悲しみの重さ―7
「いや、だから私は泣いてない」
白崎はまだ言っていた。
「あ、もしかしてとは思ったけど、黒屋の前だから照れてるのか。かわいいとこあんじゃんっ!」
抱き着いてきた青野を嫌がるように白崎は絡みついてくる手を振り払おうとする。
「んんっ。別に黒屋の前だからじゃない…………もういい、私も寝る」
そう言った白崎は俺が寝ているベッドのシーツの中に潜り込んでこようとしてきた。
「はっ? お前何してんの!」
白崎に対する訳のわからなさがもう極限状態だ。今までの展開で何をどう考えたら俺が寝ているベッドで寝ようとするのか……やっぱりこいつは普通じゃねぇ!
「あっ、白崎! ん~…………あたしもねるっ!」
と、更にわけのわからん事を言い出した普通じゃねぇ奴がもう一体。青野までもがベッドの上に転がり込んできた。
「あたしもじゃねえぇ! うわっ、白崎お前抱きついてくんじゃねぇ! てめぇら俺のベッドから降りろ!」
俺に引っついてくる白崎に更に引っついている青野。その訳のわからん塊をベッドから放り投げようと必死に抵抗するが、身体中がミシミシいってあまり力が入らない。
いかん。こんなとこ誰かに見られでもしたら……。
「あなたたち……何してんの……?」
俺たち三人がベッドの上で暴れている中、白崎たちが入ってきた事により開かれたカーテンの隙間から、こちらを見下ろしている二人の女性がいた。一人は保険室に常駐している養護教諭。そしてもう一人、鋭く吊り上がった眉の下に、相手を凍てつかせる瞳を携えた我らが特進科の担任。
「あらあらまあまあ。ちゃんと避妊はしてるのかしら?」
能天気な声音で養護教諭はそう言った。
ぐっ……こいつも頭イカれてやがるぜ全く。
「あ、ははは。お、親分。俺っちが怪我してここに運ばれてるのを知ってきたんすよね?こいつらが勝手にベッドにもぐりこんで来やしてね。俺っちも困ってるところでやんしてね。…………いや別になんもしてねぇっすよ?」
阪無の瞳の色は変わらず濁っており、この世の掃き溜めを見下ろしているかのようだ。
「職員会議が終わって様子見に来てあげたのに……男一人に女二人がベッドインしてるなんて、そんな状況でやる事なんて一つよねぇ~」
「いや、ほんとになんも。お前らもなんか言えって……っておい!」
俺の両側に白崎と青野が寝転がっている。いつの間にか俺たちは川の字をベッドの上で描いており、その内二人は本当に熟睡していた。
「う、嘘だろっ! こんな状況で寝るんじゃねぇ!」
「あらら。疲れ果てて寝ちゃったのかしら? さぞハードなプレイを堪能したのでしょうねぇ? く・ろ・や・くん?」
怒りの表面に笑顔を張り付けた、恐ろしい顔が目の前まで迫っていた。
もう……泣きてぇよ。




