〈第二十話 獣人族の変態双子〉
「……ムツキ、大丈夫か?」
ぐったりして、テーブルに突っ伏していた私に、ジェイが声をかけてきた。「大丈夫」と答えながら、私は顔を上げる。私をぐったりとさせた張本人たちは、今二人とも席を外していた。
「あいつらは、度を過ぎるところがあるからな……」
ジェイもどこか疲れた様子だ。癖が強すぎる。
ミレイがそんな私たちの前に、紅茶を淹れたカップを置く。勿論、従魔トリオの分も。疲れた時、前までならココリの紅茶を淹れてくれてたのに、今日は違う。見た目は同じだが、匂いが違った。この匂いは。
(桃に似てる……)
「桃の紅茶?」
「モモスの実の紅茶です」
「モモス?」
一口飲んでみて、やっぱり桃の紅茶だ。甘くて、フルーティーな香りに、私はホッとする。
「はい。今年初のモモスの紅茶です」
「そろそろ、モモスの収穫時期だからな」
テーブルの中央に置かれた籠の中に、一際赤く熟れた実があった。それがモモスの実だ。モモスのの収穫時期は、夏の中頃から秋の終わりぐらいまで。この世界では、モモスは夏の食べ物ではなく、秋の食べ物だった。
「……スモモ」
「ムツキが生まれ育った場所では、この実をスモモって言うのか?」
「うん」
ミレイが淹れてくれた紅茶を飲みながら、私はふと……ジュンさんが淹れてくれたフルーティーを、思い出した。
「……あの二人、ジェイさんの知り合いだったんですね」
ひと心地がついたので、私は思いきってジェイに尋ねた。
ーーあの二人。
そう。ホワイトライオンの獣人の男女の双子。確か、ミカとロイと名乗っていた。
一時間程前だ。
赤印をつけていたお店に、ジェイと皆で行く途中だった。大通りを歩いていると、いきなり抱き付かれ匂いを嗅がれた。
「やっぱり、良い匂い!! はぁ~~癒される~~」
うっとりとした声で、痴漢が耳元で囁く。その間も、首筋に鼻先をつけ、クンクンと匂いを嗅いでいる。
泣きそうになった私を、直ぐにジェイが救ってくれた。だがその後も、ミカに腕を絡まれたままで、強引に一軒の屋敷まで連れて来られた。さすがに、ロイはミカのように腕を絡ませてはこなかったが、当然のように隣の位置をキープしようとした。だけど、うちの従魔トリオに阻まれてキープ出来なかった。
『皆、ありがとう!』
『構わん。にしても、礼儀がなってないぞ! あのガキ供は!』
『安心してね、ムツキ。あの虫は皆で駆除するから』
『退治は得意ですから、任せて下さい』
(あーー完全に敵認定されたわ)
仕方なく、ミカの隣に移動したロイの鼻が、ピクピク動いているのは見なかったことにしよう。
ミカとロイの屋敷に、強引に連れて来られた私たち。玄関の扉の前に、ミレイが立って、私たちが帰って来るのを待っていた。
「ああ。昔からの知り合いだ。あいつらの父親は、獣王だからな。獣王はホワイトライオンの獣人でしか継げないんだ」
(獣王って……マジですか!? じゃ、あの変態は王子様に王女様!! ホワイトライオンだから、次に継ぐのはあの双子のどちらかになるよね。国潰れるんじゃない?)
「何でも、一週間前からこの街に逗留していたそうです。ムツキ様の護衛と旅の手助けのためだと」
「護衛に手助けね……」
さっきまでぐったりしていた私を見て、ジェイは「断ってもいいんだぞ」と言ってくれた。ほんと、ジェイは優しい。
「勇王がそう言っているのだ、断れ」
「そうですよ。護衛などいりません。僕たちもいますし」
「そうだよ、ムツキ。護衛なら、ジェイが一応いるんだから、これ以上必要ないよ。それに旅の手助け? それはミレイがいるんだから、問題ないじゃん」
容赦ない、従魔トリオのお言葉。
(……本当に、敵認定されてるね)
初対面で、ここまで嫌われるとは。
(正直いえば、断れるのなら断りたい。だけど……簡単に断ってもいいのかな? 一応、獣王様の子供なら、王族だよね。王族に喧嘩を売ることにならない。私がよくても、ジェイが……)
「俺のことは気にするな。獣王には後から俺が話をつける。国同士の問題にはならないから、安心しろ」
私が渋っていた理由を、ジェイはちゃんと気付いてくれてた。
「そうと決まれば、あいつらがいない今のうちに出発するぞ」
その場にいた全員が頷く。そうと決まれば早い。私たちは荷物を取りに行くために立ち上がった、まさにその時だった。
「「行かせない(から)!!!!」」
大声と同時に、乱暴に扉が開いた。
お待たせしましたm(__)m
新キャラ登場!!
これからも、ちょくちょく出てきます("⌒∇⌒")
因みに、ムツキは尻尾を見てライオンだと分かりました。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




