■第15章 第2節:過信
翌日。
白花の薬屋の前には、開店前から数人の冒険者が集まっていた。
「今日は早いな」
「先に補給しとくか」
軽い会話。
ミアが扉の隙間から外を見る。
「もう並んでるね」
リナが答える。
「最近は多いです」
クロエが補足する。
「行動前補給の傾向が強まっています」
シャーロットは頷く。
「開ける」
短く。
それで一日が始まる。
――
「ストロング、体力三つ」
「魔力も二本」
注文が重なる。
リナが受ける。
ミアが渡す。
クロエが確認する。
シャーロットが作る。
流れは変わらない。
だが――
「今日は奥まで行く」
一人の冒険者が言う。
「昨日より奥だな」
仲間が答える。
「大丈夫か?」
少しだけ確認。
だが、すぐに返る。
「これあるし」
手に持ったストロングを軽く振る。
それだけで、会話は終わる。
ミアが小さく言う。
「それ、理由になるの……?」
リナは答えない。
クロエが言う。
「判断基準の変化です」
――
別の冒険者。
「多めに持っとけ」
仲間に渡す。
「危なくなったら飲めばいい」
簡単に言う。
「タイミング遅れたらどうするんだよ」
少しだけ不安な声。
だが、返事は同じ。
「二本飲めばいいだろ」
軽い。
あまりにも軽い。
ミアが顔をしかめる。
「……雑じゃない?」
クロエが答える。
「効率を優先した結果です」
リナが静かに言う。
「余裕があると、判断は緩くなります」
――
昼前。
少し慌ただしい時間。
一人の冒険者が店に入ってくる。
息が少し荒い。
「……ストロング」
短く言う。
リナが確認する。
「体力でよろしいですか」
「ああ」
すぐに差し出される。
男はその場で飲む。
一気に。
「……助かった」
小さく呟く。
ミアが聞く。
「今使ってきたの?」
男は頷く。
「ちょっと無理した」
軽い言い方。
「でも、問題ねぇ」
すぐに続ける。
「これあるし」
同じ言葉。
クロエが言う。
「回復は確認できます」
男は笑う。
「だろ?」
それだけ。
――
さらに別の客。
「予備も頼む」
まとめ買い。
理由は単純。
「足りなくなると困る」
ミアが言う。
「そんなに使うの?」
男は答える。
「使う前提で動くからな」
迷いがない。
リナが静かに言う。
「……前提が変わっていますね」
クロエが頷く。
「消耗前提行動」
――
店の外。
冒険者たちが装備を確認している。
その中で、誰かが言う。
「多少無茶してもいいだろ」
「回復あるんだし」
笑い声。
軽い空気。
――
店内。
ミアが小さく言う。
「なんかさ……」
言葉を選ぶ。
「怖いね」
リナは少しだけ視線を落とす。
「はい」
クロエは変わらない。
「正常範囲です」
事実だけ。
シャーロットは――
何も言わない。
ただ、次のポーションを作る。
揃える。
渡す。
それだけ。
――
違和感は、確実に形になり始めていた。
だがまだ――
止まるものは、何もなかった。




