〈第三十七話 光りの道を歩きながら〉
シュリナに教えてもらった通りにしてから直ぐに、それは起きた。
地面がポッと光りだした。
始めは小さく、儚げな光りだった。
それが徐々に強くなっていく。
幻想的な光りの道が、森の奥へと続いている。
綿毛……それとも蛍か……。私の周りにも、光りの滴がポツポツと浮かんでいる。
「…………綺麗」
感嘆の声が漏れた。
空中に浮かんでいる光りの滴に、ソッと触れてみる。熱くもなく、シャボン玉のように壊れたりもしない。そんな私の様子を、変態双子とミレイは不思議そうに見ていた。
『さぁ、お進み下さい』
耳元で声がした。私と変わらない年齢ぐらいの、少し甲高い少女の声だった。慌てて周囲を見渡すが、誰もいない。
「ムツキさん。どうかしましたか?」
サス君が私を見上げている。ココもだ。
(……聞こえてないの?)
「何が?」
ココが可愛く首を傾げる。それを見て、私はさっきの声が念話だと気付いた。
「さて、行くぞ」
シュリナは私の顔を見てから、光りの道を進んで行く。私はその後ろをついて歩いた。数歩先にいるシュリナの赤い翼を見ながら、私はさっきの声が聞こえていたのだと、漠然と思った。
ーーこの先に、ビャッコ様がいる。
私はビャッコ様に会いに来た。長い間、眠り続けるビャッコ様を起こしに来たのに、一歩、一歩近付くにつれ、私は不安にかられる。
ビャッコ様の名前を思い出すことが出来るのか……と。
何故なら、私の過去世が、ビャッコ様に付けた名前、それがーー目覚める〈鍵〉となっているからだ。
『大丈夫だ。記憶は、ムツキの魂に深く刻み込まれている。それに、イオリが残した〈鍵〉がある。心配しなくていい。自分を信じろ』
『ありがとう、シュリナ』
シュリナの声は、私の波立った心を静めてくれる。数歩先を飛んでいたシュリナはスピードを落とし、私の隣にいてくれる。サス君もココも、ミレイも側にいてくれる。ついでに変態双子も。
……今なら、言えるかもしれない。
『……シュリナ、ココ、昨日は体を縛ってしまってごめんね』
何かあった時のために、従魔登録をしている者が使えるスキル。【言霊】を使って、私はシュリナとココの体を魔力で縛り付けた。シュリナたちの意思を無視して。従魔登録をした時、一生使うことのないスキルだと思っていた。それを使ったのだ。
『……何故、自分の種族を明かした? 隠していただろう』
シュリナの疑問は当たり前だった。出来れば知られたくなかったし、私自身忘れていることも多だあった。
『〈森の民〉が私の殺害を企てていたから、ビャッコ様は加護を外した。彼らがどうなるか分かっていてね。私を守るために、ビャッコ様は手を下したの』
『当然のことをしたまでだ』
『うん、分かってる。シュリナもそうだね。でもね……シュリナを見てて思ったんだ。何よりも眷族を大切にしてるってね。それは、ビャッコ様も同じだと思う。だから……私も、ビャッコ様が背負った悲しみの一部でいいから、背負えたら。そう、思ったの』
『…………馬鹿者』
シュリナがボソッと呟く。
『うん。ごめんね……』
でも、後悔はしていない。
自分でも分かってる。不器用で、馬鹿で、我が儘だって。
◇◆◇◆◇
小高い丘の上に、緑色の髪をした少女と、同じく緑色の髪をした少年が立っていた。
「もうすぐですね。ビャッコ様」
温かく優しい声で、少女は隣に立つ少年に話し掛ける。
「やっとだ……やっと会える……」
「ええ。やっと念願の時を迎えれますね。ビャッコ様」
泣けない主に代わり、少女は涙を流す。
「……護りて様は、優しくて強い御方ですね」
「ああ。そういうところは昔と変わらない。自分から、色々なものを背負い込む。ほんと、馬鹿な奴だ」
「そういうところが、気にいっておられるのに」
女性は涙をハンカチで拭いながら、微笑む。
少年の姿をしたビャッコは、短く「そうだな」と答えた。
お待たせしました("⌒∇⌒")
楽しんで頂けると、とても嬉しいです!!
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




