制服
航は渡された制服を見下ろした。
黒ベースのシンプルなデザイン。
(……普通?)
さっきまでのやり取りのせいで身構えていたが、
見た目は拍子抜けするほど“まとも”だった。
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更衣室。
「ま、着るか……」
航は制服に袖を通す。
サイズはぴったりだった。
(そこはちゃんとしてんだな……)
軽く肩を回す。
動きやすい。
普通に、いい服だ。
――その時。
ポケットに手を入れた。
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「……は?」
深い。
やけに深い。
手首まで入れても、まだ余裕がある。
(いや、待て)
もう片方も確認する。
同じ。
「なんだこれ……」
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ガサッ
中で何かに触れた。
「……入ってんのか?」
取り出す。
小さなケース。
開ける。
中には――
折りたたみ式のナイフ。
「なんで???」
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もう一度ポケットに手を突っ込む。
別のものに触れる。
「……は?」
出てきたのは、工具セット。
しかも無駄にしっかりしている。
(いや、なんでだよ……)
さらに探る。
次は――
お菓子。
「……いや意味わかんねぇ」
思わず小さく漏れる。
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ガチャ
「どう?着れたー?」
神楽晴がドアを開けて入ってくる。
「ちょうどいいとこ来た」
航が振り向く。
「これ、何」
ポケットから物をまとめて見せる。
ナイフ、工具、お菓子、謎のコード。
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「あー、気づいた?」
晴は楽しそうに笑う。
「拡張ポケット」
「名前で理解できると思うな」
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「いろいろ入るようにしてるんだよねー」
「“いろいろ”の基準おかしいだろ」
「ちゃんと選んでるよ?」
「どこがだよ」
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「一応、任務で使える可能性あるやつ優先」
さらっと言う。
「お菓子は?」
「メンタルケア」
「適当だろ」
「否定はしない」
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「何騒いでんだー」
後ろから声。
桐谷颯真がドアにもたれていた。
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航は即座に振り向く。
「颯真、これおかしいだろ」
無言でポケットの中身を見せる。
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颯真は一瞥。
一瞬だけ間。
「……あー」
軽くため息。
「またやったのか」
「“また”?」
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「前も勝手に人の装備いじって怒られてただろ」
「そんなことあったっけ?」
「都合よく忘れんな」
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晴は悪びれもせず笑う。
「いやでも今回ちゃんと調整したよ?」
「何基準でだよ」
航が即返す。
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「航くんの反応的に、これくらいがちょうどいいかなって」
「どんな判断だよ」
「雑だけど外してはないでしょ?」
「……否定しづらいのがムカつく」
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航はもう一度ポケットに手を入れる。
「……まだあるんだけど」
「あるね」
即答。
「なんで把握してんだよ」
⸻
「一応全部把握してるよ?設計したし」
「じゃあ最初から説明しろよ」
「長くなるじゃん」
「今も十分長いわ」
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颯真が小さく笑う。
「ま、使えそうなのだけ使え」
「使えそうじゃないのが混ざってる時点で問題なんだけど」
「慣れる」
「慣れたくない」
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外から声が聞こえる。
「新人、また神楽にやられてんな」
「恒例行事だろあれ」
「止めろよ桐谷」
「……一応言ってる」
「止まってねぇじゃん」
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航はポケットを見下ろす。
(なんなんだよこれ……)
少しだけ、考える。
(……でも)
ナイフ。工具。その他もろもろ。
(使えなくはない、のか……?)
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「じゃ、次いこっか」
晴が軽く言う。
「次?」
「任務〜」
颯真はもう歩き出している。
「行くぞー」
「拒否権は」
「ない」
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(ほんと、なんなんだここ……)
ため息をつきながらも、
航はその背中を追った。




