表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/132

■第15章 第4節:認識

夜。

店を閉めたあとの静かな時間。


「おつかれさまー……」


ミアが少しだけ力なく言う。


いつもより、少しだけ疲れている。


リナが帳簿を閉じる。


「本日も問題ありません」


いつも通りの報告。


クロエが続ける。


「売上、安定」


「品質、維持」


数値としては何も問題ない。


だが――


ミアが言う。


「なんかさ」


言葉を探す。


「違うよね」


リナが顔を上げる。


「何が、ですか」


ミアは少し考えてから言う。


「使い方」


短い言葉。


それだけで通じる。


リナは静かに頷く。


「はい」


クロエも続ける。


「使用方法の変化を確認しています」


ミアが言う。


「前はさ」


少しだけ振り返る。


「必要なときに使う感じだったじゃん」


リナが答える。


「はい」


ミアは続ける。


「今は……」


少し迷う。


「前提になってる」


クロエが即答する。


「消耗前提行動です」


はっきりと。


リナが静かに言う。


「余裕があると、判断は変わります」


ミアは腕を組む。


「それってさ」


少しだけ強く言う。


「良くないよね」


クロエは一瞬だけ間を置く。


「評価は状況依存です」


ミアが眉をひそめる。


「どっちなの」


クロエは答える。


「薬の性能に問題はありません」


事実。


「しかし」


少しだけ続ける。


「使用者側の判断精度は低下しています」


リナが補足する。


「結果として、リスクが増えています」


ミアはため息をつく。


「やっぱりじゃん……」


――


少しの沈黙。


静かな空気。


外の音もない。


リナが小さく言う。


「止めますか」


問い。


クロエが見る。


「方法がありません」


現実的な返答。


ミアが言う。


「言えばいいじゃん」


簡単に。


リナは首を振る。


「強制はできません」


クロエも続ける。


「使用は任意です」


それ以上は踏み込めない。


――


ミアがぽつりと言う。


「じゃあ、このまま?」


不安が混ざる。


リナは答えない。


クロエも言わない。


二人とも、分かっている。


答えは一つではない。


――


その時。


シャーロットが口を開く。


「問題ない」


短く。


三人が見る。


ミアが言う。


「え?」


シャーロットは続ける。


「薬は、変わってない」


事実。


「使い方が変わっただけ」


クロエが頷く。


「正確です」


リナも静かに言う。


「はい」


ミアは少しだけ納得できない顔。


「でもさ」


言葉を続ける。


「危ないよ?」


シャーロットは答える。


「知らない」


短い。


はっきりと。


それで終わる。


――


ミアは何も言えなくなる。


リナは視線を落とす。


クロエは変わらない。


シャーロットは、次の準備に入る。


火を確認する。

砂時計を置く。

道具を整える。


いつも通り。


――


クロエが静かに言う。


「責任範囲外です」


リナが続ける。


「選択は使用者にあります」


ミアは小さく息を吐く。


「……そっか」


完全には納得していない。


だが、理解はしている。


――


シャーロットは言う。


「作るだけ」


それだけ。


役割は変わらない。


薬は変わらない。


――


問題は、外にある。


それでいい。


それで終わる。


違和感は、はっきりとした形になった。


だが――


それでも、白花の薬屋は変わらない。


そのまま、回り続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ