南無阿弥陀仏
「報告。千畝氏拉致事件の犯人は創成グループ平和維持部隊ピースキーパーによって1名死亡した。だがピースキーパーたちは全滅。もう1人の犯人は逃走中だとして捜索を続ける。」
「了解。さらなるピースキーパーの導入を許可する。やつを日本から生かして返すな。」
ピースキーパー。創成グループの所有する全員超能力者の兵隊である。主に創成学園卒業者で形成されており、その力はアメリカ軍や中国軍といった世界1位2位を争う軍隊とほぼ互角である。平和維持軍との名の通り、紛争状態、内戦状態、果てには戦争状態の国の状態に介入して、多額の報酬や大量の利権を目当てに敵軍の圧倒的な脅威として君臨する世界最強の傭兵部隊だ。
そんなピースキーパーは現在日本国に一個師団を置いている。一個師団、およそ1万人で構成された超能力者軍団は、平和な日本においては無用の長物のようにも思える。だが、年々増加傾向にある超能力者による大規模な犯罪やテロに対応するために必要な存在であるのだ。警察や自衛隊では死者の群れを増やすだけ。そういう事件の時にピースキーパーは重要な意味を持つ。
「なんだなんだなんだぁ!」
イリイチは東京の新宿を歩いていた。そうしていると、超能力者であろう軍人たちの気配を察知する。数は100人弱。まだ、交戦状態に入っていないが、人気のない所にでも入れば一瞬にして交戦状態にはいるだろう。
裏道に入る。物の見事に半分ほどがこちらに向けて照準を合わせている。
「全く。舐められたものだなぁ。100人如きで俺を叩こうってか?つまらねぇ冗談だ。」
弾が来る場所は一瞬もいらずに理解出来る。華麗に避けたと言うよりは来ない場所に移動するだけだ。
「第六感ってのは応用が可能でね。数の暴力なんてまるで意味が無いんだよ。」
脳波をずらす。本来なら無意識に合わせている照準を無意識のうちに同士討ちするように、脳の指令系統をずらすのだ。
「受信して、それを改竄して、そして送信する。超能力者っていうものは脆いものだな。脳波の改竄なんて一般人相手にはなかなか出来ねぇぞ。」
「第六感なんてインチキじみた能力を使うお前には言われたくないけどな。」
いつの間にか目の前に1人たっている。脳波を改竄しきれてなかったようだ。
「だがそれはタイマンでも有効なのかな?」
瞬間移動で、また後ろに立つ。超能力による攻撃は通らない可能性を考慮して、拳銃によってイリイチを襲う。
「やるじゃないか。瞬間移動か。そいつは素敵だ。かっこいいぜ!」
当たり前のように避けて、拍手までし始める化け物相手には、瞬間移動という超能力の中でも希少種な能力者も冷や汗をかくしかない。
「…!だけどお前は攻撃手段を持たない!武器がなければ攻撃も出来ないような能力者なんていくらでも…。」
「正論だな。確かに、ここは日本だ。この国に来てから銃に触れている時間のが遥かに少ない。だがな、攻撃方法なんていくらでもあるんだよ!」
ほんの一瞬、シックス・センスによって動きが停止する。脳波が狂う。その隙をみてイリイチは拳銃を奪い取る。
「さぁ、俺に勝てるか?平和維持軍よ。拳銃は手に入れた。次の一手でお前は詰みだ。命乞いをするか?足掻いてみるか?さぁ、どうする!」
「足掻いてやるよ!まだまだ死にたくはないんでね!」
ここから勝つ方法はただ一つ。シックス・センスが反応する前に瞬間移動で距離をつめて、脳にダメージをあたえて行動不能にしてしまうことだ。万に一つにかけるしかない。
「きたっ!」
人間の反応能力を大きく超えた速度でイリイチの真後ろに立つ。それでもイリイチは笑顔だ。
「こちらもきたな。チェックメイトだ。」
そこに来るのを分かっていたかのように照準を構えて、わかりきったタイミングで引き金を弾いた。脳波が少しでも狂った時点で負けは必至だったのだ。
「あばよ。」
頭に直撃した凶弾は、その男の生命を奪い取るには十分だった。イリイチはそれをみて満足した様子で大きく笑う。
「この瞬間も見てるんだろ?本校さんよぉ!100人ごときで俺を消そうなんて考えが甘ぇんだよ!」
「そのようだな。なに、まだまだ始まったばかりだ。ロシアからの客人よ。」
創成グループの総帥は笑みを浮かべ、そう呟いたのであった。




