〈第五十二話 解かれた聖布〉
「おはよ、ムツキ。はい、出来たよ」
早朝、レンは私たちが泊まっている宿屋に、マジックバックを持ってやって来た。
イノシカ亭で受け取るとばかり思ってたから、レンの粋なサプライズはとっても嬉しかった。
「おはよ、レン。ありがとう、持って来てくれて!」
嬉しさのあまり抱き付こうとしたが、ヒョイとレンは避ける。
酷っ!!
上げた腕が恥ずかしい。
「ムツキ。君はまだ子供だから大目に見られてるけど、むやみやたらに異性に抱き付くのはどうかと思うよ」
「レンが常識のある人で良かった……」
しみじみとサス君が呟く。反対にココは、
「これが、あの双子だったら、今頃は……監禁? それとも、孕まされてからの監禁?」
恐ろしいことを口にした。
どっちにせよ、行き着く先は監禁なの?
「何、その未来?」
眉をしかめ、レンが突っ込む。それが普通の反応だ。
たが、あの変態双子には通じない。
ありえる。絶対にありえる!!
大袈裟じゃなくて。
鈍感な私でも、双子の執着心は嫌というほど肌身に沁みて分かっている。どこから、その執着心が生まれてくるのかは、全く理解出来ないがーー。
本当に、超傍迷惑な双子だが、それでも不思議と……嫌うことが出来ない私自身が不思議で堪らなかった。
何とも言えない空気の中、ドアを控えめにノックする音が聞こえた。
セッカとナナだ。
変態獣人双子とは違い、我がパーティーの天使たちは、カコアを淹れたティーポットとコップを乗せたワゴンを押して入って来た。
二人の様子に、レンは目を丸くする。
「「レン様。お久し振りです」」
セッカとナナはレンに頭を下げ、挨拶した。
今日も可愛い格好だね。夏仕様の制服かぁ。私的には、水兵さんのような襟がついた格好をしてもらいたいんだけど。絶対に似合うよね。
「……驚いた。全く違うじゃないか」
レンの小さな声に、私は満面な笑みを浮かべる。
「勿論、それは良い方にでしょ」
「ああ」
「ミレイの教育の賜物だよ。セッカ、ナナ、元の姿に」
「「はい」」
私の手元に、中型のダガーが二刀。
二刀のダガーは、レンによって聖布が巻かれている。私は、レンにセッカとナナを手渡した。
レンは口の中で何かを呟いた後、巻かれていた聖布をゆっくりとほどいた。
ハラリと床に落ちる聖布。
抜き身になったダガーが現れた。
光りに反射した訳じゃないのに、刃は淡い光りを放っている。
「これって……」
「ムツキ、もう大丈夫だ。セッカとナナは浄化されているよ。それよりも…………」
それよりも、何?
浄化が出来てて良かったけど、黙り込んだレンに不安が募る。そんな私にレンは告げた。
「……進化してるよ。この霊刀」と。
「「「進化!!!!」」」
私とサス君、ココの声が綺麗にハモッた。
シュリナとヒスイは、平然とカコアを飲んでいる。
どうして、驚かないの!? 進化だよ! 進化!!
「何故、驚く?」
「驚く理由が分からん」
もしかして、気付いてたの?
「「勿論」」
だったら、早く言ってよ~~。
「それよりも、何故、ムツキが気付かなかったのかが分からん」
「確かにな」
何ですと~~!!
「鑑定を使えばよかったではないか」
シュリナの一言が私に止めを刺す。
確かにその通りでした。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m




