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新たな朝

「ねえフィーナ、私、あなたに名前で呼んで欲しいの」


「名前、でございますか…………?」


「そう、ソフィアって。言ってみてくれないかしら?」


「そのような…………とても恐れ多く」


「駄目なの? 私はそう呼んで欲しいのに…………?」


「では、公務外では…………ソフィア様と…………」


「様は余計よ」


「陛下を呼び捨てなど、(わたくし )が保たないのです」


「仕方ない子…………いつかは、ソフィアと呼んでもらうわ」


「いつか、でございますよ…………ソフィア様」




 ♡♡♡




 フィーナが目を覚ますと、そこはいつもの宿舎とは違った。

 隣を見れば、静かに寝息を立てる主人の姿が――――まだ日は登っていないが、メイドの起床時間としては妥当だ。

 静かにベッドを抜け出そうとすると、腰を抱かれて拘束される。



「申し訳ございません陛下、眠りを妨げるつもりは…………!」


 

 慌てて振り返ると、そこには、ゆっくりと体を起こすソフィアの姿が。

 元々寝てはいたが、むしろ今の声で目を覚ました様子だ。



「フィーナ、どこへ行くの…………」


「その、まずは服を着ようかと…………」


「駄目よ、逃げちゃ…………」


「そんな、陛下…………」


「名前」


「…………ソフィア様」


「なぁに」



 まだ完全に意識が覚醒したわけでは無いようで、どこか甘えた声でソフィアは話す。


 しかし力ばかりは変わりない。


 起きあがろうとしていたフィーナの体を無理矢理抱きしめると、自分の胸の中に納めてしまい、再び眠りにつこうとする。


 フィーナもそれを嫌がりはしない。

 仕事への影響が一瞬頭をよぎりはするものの、その仕事相手であるソフィアがこれを望むなら、従うのが道理であろう。



「ふふっ…………ソフィア様は、こんなにもお可愛い方だったのですね…………」



 つい漏らした一言が、ソフィアの鼓膜を揺らした。

 寝ぼけて、再び深く落ちようとしていた意識を、完全に覚醒させてしまうほどに。



「あっ、あなた…………今なんて…………」


「その…………貶めるような意図はなく。ただ、つい、口から漏れてしまっただけなのです…………!」


「余計にタチが悪いわ…………! もう、目が覚めてしまったじゃない…………」



 仕方ないと、フィーナの体を解放するソフィア。

 今度はベッドの枕元に座り、シーツで体を隠したままフィーナが何をするのかを見つめている。



「この部屋の掃除をしているのはあなたなのよね?」


「はい。ソフィア様が朝食を摂られている間などに担当させていただいております」


「…………今、やって見せて頂戴な。あなたの仕事が見たいわ」


「今で、ございますか?」


「そう、今よ」


「…………かしこまりました」



 言って、メイド服に着替え終わったフィーナが一礼する。


 すると、その足元に風が起こった。


 埃や塵、脱がれた衣類や落ちた毛布などを空中の別スペースに保管。

 廃棄物は塵籠に、衣類毛布は別で浮かんだ水に込められて、汚れを浮かせ分離させたのち、火と風の応用により乾燥。

 ものによってその速度が絶妙に調整されている。



「器用なものね…………」


「誰でも使える生活魔法でございます」


「誰でも使えるものですか。こんな練度、見たこと無いわ」



 文句のように言いながらも、ソフィアは少し赤く染まった頬を自覚していた。


 ものの数分で部屋は清潔になり、毛布も衣類も新品同然の状態に。

 同じ芸当を熟せと言われ、そっくりそのままに真似れるメイドは、世界でも数える程度しか存在しないだろう。



「ソフィア様――――昨晩逃した湯浴みですが、担当の者に伝え、既に支度が整っております。行かれますか?」


「そうね。呼んで頂戴」



 命じられるがままに、フィーナは生活魔法の連絡を扱い他メイドへと伝達を。

 その光景を、ソフィアは今日一番興味深く見ていた。



「普通、連絡って魔力で文字を形作って送るものよね? あなたのそれって、何なのかしら?」


「これは、文字ではなく特殊な波長を残すことにより、音を向こうで再現しております。原理的には、魔法構造を解体、二次元的に再構成した魔法陣に近いのでしょうか…………なにぶん、朝のメイドに文字を読んでいられる時間はございませんので」


「面白いことを考えるのね…………」



 ソフィアは指に魔力を纏わせると、宙に線を描く。

 それから数秒、その線をどこかへ飛ばすようにスワイプした。



「ねえ、聞こえる?」


「あっ…………!」


「あらフィーナ、やらしい声が出たわね」



 ソフィアはフィーナの開発した連絡携帯を即座に理解、そして悪用して見せた。

 フィーナは赤面し、苦情のような視線を送りこそするものの、言葉は何も発さない。



「ではソフィア様、湯殿へと」


「…………一先ずガウンでいいわね」


「よろしいかと」



 日が昇るまで、あと一時間程――――城の中は、既に慌ただしい生活音で満ちていた。



「足元お気をつけくださいませ、ソフィア様」

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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