〈第四十九話 穢れた者〉
百六十話目!! ("⌒∇⌒")
「これ、セシリアさんに」
廊下で、探していたセシリアに会った。早速、セシリアに小瓶を渡す。
「ありがとうございます。それで、これは何でしょう?」
淡いピンク色の液体が入った小瓶を嬉しそうに受け取ると、セシリアは私に尋ねる。
「薬湯だよ。昨日作ってみたんだけど、もしよかったら、試しに使ってみて。一回で、約半分ね。
それから、感想教えてくれると嬉しいかな。因みに、ピンク色はココスの果肉を干したものを使ってるからだよ。
……セシリア、ミカとロイは?」
朝ごはんの時も姿を見なかった。
いつもなら、呼びもしないのに、引っ付いてくる変態双子の気配がどこからもしない。
「それが……実は、まだ戻ってきておりません」
セシリアの顔が曇る。
やっぱり、昨日から行ったきりか……。だから、静かだったんだね。何かあったのかな?
ミカとロイの分は勿論、セシリアに渡した。
渡さないと五月蝿いからね。それに、二人にはお世話になってるし。
一応、試作品だけど【鑑定】した結果、ちゃんと出来ていた。
それに、自分自身で実証済み。じゃないと、渡せないよね。
にしても、少し気になる。
あんな宣言をした後、ミカとロイが姿を消すことに、どうしても違和感が拭えない。
あんな変態双子でも、王族として、実は優秀な二人だってことは知っている。
王族として通常の仕事だったら、それはそれで大変だと思うけど、頑張って欲しい。
でも、突発的な何かがあったとしたら……
「セシリアさん。部外者な私が訊いてもいいかな? それで、何かあったの?」
騎士団長であるセシリアさんに、王国のことを訊いても、濁されるかもしれない。守秘義務っていうのかな。
知りながら、私はセシリアに尋ねていた。
「……ムツキ様。もしかしたら、一か月以内に王都から呼び出しが来るかもしれません」
王都から? どういうこと?
私がどこにいるかは知ってるはず。今、どこを拠点にしているのかも。なのに、わざわざ呼び出すの?
「それは、私個人に?」
「……いえ、違います」
声は暗いが、セシリアははっきりと否定する。
「そう。じゃあ、ハンターとして?」
「おそらく……」
ハンターが呼び出されるということは、魔物がらみということか……
どこかで、魔物の異常発生でもした?
「……黒の大陸だな、セシリア」
黙ってやり取りを聞いていたヒスイが、厳しい声でセシリアに尋ねる。
「はい」
聖獣は基本嘘をつかない。セシリアは素直に答える。
「どういうこと? ヒスイ」
ヒスイは何か知っているようだ。
「ムツキは知ってるだろ。王は、五聖獣たちの承認がなければ就けないってことを」
「勿論、知ってる」
確か……王は血統によって選ばれるのではなくて、ある特定の【称号】を持っている者が選ばれる。
現に、ジェイは王族の一員ではない。平民に近い貴族の出だと聞いた。
「だかな、黒の王、じゃねーな、王もどきは〈玄武〉の承認がなく王を名乗り、今尚、玉座に座り続けてやがる!!」
えっ!? 承認がなくて!?
「そんなこと出来るの?」
「普通、出来ねーよ」
ヒスイが吐き捨てる。
「故に、黒の大陸に住む者たちは、〈恩恵〉を一切受けていない」
シュリナが言葉を補う。
苦虫を潰したように顔を歪め吐き出される言葉は、今まで聞いたことがない程の、冷たく厳しい声だった。だから尚更、シュリナの怒りがヒシヒシと伝わってくる。
私は言葉を失う。それは、サス君もココも同じだった。ミレイはセシリアと同様、眉を少ししかめているだけだ。
「……ミレイは知ってたの?」
「はい。詳しいことまでは知りませんが、商業ギルド内で噂がありましたから」
情報が命だからね、商業ギルドは。
つまりーー
五聖獣玄武の恩恵を受けていないから、魔物が異常発生したってこと……?
でもそれは……
「偽の王を認めた民も同罪だ」
心の中で思っていたことを、シュリナはきっぱりと否定する。
偽の王でありながら、王位に就いた者。
偽の王を支持している者。
偽の王だと分かっていながらも、黙認している者。
黒の大陸に住む多くの民は、黙認している者だと、シュリナとヒスイは言う。
それら全てが、大罪を犯しているのだ。
ーーそれが、五聖獣たちの総意だった。
シュリナたち、五聖獣の言わんとしていることは分かる。分かるけど……
釈然としない、黒い靄のようなものが渦巻くのは、私だけなの。
「……黒の大陸に住む大勢の鬼人たちが、翠の大陸、蒼の大陸になだれ込んで来ようとしております」
来ようとしております? 来てますじゃなくて?
難民のことで、ミカとロイはかりだされたんじゃないの?
「結界が張られているからな」
ヒスイが答える。
「結界……?」
「穢れた者を入れるわけには行かぬからな」
また言葉を失う。シュリナが言ってることの意味が、一瞬、理解出来なかった。
つまり、ミカとロイは、鬼人たちを自分たちが住む大陸に入れないために、かりだされたということか。
そして近いうちに、私たちは魔物狩りのために、黒の大陸にかりだされるのだ。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
百六十話目まで頑張って来れたのは、皆様の応援のおかげだと思っています。本当にありがとうございますm(__)m
心からの感謝の気持ちを込めてm(__)m




