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〈第四十七話 漆黒の英雄〉

 


 ダンの言った通り、その後すぐに城門は開いた。



「失礼ですが、身分証を拝見出来ますか?」

 門を潜った先で、兵士に呼び止められた。



 ダンジョン内で身分証の提示を求められるとは思っていなかった私は、不審に思い、チラリとミレイに視線を送る。ミレイは軽く頷いた。私は安心して懐からハンターカードを取り出すと、兵士に渡した。



 すると、確認していた兵士の手が震えだした。



(ん? 何!?)



 何かに感動したのか、潤んだ目で私を見詰めてきた。百八十センチはある、がっしりとした兵士がだよ。私は思わず後ずさる。その分、兵士は一歩歩み寄る。



(近いんですけど!!)



 私の戸惑いと焦りを完全に無視して、兵士は怒濤の如く喋りだす。



「これは、失礼しました!! 貴女があの噂の〈ゴールドの冒険者〉〈漆黒の英雄〉様ですね。本当に麗しい御方で。お会い出来て光栄です。……あの……すみませんが、握手してもらって宜しいですか? 是非、お願いします!!」



 背が三十センチ近く高い男の人に、ズイッと迫られて、私は違う意味で緊張する。



「おい!! 何やってる!? 感激するのは分かるが、完全に引いているぞ。嫌われたくなかったら、とっとと離れろ!!」



 迫ってくる兵士を同僚が乱暴に引き離す。嫌われたくなかったら、の言葉に反応して、兵士は渋々大人しくなった。



「すまなかった。こいつが暴走してしまって」

「いえ……」

「それで、後ろの男は?」



 兵士の目が鋭くなる。



「十七階層の終盤、うずくまっているところを保護しました。引き返すよりも、先に進んだ方が安全だと思い、ここまでで連れて来ました」



「十九階層には簡易のセーブポイントがあるからな。ということは、あの魔狼の群れを退治したということか……。さすが、ゴールドだな。分かった。この男はここで預かろう」



 そう言うと、私に握手を求めた兵士に男を渡す。この場を離れたくないと駄々をこねる兵士に、同僚は大きな溜め息をつく。



「仕事が出来ない男性は嫌われるぞ」



 その台詞に、兵士はマッハで男を受け取り、兵士の屯所に連れて行った。その身軽さに私は驚くと同時に、綺麗だと思った。兵士の動きがだ。



「あれでも、腕はかなりのものだから、不思議だ」

「……ほんとに」



 相槌を打つ私に、驚愕する同僚。



「あの身軽さと、動きに一切の無駄がないところ。流れるような動きが綺麗だと思いました」

「だから、強いと」

「はい」



 私の答に納得したのか、同僚は本来の仕事に戻る。



「……それで、カードの登録通り、従魔は、フェンリルと妖精猫、そして赤竜レッドドラゴンか。おいおい!! 全部伝説級の生き物だぞ!! どこで出会えるんだ。全く」



 ぼやきながらも、感動したのか、今度は同僚が熱い目で従魔トリオを見詰める。その視線に、従魔トリオが完全に引いている。気持ち分かるけどね。



「あの~~。そろそろ、通っても大丈夫ですか?」

「ああ。すまない。目の前の奇跡に興奮してしまって」

「いえ、分かります。その気持ち」



 一瞬、同僚は口角を上げる。笑った?



「きちんと登録も躾もされているようなので、この街を歩くことを許可する。だが、もし従魔たちが問題を起こした時は、マスターである君の責任になる。厳しい罰が下ると覚悟するように」



 そう厳重に警告すると、同僚はハンターカードを返し道を開けた。ミレイもダンもハンターカードを提示し、すんなりと通る。



 やっぱり、ダンはハンターカードを持っていた。まぁ、魔物を討伐するには、余程のことがない限り、カードを持っていないと法律違反だからね。当然といえば当然かな。



 皆揃って通路を進みかけた時だ。ゾクッと寒気がした。



 恐る恐る後ろを振り返ると、私に迫ってきた兵士が熱い目で、私をジーと見詰めていた。私と目が合うと兵士は破顔する。



「ヒッ!!」

「ムツキ様。目が汚れますよ」



 ミレイは、兵士が視界に入らないように間に移動する。それにしても。



(目が汚れるって……)



「流石だな、嬢ちゃん。二つ名が二つもあるとはな」

 ダンが笑いながら、私を誉める。



(二つ名が二つ?)



 そう言えば、あの兵士が呼んでいたような気がする。〈ゴールドの冒険者〉と後は……



「〈漆黒の英雄〉ですね」

 嬉しそうに、ミレイはその名を呼ぶ。



 私は何て反応したらいいか、正直困る。出来れば、二つ名なんてつかない方がいい。だけど、この世界において、いやハンターにとって、二つ名がつくことは、すごく名誉なことなのだ。だからといって、正直、手を上げて喜ぶことは出来ないし、したくない。



「漆黒の意味は、髪の色からだって分かるけど、英雄って……」



(荷が重い。重すぎる!!)



「ホムロ村を救いましたから、当然ですね」



 まさか、ミレイが知っていたなんて。情報の伝達の早さに、私は驚く。流石、商業ギルド。商売にとって、情報が剣や魔法の役割を果たすわけだしね。



「確かにそうだけど。それは……」



 護ったのは皆でだ。それなのに……。溜め息が漏れる。



 私はこの時、完全に忘れていた。

 ホムロ村が有名な保養所だったことをーー






 狛犬だけど、フェンリル。

 この世界に、狛犬が存在しないため。一番近い生き物として登録してます。


 それでば、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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