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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
外道、日本に立つ。
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学園内務委員会特務生徒「チェッカー」

血なまぐさいこの部屋では「証拠」をとるための「質問」が行われている。

「質問」の内容は至って単純。「犯行を行ったか」の一つだけだ。自白は1番の証拠。生徒を監視するための手段が少ない学園では、この内務委員会に情報を提供し、生徒を拘束し逮捕する権限をもつ内務委員会の特務生徒、通称「チェッカー」たちが唯一にして最大の警察及び司法の頂点に立つ。

そんなチェッカーたちに拘束されたイリイチは「質問」を受けていた。

()()()()近くにあった心拍計をイリイチの身体につけ、()()()()近くにあった凶器を使い、「質問」をする。

「やってないことはやってるとは言えないですなぁ。」

満身の力をこめて殴られ尽くされてもまるで動じる様子もなく落ち着いているイリイチを見て「チェッカー」はまた別の手段をとる。

人体において1番痛みを感じる()()は歯だ。麻酔を打たずに歯を抜こうとする。痛みで絶叫でもするかと思いきや、やはり平然としている。

「お前らはやり方が雑だ。拷問というのは情報を吐かせるためにするものだ。よく見ておけ。」

鉄パイプをもって振り落とせばそれはイリイチの頭に直撃する。額から血を流し、意識も落ちかけてはいるが、眼はまるで平然だ。

「やってねぇですよ。やってねぇ。やってねぇ…」

そこから三日間ほど様々な拷問を試し楽しんだものの、肝心の証拠は掴めず仕舞いだった。

独房のような場所では心をへし折るために暖房がきいている。生かさず殺さず。その言葉のどおりだった。

そんな状態でも動じる様子はない。薬物注射にて自白を迫るも、そもそも一通りの薬物を乱用し尽くした彼にきく通りはなく、もっとよこせと懇願される始末だった。

ブライアンアーサーはやや焦っていた。内務委員長になるためには大金星が必要だ。そのためにはチェッカーの責任者の1人として権力により、第六感(シックス・センス)を支配するのが手っ取り早いと思っていたが、ここまで何も吐かないと考えを改めなくてはならない。相手の精神をへし折る超能力者でもいればいいのだが、その能力をもっているのがよりにもよっていま尋問している相手だ。八方塞がり気味だった。

これ以上の拘束は学園による強制監査が入る可能性がある。6カ年計画のメインテーマの1つが第六感(シックス・センス)の解明である以上、学園からしたら彼の失踪をはいそうですかと通す訳には行かないのだ。

かと言って彼を解放したらそれこそ破綻だ。今までの事を洗いざらい暴露されれば「チェッカー」は終わりだ。それはアーサーの夢が破綻するのと同意義だ。

「こんなはずじゃあなかったと言っても仕方が無いがな…」

四面楚歌だった。何をしても破綻。僅かな可能性にかけるしかない。イリイチが自白。自白の内容も決まっている。あと彼が自白するだけだ。

そしてイリイチ。こちらも限界が近い。身体中が痣たらけで、調子も最悪。当局に拘束されたことはしばしばあったものの、こうもソ連レベルの拷問をされたことはなかった。

睡眠欲も食欲も性欲も限界だ。第六感(シックス・センス)も上手く感知しない。あと少しでも拷問されれば全てが吹き飛ぶところまで来ていた。

「時間だ。」

「時間か。それよりもこの痣をみてくれ。日本の法律的にこれはまずいんじゃないのか。」

「この学校は治外法権だ。我々が何をしようが日本の法は保証してくれないさ。」

どこか遠い眼をしながら、淡々と尋問をしていく。自白する可能性が万が一にもあるのならそれを奪い取るのが仕事なのだから。

「やってない。そんなやつは知らないし、殺人なんか怖くて出来ないよ。スラヴ人は蛮族かなにかだと思っているらしいが、そんなことはない。皆優しい人だらけだ。お前らは1部を見ずに全体を見ている。」

結局最初と変わらない主張で終わる。「チェッカー」たちもこんな被疑者は始めてだ。1週間経ってもまるで眼は死んでいない。

ライミー(英国人野郎)。アーサーはなんて言っている?自白しませんでしたでは済まない男だろ?お前らだって追い詰められているはずだ。」

「…チェッカーの宿命だ。お前が明日のパンのために人を殺すように、俺たちは明日の白飯のために証拠を獲るんだよ。」

「そりゃ大した正論だ。でもあのクソ野郎にこき使われて、チェッカーをしてる事がバレれば極秘の内に処分を受ける。そんなクソみたいな青春でいいのかよ?」

「俺はお前のことを救ってやれる。あのライミー(英国人野郎)にはご退場してもらうことだって可能だ。陽の当たるで普通の青春でもしねぇか?」

録音されており監視されているこの場所では肯定も否定も出来ない。わかり切ったことだった。

「今日は終わりだ。明日また来る。」

これを肯定と捉えたイリイチは少しニヤけるのだった。

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