大沢がいた記憶がない
「クリスマス会でも生き延びるとは運のいいやつだ」
「やはりあれもお前の仕業だったのか」
「当たり前だ。小松さんを手に入れる為ならなんでもしてやる」
すべての元凶である男を前にしても心は穏やかだ。
まだ感情は戻っていないのだろうか?
「なんでもって言ったな?例えば人を煽って階段から突き落とさせたりもしたのか?」
「「えっ!?」」
千花と小悪魔が同時に声を上げる。
「ちょっとメモリー、あれは浩一が仕組んだことだって本人も……」
「入学した……いや入学試験の時からすべては仕組まれていたんだよ」
そう……すべてはブタが……大沢が仕組んだこと。
完全記憶能力で記憶を何度見返しても入学試験で大沢の姿はない。
これだけの巨体で身を隠すのは不可能だ。
たまたま出会わなかったのか?
……違う。
入学試験を受けたのも、少年院に入っていたのも最初から違う人間だったのだ。
「どうやら気付いたようだな」
「ああ、見事に騙されたよ。この現代社会でまさか影武者を使う奴がいるなんて思わないからね」
「影武者ですか?戦国時代によく出てくる身代り的な」
こんな状況だというのに嬉しそうな顔をむけてくる小悪魔。
戦国マニアなのかもしれないけどさすがに不謹慎だぞ。
「考えてみれば簡単なことだ。こいつには僕らの学校へ入学できるような学力なんて最初からなかったんだ」
教室で授業を受けなかったのもそのため。
替え玉受験をしてまで進学校に入学したものの授業についていけるわけがない。
そこで特別クラス『第3学習室』の出番ってわけだ。
いじめられて特別クラスを新設した?
……ふざけるな。
いじめという社会問題を利用してうまく学校を脅迫したのだ。
「お前は親の力で入学しさらに権力を利用して特別クラスに入った」
「はっはっは。すげーじゃねーか!そこまで全部言い当てるとは。そうだよ、パパに頼めばなんでも願いは叶うのさ。だけどお前が……お前が生徒会長なんかになるから予定が狂ったんだ!」
「白鳥さんだったら都合が良かったのにな。だけど彼女は立候補しなかった」
「そうだよ!あの女が立候補しなかったせいで第3学習室を燃やす羽目になっちまった」
「エリカちゃんが何で関係してくるの?」
千花が疑問に思うのも当然だ。
直接的な理由は彼女じゃない。
「僕が生徒会長になるのは都合が悪かったのさ」
僕は有名な高校生作家。
しかもスキャンダルの件もあって学校まで世間から注目を浴びてしまった。
きっと大沢の人間は焦っていたはずだ。
マスコミにあれこれ詮索されたくないと。
ただし悪いことばかりじゃなかった。
「僕が作家以外で注目を浴びた時に両親のことを嗅ぎつけたのか?」
「その辺の難しいことは頭の悪い俺には分からない。だけど小松さんと付き合ってるのは許せなかった」
「だから浩一を巧みにそそのかしたり、クリスマス会を台無しにしたのか。でもお前は千花まで危険な目に遭わせたんだぞ!」
「てめえが身代りになるとわかってたからな。運良く生き残りやがって」
なんて奴だ。
千花の身にもしもの事があったらと考えただけで恐ろしい。
そして……治まっていた感情が……今まで忘れていたすべての感情が蘇ってくる。
「お前だけは、お前ら一族だけは許さない!!」
「ふん!個人のお前に何ができる?大沢一族をなめるなよ!」
「本当にお前は学習しないな。次から次へとベラベラ喋ってくれて助かるよ」
「ま、まさか……またボイスレコーダーを……」
「安心しろ。ボイスレコーダーは、使ってない」
「お、脅かしやがって……」
「この部屋に入ってから無線機をスマホに繋いで間接的に警察に聞かれてるだけだ」
無線マイクと繋がっているスマホを見せるとブタが膝から崩れ落ちていく。
それと同時にたくさんの警察官が突入してきた。
「警察だ!動くな!」
やっとオートロックを解除して救助に来てくれたようだ。
「君が氷河くんかい?事情は白鳥氏から伺っている。ご両親も保護したから安心してくれたまえ」
「ほ、本当ですか!」
「メモリー良かったね!」
「先輩やりましたね!」
千花と小悪魔が僕の胸へと飛び込んでくる。
ようやく両親と再会できる……
ふたりの美少女に抱き着かれたせいか?両親に会える期待からか?
僕の胸は高鳴り続けていた。
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