告白した記憶がある
「本当に信じていいんだな」
「多分大丈夫だと思います」
多分じゃ困る。
現在、俺と小悪魔は学校の外階段に立っていた。
理由?もちろん元の世界に帰るためだ。
もっと大沢を追い詰めてやりたかったが、この世界で俺達の存在意義がなくなっているらしく段々と体が薄くなってきたのだ。
「先輩の体、スケスケですよ」
「冗談はやめて早く帰るぞ」
やはり過去を変えることは難しいのか、大沢を捕まえたとたん元々の世界があるべき姿に自然と戻りつつあった。
時間軸が元に戻るということは未来を変える恐れのある俺たちは『異物』と認識されてしまったのだろう。
「わたしはスケスケの下着を履いてます」
「誰も事実を述べろとも言ってない!」
いや、見てない。決して見てないからな。体が透けてないか確認しようとしただけだ。
「!?」
俺の心を見透かしたように小悪魔と目が合ってしまった。
また揶揄われると思っていたが―――
ドン!!
コイツいきなり階段から突き落としてきやがった。
押した張本人も俺の腕に捕まり目を閉じてなにかに祈ってるようだ。
………………
………………
………………
ドスン!
「ぐぇ!」
「きゃ!」
もちろん階段から俺たちは落ちた。
さいわいなのは前もって落ちるとわかっていたので、以前のように頭を打つようなことはなかった。
「本当にこれで戻れたのか?」
「わかりません。とにかく皆さんの元に行ってみましょう」
スマホの時間は元の日付と時刻に戻っている。
あとはみんなに確認をとるだけだ。
それぞれにスマホで連絡を入れてマンションで待機する。
その間は小悪魔とふたりっきりだ。
「やっぱりわたし……帰りますね。最後に先輩と冒険できていい思い出ができました」
「なに言ってる?俺に関する未来が見えるんじゃなかったか?」
「関連する物理的なモノがないとダメみたいです」
いつもの元気印はなりを潜め、シュンと分かり易いくらい覇気がない。
「能力に頼りきってるから大事なことが見えなくなるんだ。俺もお前もな」
完全記憶能力はたしかにすごい力だ。
だが、あくまでも過ぎ去った過去しか見ることができない。
元親友の宮本や大沢のように人は過ちを犯す生き物。
過去に囚われすぎては明るい未来はやってこない。
「小悪魔……あかりは将来どうなりたいんだ?」
「わたしは……やっぱり先輩とずっと、ずっと一緒にいたいです。もっともっとたくさんお話がしたいです。大好きな先輩と……」
「じゃあそうしよう」
「え?」
「俺はお前が好きだ。どんな苦しい時も常に側にいてくれたお前が大好きだ。俺と付き合って欲しい」
「……本当にいいんですか?千花先輩のことは…」
「それなら問題ないわ」
振り返るとそこには声の主である千花の姿が。どうやらみんなも到着していたようだ。
そして千花は笑顔で答える。
「今回いろいろあってわかったんだ。メモリーが記憶喪失になった時、すでに結果は決まっていたんだよ」
「でもそれは千花先輩なりの……」
「うん。わたしは陰で見守ることを選んだ。あかりちゃんはみんなを敵にまわしてでもメモリーを側で守ろうとした。たぶんわたしにとってメモリーは弟みたいな存在なのかもしれない。それにメモリーとは何年たっても幼馴染だしね」
「千花……」
あの甘えモードは妹なのではと突っ切みたい気持ちもするが、こんな大事な場面で言えるはずもない。
ただひとつ確かなことは千花は俺にとって大事な幼馴染であり、家族の一員だ。
そしてナツ姉や白鳥さんはかけがえのない大切な仲間。
「わかりました。こんな不束者ですがメモリー先輩、よろしくお願いします。あ、ベッドの下に隠してあるエッチな本は捨てちゃいますからね」
「なっ!?」
なんてやっかいな能力だ。
やっぱりこの小悪魔は……ウザイ。
おしまい。
今回でこのお話は終わりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
このお話には思い入れがあり、たくさん勉強させてもらいました。
当初の構想と途中から外れてしまい実力不足を痛感しました。
気が向いたら改めて本来のストーリーをアナザーストーリー的に投稿するかもしれません。
とにかく今までありがとうございました!
気分転換に新作を書いたのでそちらもよろしくお願いします!
新作『俺のダイジェスト動画が流れるようになったんだが!?』




