〈第四十六話 意外な人との再会〉
百話目です!!
洞窟のダンジョンに潜って、五日目。
途中、大きなハプニングがあったが、無事、私たちは二十階層に通じる通路の手前まで来た。このまま通路を進むと、二十階層だ。
「やっと、休める……」
私は安堵から体の力が抜ける。ここまで、マジ色々あったよ。
あれから口先だけの死にたがりさんは、無言のまま、私たちの後ろをついて来ていた。ここまでで来たら、もういいだろう。
「じゃあ、ここまでで。約束通り好きにしたら」
私は男を解放する。どうしていいか分からず、呆然と立ち尽くす男を私たちは無視した。ここから先、生きるなり、死ぬなり、男の自由だ。冷たいようだけどね。私は思う。自分の人生は自分のもの。それをどう生きるのかは、自分次第なのだと。
十六階層から十九階層までは〈回廊のダンジョン〉。十九階層は何故か、〈密林のダンジョン〉だった。ダンジョンはまさに、生き物のようだと、潜ってて感じていた。
階数を進むと同時に難易度は上がる。これも、ダンジョンの特徴だ。事実、十四階層までとは違い、難易度はグンッと上がっていた。流石に、疲労困憊(特に精神面が)なので、さっさと宿屋にはいって休みたいんだけど……
私たちは妙なところで、足止めをくらっていた。
(この奥に通路があるんだよね?)
「ミレイ。この奥にあるのはお城?」
思わず、私はこのダンジョンの案内人であるミレイに尋ねた。
「いいえ。この奥にあるのは、通路ですよ。普通の」
「じゃ、通路の先にお城があるの?」
「城ではないですね」
はっきりとは答えないミレイ。その声はどこか楽しそうだ。日にちが経つにつれ、ミレイの表情が徐々にだが、柔らかくなってきた。私はそれが、とても嬉しかった。
(ミレイは城じゃないって言ってたけど、城じゃなかったら、何?)
「城がないのなら、何で目の前に城門があるの?」
城にこだわった理由。それは、王都バーミリオンの城下街に入る時に潜った城門と、同じような立派な門が、私たちの行く手を塞いでいたからだ。城門は固く閉じられている。
「魔物の侵入を阻止するために決まってるじゃろ、嬢ちゃん。もしかして、嬢ちゃんはここ初めてか。そおか。この階層にはレアな魔物がいてな、そいつが厄介で、通常は門を閉めとる。安心しな。まもなく開くぞ」
私の疑問に答えたのは、ミレイではなかった。野太い男性の声だ。どこかで聞いた気がする。私は声がする方向を見るが、誰もいない。
(ん? あれ? こんなこと、前にもあったような……)
「あれ? ダン、どうしてここにいるの?」
思い出すより早く、ココが声の主に話し掛けていた。
なるほど。前にもあったはずだ。
視線を下げると、そこにはドワーフが立っていた。あごひげを胸のあたりまで伸ばし、髪をぼうぼうと生やして、今は三角帽子を被っている、あのドワーフだ。ファンタジーの世界で、エルフと同様に欠かせない種族。
目の前にいるドワーフの名前は、ダン。
私が今装備している銀色のアーマーは、ダンの作品だ。彼はグリーンメドウの街の外れで、防具屋を営んでいる。因みに、双子の兄のデンは、同じ街の反対側の外れで武器屋を営んでいる。
「お久し振りです、ダンさん。……でも、どうして、このダンジョンに?」
こんなところで、それも意外な人との再会に、私は嬉しくて頬を緩める。一瞬、ダンの目が見開く。
「久し振りじゃな。嬢ちゃんの噂はよく聞いてるぞ。ゴールドになったんだってな。ハンターになって数か月で、ゴールドに出世か! さすが、ワシのアーマーを装備するに値するハンターだ!!!! ガハガハ!!」
豪快に笑うダンさん。素直に、私を祝ってくれる気持ちが伝わってくる。ちょっと、会話がズレてるけどね。
それでもダンの気持ちが嬉しくて、私は笑みを浮かべる。そんな私のすぐ側から、「「笑ってる……あの、ダンが笑ってる……」」と、かなり失礼なことをブツブツと呟く声が聞こえてきた。ココとサス君だ。呟きながら、後ろに下がり距離をとっている。失礼だよ。
ドワーフは気難しくて、交流は難しい種族だと聞く。確かにダンさんやデンさんは、豪快で乱暴なところもあるし、仕事が絡むと気難しい面もある。だけど、基本陽気で情に厚い人だと、私は思う。「「嘘だ!! どこが!?」」って突っ込む声が聞こえたが、私は完全に無視する。
「五月蝿いぞ、オメーら!!!!!」
五月蝿い外野に、ダンは怒鳴りつける。怒鳴られて当然。
「ありがとう。ダンさんのアーマーを装備してるから、安心して頑張れるんだよ。で、どうしてここに?」
再度、尋ねる。
「防具屋のワシが来る理由は、一つに決まっておるわ。防具の材料を狩りに来たんじゃ」
(へぇ~~。材料を狩りにって、意外にダンさんって強いんだ。もしかして、ハンターの資格持ってる?)
私が育った世界の本の中でも、ドワーフは意外に戦闘民族だと書かれていた。あくまで、空想上の話だけど。
でも、この世界には様々な人種や魔法に剣、魔物がひしめいている。
そして、ドワーフも存在する。この世界のドワーフは嘗てよく読んでいた物語に似ているようだ。だとしても、材料まで自分で手に入れようとする、職人としての姿勢に、私は素直に感心する。
「防具の材料?」
(魔物の皮とか、牙とかかな)
「そうだ。んで、嬢ちゃんは?」
「私は、マジックバックを作ってもらいにね」
「ほ~~お。マジックバックか……」
私がマジックバックのことを口にした途端、ダンがニヤリと笑ったが、あごひげに隠れてて、私は全く気付かなかった。
お待たせしました。
今回で百話目です。
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございますm(__)m
これからも、頑張ります(゜∇^d)!!
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




