最初の晩餐
「んんー。んあ?」
目が覚めた時、俺はレミアの部屋のベッドに寝かされていた。
一体何時間眠っていたのかは分からないが、外はすっかり暗くなっている。
「なんだろう…体が」
ぐっすり眠っていたはずなのに体がめちゃくちゃ怠重かった。
俺は渋々体を起こす。
「あら。起きた?」
声のした方に視線を向けると椅子に座って本を読んでいたレミアがこちらを見つめていた。
「わりー、なんか眠っちまってた。」
「いいのよ。ハァハァ、ゆっくりしてて。」
何故かレミアは息を切らしていた。なんだか顔も赤いようだ。
「大丈夫か?体調悪いとか?」
「大丈夫、私もちょっと疲れただけ。」
普段はどこかのアホなバナナ好きツインテ女子のようなノリだからなぁこいつ。逆に元気ないと心配になるな。
まぁ本人が大丈夫だというのだから、これ以上は何も言わないでおこう。
そういえばお腹が空いた。一日中歩きっぱなしだったからな。
そういえば魔物は普段どんな物を食べているのだろう。
人間の肉も美味しそうに食べるぐらいだもんな。きっと肉ならなんでも食べんだろうな。
ピロローン
しばらくの間黙りこくっていると部屋のベルが鳴り始めた。
「夕食の準備が出来たみたいね。行きましょ。」
「おう。有難い」
俺達は部屋を出て 食堂へと向かった。魔物の世界では食堂を 召の間 と言うらしい。
女王の食事なのだから多少は豪華な物になってしまうのだろうが、どんな味がするのだろう。
「楽しみだな。」
<お待たせいたしました。今日のメニューは・・・>
食卓に次々と料理が並べられていく。
どれもこれも鮮やかな…赤色のー、
<ねぇこれ血じゃないよね?>
大丈夫だよね。血ってここまで綺麗な色してないよね。
<失礼なこと言うわね。例えばそこの料理の魚にかけられている赤いのはその魚の血漿よ。>
<なんだ結晶か。安心したわー。>
俺がいただきますをしようと手を合わせようとしたその時、左隣にいたレミアは右腕で逆向きのLを描いた。その後サーティアと言ってから食事を始めた。
(へぇー、あれが魔物流の食事の作法か。)
俺はレミアと同じく、逆L字を描いてサーティアと言った。すると
<クスクス>
突然レミアが笑い始める。
何か間違えたかな?
考え込む俺の元に料理長らしき魔物が歩み寄ってきた。
<シュウヤ様、今のは王族が縁組なさる際に、その日の晩餐で行う規定のようなものなのです。>
「え?」
<レミア様をよろしくお願いいたします。>
「アァ…」ガーン
聞くところによるとレミアは1790年生きてきて1度も結婚したことがないらしい。
女王の結婚がそんなに嬉しいのか、料理長もボディーガードも皆んな涙目になりながら喜んでいる。
一応隣にいる悪魔も目に涙を浮かべながらケラケラ笑ってるけどな。
「お前、いい加減俺で遊ぶの止めろよ。」
「えぇ。いいじゃない。未来もそうなるんだし。」ニヤ
こーわ。
まぁいい。気持ちを切り替えて食事を楽しむことにしよう。
俺は先程話に取り上げられた魚料理を手に取った。
「あれ?」
お皿の上に横たわっている魚に触れた瞬間、一瞬だが動いたような気がした。
俺はそっと魚を持ち上げてみる。すると
!?
なんと調理されたはずの魚が確かに動いていた。
よく見てみると魚の片方の面は死んでいて、もう片方はまだ生きていた。
「おいレミア。この魚」
俺が話しかけた時、レミアは既に同じものを食していた。
「この魚どうなってるんだ?」
「ベテルでもたまに聞くでしょ?半殺しって。それのことよ。」
うんまぁわかるんだけど聴きたいのはそこではない。
「いや、そのー、これ美味しいの?」
「もち!」
まずベテルではみることのできない料理だな。食べてお腹とか壊したりしないだろうな。
でもまぁ、レミアもあー言ってるわけだし食べてみるか。
俺は恐る恐る魚の身を口に運んだ。
「…美味い。」
予想に反してその料理は美味かった。
生きている方の身はブリブリとしていて、死んでいる方はふっくらとしている。
とても一匹の魚から作られた料理とは思えない食感のシンクロだ。
(こう言う味も嫌いじゃないな。さーてお次はー、)
続いて俺は左手の手元に置かれていたスープを手を取り、中の汁を少し啜った。
「おーぅ。」
これまた美味たるものだった。
もはや味噌に近いのか出汁に近いのかも分からなかったが、穏やかで美味しい味だった。
(具沢山なスープみたいだな。)
汁は透明じゃないので何が入っているのか確認はできなかったが、味からして変なものは入ってないだろうと高を括り、俺は中の具材を持ち上げた。
「流石に、これは…」
それはまたしてもベテルではお目にかかれない食材だった。
俺が持ち上げたのは、GGGのお父さんみたいなまん丸の目玉だった。動きはしないけどな。
これは流石に食べづらいな〜。でもせっかくご馳走してもらってる訳だし、残すのは嫌だなぁ
ええいままよ!!
俺は勢いで目玉を口の中に放り込んだ。
ブルンッ
「、、、う、美味い。」
グロテスクなものほど美味いって言葉を聞いた事があるが本当に美味かった。
(何の目玉だろう。)
〜25分後〜
「ご馳走様でした〜。」
俺は差し出された料理を残すことなく完食した。
結果的にどの料理も美味かった。
何故かサラダなのに炭酸の様にシュワシュワしていたり、デザートは苦味、甘み、酸味、に味が変化したりと、どこかしらにビックリポイントがあって、食事をしていてなんだか楽しかった。
魚や肉類は少し鉄のような味と香りがしたのは気になるけどな。
「人間も案外血液を飲めるのね。」
嫌な単語が耳に入ってきたような気がしたが、今は無視しよう。そして後でレミアを襲おう。




