す、気合の入った掛け声と共に一撃でバッサリと真っ二つに斬り捨てる。

 それを見てソフィーが歓喜の声を上げる。


 真剣を構えたソフィーに父が手を取り何かと世話を焼いている。

 暫くすると父がソフィーに据物斬りを勧めているのが分かる。

 ソフィーはゆっくりと刀を抜くと上段に構え一気に斬り下ろすと据物は見事に真っ二つに斬れるのであった。


 刀を鞘に納めると感激したソフィーは父に抱き着くとキスを連発する。

 僕はソフィーの携帯電話の録画を止めようと思ったのだが止めなかった。

 "母が見たらなんて思うだろう……"

 僕は携帯電話の画面の中の鼻の下を長くした父とソフィーを見て心の中で呟く。


 「お母さんが知ったら……」

 「お父さんどうなるのかしら……」

 いつの間にか後ろにいた絵里香が小さな声が呟くのが耳に入る。


 僕はゆっくりと後ろを振り向くと絵里香に向かって首を横に振る。

 すると、絵里香は呆れたように小さく頷くのであった。

 かくして、この事は"和泉家の重要機密"として母のハンナには未来永劫、秘密とする事となったのである。



 その後、ソフィーは緊張もあり相当に汗を搔いたらしく絵里香と風呂に入っている。

 風呂から出て来るのは頃には夕方の5時を過ぎるだろう。


 僕は、食事の用意を始める。

 今日、出かけた時に町の経営する直販店で地元ブラントの牛肉と白菜に地鶏の卵などの食材をかなり安くゲットできた。

 これで、すき焼きをするつもりである。

 炊飯器で五合の米を炊き始め、みそ汁を作り始める。

 片手鍋に水を入れだしの素を入れ賽の目切りにした豆腐と細切りにした油揚げを投入し沸騰したら火を止めてこれまた地元産の手作り味噌を溶く、我が家では刻みネギはお好みで最後に自分で入れる。


 何故なら、父と僕は刻みネギを大量に入れるのだが母のハンナと絵里香は刻みネギは嫌いだからである。


 テーブルの上にカセットコンロを出して父が骨董市で手に入れてきた大きなすき焼きの鉄鍋をセットする。

 "重っ"

心の中で呟きながらカセットコンロの上にのせる、いつもながら重みでコンロが潰れないかと心配になる。


 すき焼きの具材を材料を切って大きめの器に盛り付けラップをかけるとテーブルの上に置き四人分の食器を並べて準備完了である。

 "父は日本酒一合、母は缶ビール(500ml)を3本っと"

 "これで準備完了……"

 僕は心の中で呟くとソファーに座ってテレビのスイッチを入れる。

 暫く、ぼぉ~っとテレビを見ているとトレーナー姿のソフィーが風呂から上がってくる。


 "Kanetsugu..."

 「カネツグ……」

 "Ist das das heutige Abendessen?"

 「これ、今日のディナーなの」

 珍しそうにテーブルの上に置かれたすき焼きを見ている。


 「そうだよ……今日は、すき焼きにする」

 僕がそう言うとソフィーは"おお"と言う顔をする。

 どうやら……すき焼きは知っているようである。


 僕はカセットコンロの火をつけて調理をし始める。

 その横でソフィーが興味津々の眼差しで見ているのが分かる。

 油を鍋に施てい肉を焼き、割り下を入れ、豆腐にシイタケに白菜……

 そして、蓋をする。


 白菜が萎れて鍋の蓋が落ちてくる。

 "そろそろだな……"

 僕が心の中で呟くと父と絵里香かほぼ同時にリビングに入ってくる。

 "いつもながら、鼻の利く父と妹だな……"

 僕は心の中で鬱陶しそうに呟いていると、何事も無かったように父と絵里香は椅子に座り小皿に卵を割る。


 僕はコンロの火を弱くしてご飯と味噌汁をよそう、そんな様子をソフィーは珍しそうに見ている。


 「それではいただきますか」

 僕がそう言うと父と絵里香が小皿に卵を割り掻き混ぜ食べ始める。

 ソフィーも見よう見まねで卵を割りスプーンで掻き混ぜ、鍋の肉をフォークで取り口に運ぶ。

 「Ist sehr lecker! 旨いっ!」

 感動したかのように言うと食べ始める。

 ソフィーに気に入ってもらえたようで一安心する僕であったのだが……

 テーブルの上を見て僕の顔から血の気が引いて行く。

 

 "しまった!!!"

 "いつもの癖でビールを出してしまった"

 僕は母がいる時と同じようにビールを出してしまったのである。

 「ソフィーっ!……」

 ……と慌てて言った瞬間、缶ビールの開く音がする。

 僕がソフィーを止めようとしたが遅かった。

 ゴクゴクと喉を鳴らしながらソフィーがビールを胃袋に流し込む。


 "ああっ!遅かった……"

 とんでもない失態に僕が呆然としていると絵里香の視線が突き刺さる。

 "ごめん……いつもの癖でつい……"

 僕は心の中で呟くと絵里香は諦めたようにため息を吐くのであった。


 缶ビール3本分、合計1.5リットルを飲み干したソフィーは上機嫌になりそのままソファーの上で寝てしまうのであった。

 そして、いつの間にか父は姿を眩ませているのてあった……


 「ホントに、お母さんそっくりね……」

 絵里香がソファーの上で大股おっ広ろげてだらしない格好で爆睡しているソフィーほ見て呆れたように呟く。


 「……」

 僕も無言で頷くのであった。

 昨日と同じようにソフィーを後ろから抱え上げると今度は服が捲れ上がらないように細心の注意を払い絵里香におんぶしてもらう

 そして、和室へと運ばれていくのであった。


 後片付けをしていると、急にもう一人の僕が話しかけてくる。

 "お前は、何をしている……"

 "何がしたいのだ……"

 答えがあるわけでもない。

 僕は何も聞こえないふりをして、ただ黙々と後片付けをするのであった。

 


 ~ 思わぬ出会い…… 突然の訪問者 ④ ~


 終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ