打開策
〜レミア視点〜
<あんた!リーサに何かしたわね。>
<えぇ、彼女の身体には己の意志とは無関係に周りの生物を殺すように命令を下しておきました。>
敵の魔物は気持ち悪い笑みを向けながら自分がリーサに何をしたのか喋り始めた。
奴はリーサの脳内にエネルギーを照射することで自我は残したまま身体の後きをコントロールしているらしい。
<何故他の魔物のように理性を奪わなかったの?>
私がそう質問すると、帰ってきた答えは私の想像を超えるほどゲスなものだった。
<もちろん、その方が見ていて楽しいか、
魔物がセリフを言い終える前に私の蹴りが奴の顔に直撃した。
<ぶはっ>
蹴りを受けた瞬間、魔物の顔は歪んで、足を振った方向と同じ向きに吹き飛んだ。
<ゲスの極みが…>
私は一瞬、怒りで我を忘れそうになっていたが、直ぐにそれは敵の思う壺だと思い直す。
<スー、ハァー…>
私は高ぶる怒りを抑え込むために一旦深呼吸して落ち着くことにした。
少し時間が経過した後、耐性を立て直した
奴が私の目の前に戻ってきた。
既に敵の顔は腫れ上がり、身体もボロボロになっていると言うのに、奴の身体を操っている誰かはヘラヘラとしている。
<一応、ご説明しておきますが、私を殺したとしても彼女の洗脳は解けませんよ?>
ここまで性格が悪いとこんな奴に操られている反乱軍の魔物ですら可哀想に思えてくる。
(魔物の身体を操っている奴自身を殴ってやりたいわ。…けど)
<妹は彼にまかせたから大丈夫よ。>
<ほう、あの人間のことをよほど信頼しておられるのですね。>
そうよ、シュウヤならきっと何とかしてくれるはず。
今は目の前の敵に集中しなくちゃ!
〜シュウや視点〜
<ちっ、野郎…舐めた真似しやがる。>
俺はダークテリトリーを発動させることによって、リーサちゃんの攻撃から身を守った。
(どうする…何かリーサちゃんを無傷で助け出す方法は…)
俺は少し焦りを感じていた。
敵が反乱軍の魔物なら迷わず消すところなのだが、リーサちゃんでは反撃することもできない。
もしも戦闘が長続きして俺の闇エネルギーが底を尽きたら、奴が表に出てくるかもしれない。
ラーセは何となくいい奴だったが、闇の方はきっと違う。
ヘラヘラ笑いながら村を1つ壊滅させるような奴だからな。
そうやって俺が考えを巡らせている間に、リーサちゃんの追撃が俺を襲ってきた。
<お兄…さん、>
リーサちゃんは涙を流しながら俺に殴りかかってくる。
俺は反撃することはなく、彼女の攻撃をかわすか受け止めることしかできなかった。
リーサちゃんは身体能力を向上させる能力を使わされたのか、彼女の攻撃がやけに速くて重い。
(どうする!リーサちゃんの呪縛を解く方法は何かないのか。)
俺は彼女の攻撃を交わしながら必死に打開策を考えていた。
すると不意に頭の中に声が過ぎる。
オニイサン
「リーサちゃん?」
頭の中にリーサちゃんの声が鳴り響く。
何と俺に話しかけてきたのは以前の野郎ではなく、リーサちゃんだった。
ワタシヲコロシテ
「!?」
ダレカノアヤツリニンギョウニナルノモ、コノテデダレカヲキズツケルノモイヤダヨ。
「リーサちゃん…」
ダカラ、ワタシヲ…
「ふざけんなじゃねぇ!」
!?
俺はついリーサちゃんを怒鳴りつけてしまった。
しかし、あんなゴミみたいな奴のためにリーサちゃんが命を落とすなんてことあっちゃいけないんだ。
「ぜってぇ助け出してみせる。心配すんな!」
俺がそう言うとリーサちゃんは少し安心したようで、にっこりと笑った。
(とは言うモノのどうする……ん?)
その時、俺は何のエネルギー攻撃も受けていないのに、自分の闇エネルギーが消費されるのを感じた。
「マズい、向こうで何かあったな。」
〜王国前〜
<あ、あれっ?敵のエネルギー波を喰らったのに何ともない。>
王国軍の兵士の1人が反乱軍の魔物との交戦中に背後から別の魔物の不意打ちを喰らってしまっていた。
<しまった!不溶氷殺剣!>
兵士の危機にいち早く気づいたレザネルクが氷の剣で魔物を攻撃する。
レザネルクの氷刀に切り裂かれた魔物は真っ二つに縦断され、霧口は氷つき、反撃する間も無く凍死した。
その後レザネルクは地面に倒れた兵士の手を取った。
<大丈夫か?>
<あ、ありがとうございます。…そうかこれはレザネルク様の能力。>
しかしレザネルクは何のダメージも負ってはいない。
サラノーセに出発する前にレザネルクのエネルギーをシュウヤが受け取っていたからだ。
<ダメージは私ではなく、シュウヤ様に転送される。出来るだけ敵の攻撃は受けるな。>
<はっ!>
〜シュウヤ視点〜
「あまり時間はねぇな。」
向こうの戦いで兵士達が負うダメージは全て俺に転送される。
それをダークテリトリーで闇に沈めているわけだから、結果俺もダメージは喰らわない。
ダークテリトリーはほぼ全てのエネルギー攻撃を闇に沈めて無力化することが出来る。
しかし代償も大きい。
ダークテリトリーはそれを維持すること自体のエネルギー消費量は少ないが、敵の攻撃を無力化する際には多くの闇エネルギーを消費してしまのだ。
(ん?待てよ。)
<リーサちゃん、他人のエネルギーを吸収する能力は持ってるか?>
エ?モ、モッテルケド
(ひょっとしたら、いけるかもしれねぇ)
俺は俺の闇のエネルギーをほんの少しだけリーサちゃんに分け与えればリーサちゃんを取り巻く野郎のエネルギーを闇に沈めることがでぎるのではないかと考えた。
リーサちゃんは身体の動きは野郎にコントロールされてしまっているが、俺の脳内にテレパシーを送ってきている時点でエネルギー能力は自由に使えると見ていい。
この推測が真だった場合、気になるのは身体能力向上と雷のエネルギーだ。
「リーサちゃん、その雷は元々持っていた能力か?」
ウウン、キュウニツカエルヨウニナッテタ。
「やはりそうか。」
あの雷のエネルギーは野郎がリーサちゃんを操る際に一緒に紛れ込ませたモノであろう。
おそらく身体能力向上エネルギーも同様だ。
つまり俺が闇のエネルギーを与えでさても野郎はその能力を操ることまではできないということだ。
俺はこの考えをリーサちゃんに伝えた。
デモ、ワタシニソンナコウトウギジュツ…
<大丈夫だ!今朝のやつだって、俺からしたら高等技術だった。あれができたんだからリーサちゃんなら必ず出来る!>
事実レミアも同じことをやってのけたしな。姉にできたんだ。妹にだってできる。
ワカッタ。ヤッテミル!
「よし、シャイニングレストレイント!」
俺は光のエネルギーでリーサを束縛した。
リーサちゃんが耐性を崩して床に転がったところで、彼女の身体の上に馬乗りになる。
「さぁ、闇のエネルギーを少しだけ取り出出すんだ!」
ア、アノ…コレハオネェチャンカラキイタホウホウナンダケド…
ふと彼女の顔を見るとまるでリンゴ病のように真っ赤になっていた。
つまり、アレをしろって言うことだろ?
「あ、あのアマー…
え、えぇいままよ!」
俺は勢いに身を任せてリーサちゃんの唇を奪った。
リーサちゃんは初めはとてつもなく同様していたが、やがて落ち着きを取り戻し、俺の闇エネルギーを少しだけ抜き取った。
そのことを確認した俺はそっと立ち上がり、彼女から距離をとる。
今思えば16歳の少女を縛って馬乗りでのしかかって、その上キスまで…きっと、とんでもない絵面になってたんだろうな…
でもまぁ、俺にできることは全てやったし、後は彼女自身の戦いだ。
俺は作戦の成功を祈ってリーサちゃんを見守った。




