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〈第五十一話 作戦会議〉

 


 森を進んでいると、向かい風が頬を掠めていった。掠めた風が冷たく感じる。



 水辺が近いーー



 クロードが唇に指を当て、止まる。クロードとリックはその場に屈む。私とミレイ、レンは頷き、同じように屈んだ。木々が邪魔して、先がどうなっているか把握出来ない。



『ムツキ。約十メートル先に、五頭の【クロコ】がいるぞ』



 水場の位置が把握出来ない以上、これより先に進むのは危険だ。どうしようかなぁ、と考えていると、シュリナが一番必要な情報を教えてくれた。さすが、シュリナだ。



 危険を承知で、クロードとリックが二手に別れて周囲を探ろうとしていたのを、私はクロードの服を掴み止めた。リックも自然と止まる。リックの悲しそうな、シュンとした顔で私を見詰めていた。



(何で、そんな顔してるの?)



 疑問に思いながらも、今はそんなことに意識をとられてる暇はない。伝えるべきことがある。



「約十メートル先に、五頭の【クロコ】がいます」

 とても、とても小さな声で二人に伝える。



 何故分かった? 二人の顔にそんな疑問が浮かぶが、直ぐに気持ちを切り替える。二人はジェスチャーで後ろを指し、下がるように指示する。



 私たちは頷き、音をたてずに、ソッと後ろに下がった。十分に距離を置いたところで、リックが切り出す。



「ムツキ様は、クロードがいいのですか? あんなに可愛らしい顔で服を引っ張るなど……」

「………………はぁ?」



(何言ってるの? この人。もしかして……さっきの悲しそうな、シュンとした顔の原因はそれですか?)



 信じられない。緊張感がないっていうか。……頭痛がしてきた。側にいる皆の視線が、段々冷たくなってるの気付いてる?



「どうして、正確な位置と個数が把握出来た?」



 クロードは仲間であるリックを完無視し、私に尋ねる。



「シュリナが教えてくれました。鼻がいいので」

「ちょっと待て! 喋れるのか!?」

「喋れるに決まっておろう」



 代わりに答えたのは、シュリナだ。



「ーー!!」



 感動し、興奮したままシュリナに迫るクロード。私は慌てて、シュリナとクロードの間に体を割り込ませる。



「私の仲間を、怖がらせないで欲しいんですけど」

「怖がらせるつもりなんてーー」



 心外だ、と言いたそうだが、言わせない。



「怖がらせてます。十分、引いてます」

 力強く断言する。皆のために。



 少しは冷静になったのか、シュリナたちの顔をクロードは見詰める。シュリナたちは私の後ろに隠れた。完全に隠れ切れてないけど。サス君なんて、全身出てしまってる。それでも、引いてることは伝わったようだ。今度はクロードがシュンとし、黙り込んだ。



(狩りの前にこれって……)



 子供か!! と叫びそうになるのを、どうにか私は我慢する。ほんと、別の意味で頭が痛い。もう、ほっとこ。



 私と従魔トリオは、テンションが下がった二人から離れて、作戦会議を始める。



「クロコが五頭か……」

「クロコの殆どは、ランクAだよ。大きなのは、ランクSかな」



 正面にちょこんと座ったココが教えてくれる。



「水中にいるなら、雷で感電させてからの、一斉攻撃が無難かな?」

「そうだな。それで大分、動きは鈍くなるだろう」

「皮が分厚い上に固いから、武器の攻撃は効きにくいよ」



(なるほど。だったら、魔法攻撃だね。今回はセッカとナナの活躍の場は無さそうだね)



『『えーーーー!!』』



 そう思った途端、双子の子供の声が頭の中で響く。思わず、耳を押さえてしまう。関係ないのに。



『『久し振りのご馳走だと思ってたのに……』』

『昨日、食べたよね』



 魔狼を。Bランクだったけど。



『『主様~~。お腹ペコペコです』』

『分かったから。そんなに泣きそうな声を出さないで。最後の止めはダガーを使うから』

『『約束ですよ!! 主様!』』



 キャッキャッとはしゃぐ双子。



「甘やかしすぎだ」



 双子との会話を聞いていたシュリナが、注意する。サス君もココも何か言いたそうに、私を見上げていた。その視線が痛い。仰る通りです。でもね……私は苦笑しながら答える。



「分かってるけど。可愛いんだもん。……とりあえず、サス君が雷で一発大きいのを打った後、私が全体魔法をぶっ放す。んで、止めをダガーで刺すって、どう?」



 超シンプルな作戦。でも、結構えげつない。



「任せて下さい!」



 サス君は楽しそうだ。



「で、大半が陸地に出ている時は?」

「陸地に出ている時は、いつもの作戦で」

「「「了解!!」」」



 そうと決まれば、行動あるのみ。



 ところで、側で聞いていたミレイとレンの顔色が悪いのは何故かな? まぁ、いいけど。



「ミレイとレンはここにいて」



 さすがに、レンを連れて行くわけにはいかない。ミレイにはレンを守ってもらわなきゃ。



 レンは力強く頷き、ミレイは「お気を付けて、ご武運を祈ってあります」と頭を下げた。そして私たちは、二人に見送られて出発した。



 リックとクロード? 

 勿論、置いてくに決まってる。




久し振りに、双子が登場。

それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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