第9話 線の外で
第9話 線の外で
終わりは、用意されない。
時間だけが進む。
教室はいつも通りだった。
席の配置も、黒板の文字も、変わらない。
変わったのは、そこにいる人間の位置だけだ。
山本は席に座っている。
以前と同じ場所だが、同じではない。
昼、購買に並ぶ。
順番を待つ。
何も言われない。
そのまま進む。
石田はノートを開く。
手は止まらない。
途中で顔を上げる。
教室を見る。
すぐに戻る。
チャイムが鳴る。
神谷は教室の後ろに立つ。
何も言わない。
板書の音だけが続く。
数分後、
「以上」
それだけ言う。
授業が終わる。
ざわめきが戻る。
小さく、ばらばらに。
まとまらない。
それでいい。
山本は席に残る。
ノートを閉じる。
立ち上がる。
少しだけ遅れる。
それでも、出る。
石田は教室を出る前に、スマートフォンを見る。
通知はない。
画面を閉じる。
ポケットに入れる。
廊下に出る。
人の流れに混ざる。
前と同じ速さで歩く。
神谷は教室の中に残る。
黒板を見る。
何も書き足さない。
消さない。
そのままにする。
やがて、教室を出る。
廊下に光が差している。
掲示板に紙が貼られている。
頭髪は黒。
染色は禁止。
理由は書かれていない。
誰も立ち止まらない。
神谷も見ない。
そのまま通り過ぎる。
外に出る。
校門の向こうに、人の流れが続いている。
速さはばらばらだ。
止まらない。
神谷は立ち止まらない。
そのまま歩く。
誰かが先に進み、
誰かが遅れる。
それでも、流れは切れない。
終わりはない。
区切りもない。
ただ、
それぞれが選ぶ。




