〈第二十一話 病的に怖いので無理です〉
大声と同時に、乱暴に扉が開いた。
入ってきたのは、想像通り、変態双子。見た目はゼロに次ぐ、美しさだ。だけど……
「「ムツキは僕(私)たちと一緒にいるんだ!!」」
入ってきて早々、頭が痛くなる発言をしてくれた。
(会ったばかりだよね、私たち)
変態双子の一方的な物言いに、私は少し早イラッとしてきた。
「嫌です。悪いけど、私は貴方たちと一緒にいたくない」
「どうして!?」
「ジェイより、僕たちの方が貴女を守れる!! さぁ、僕たちの手をとって」
さっきまで、声を荒げていたのが一転して、優しい声で、必死に、私に残るよう説得し始める、ロイ。
(手をとったら、即アウトのような気がするのは、私だけ)
「無理です!!」
「「何故!!」」
(何故って……しょうがない)
「はっきり言います。病的に怖いので無理です」
こういうタイプの人間(獣人だけど)には、はっきり言った方がいい。下手に相手のことを思い、オブラートにくるんだように濁すと、かえって、こういうタイプの人間は、自分の言い様にとって解釈してしまう。
そして私は、どんどん泥濘に足をとられてしまう結果になりかねない。 泥濘が底無し沼だってありえるのだ。
ーーそんなとこ、はまりたくもない。
なので、私ははっきりと口にする。
「……容赦ない」
ボソッと、ジェイが呟く声が耳に入った。ムカッとしたけど、ここはあえて無視する。
「ミレイ、セッカ、ナナ。今すぐ、私たちの荷物を持ってきて」
苛立ちとムカつきで、若干声が低くなる。
それでも、三人は「「「はい」」」と答え、ナナは隣の部屋から私の防具と鞄を、ミレイとセッカはジェイの荷物を取りに、変態双子の後ろを通ろうとした。
「「行かせない(わ)!!」」
ミカは幼いセッカの腕を掴もうとした。だが、セッカはひらりと交わす。
(今、セッカに手をだそうとしたよね。この変態双子は)
「何してるの!? まさか、子供を人質にとろうとか、考えてないよね?」
私は笑みを浮かべたまま、とても低い声で言い放つ。同時に、魔力をわざと放出した。
「笑いながら、攻撃するところは、あいつと同じだな」
「ムツキって、隠れSだよね」
「「…………」」
「サス君、ジェイ。無言は肯定とみなす。いいわね」
自然と、放出される魔力が増える。三人と二頭はビクつく。変態双子の意識がそれたうちに、セッカはミレイと共に部屋を出ようとした。扉に手を掛けた時だ。反対側から、扉が開いた。
「失礼致します。ジェイ様の防具と荷物をお持ち致しました」
灰色色の髪と青い瞳。三角の耳とフサフサの太い尻尾を持つメイドが頭を下げ、私たちに挨拶の言葉を述べた。それから、ミレイとセッカにジェイの荷物を渡す。
「「なっ!! 勝手に何している(のよ)、セシリア!!」」
「ジェイ様のお荷物をお届けしただけですが、何か?」
「「そんなこと命じてない(わ)!!」」
(さすが、双子。綺麗にハモッてる)
それにしても、セシリアと呼ばれた女性は、変態とはいえ、王子と王女に怒鳴られても平然と答えている。
(本当に、メイドかな?)
ふと、疑問に感じた。王子と王女がいるのに、警備の人数が少ない。ジェイみたいに強いとも思えないし。そんなことを考えている間も、三人のやり取りは続く。
「はい。命令は受けていませんが」
「勝手なことするな!!」
「ムツキは、私たちと一緒にいるの!!」
「ムツキ様です。ミカ様」
子供のように我が儘を言う変態双子に、セシリアは訂正した後、一言「無理です」と言い放った。
「何故だ!?」
「どうして!?」
セシリアは大きな溜め息をつくと、一気に話しだした。
「分かりませんか? ……弱いからです。少し、ムツキ様が魔力を放出しただけで、ビクついている貴方がたが、ムツキ様をお守りするのですか? 出来ると思っておいでなのですか? 出来る訳ないでしょう。それとも、ムツキ様に守ってもらうのですか? だとしたら、本末転倒ですね」
「「…………」」
「ましてや、初対面の少女に抱き付き、匂いを嗅ぐという痴漢行為をしておきながら、謝罪もなしに、今度は監禁でもしようというおつもりですか? 恥ずかしい。王家に仕える者として、これ程恥ずかしいことはありませんよ。それとも、正々堂々とジェイ様に決闘を挑まれますか?ああ、その時は死を覚悟した方が宜しいですよ」
「「…………」」
刺した。グサリと刺した。見えない剣で、心に止めを刺した。戦意喪失。変態双子は今にも泣きそうだ。泣かないだけましかな。
「……ココ。あれが、本物のSだよ」
二頭と一人は大きく頷いた。
お待たせしました("⌒∇⌒")
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
シュリナが言った〈あいつ〉は、ムツキの過去世のアキラのことです(゜∇^d)!!
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




