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〈第四十二話 戦闘メイドの意外な一面〉

 


 洞窟のダンジョンに潜って、五日目。



 私たちは〈回廊のダンジョン〉を爆走中。



 一階層から四階層までの〈地下通路ダンジョン〉とは違い、その構造は複雑になっていた。ちょっとした迷路だ。



 なので、多くのパーティーが十五階層で道案内人を雇う。私たちはミレイがいたから、わざわざ雇う必要はなかったけどね。もし雇うなら、詐欺紛いの人を雇わないように注意が必要。どこにでも、こういう輩はいるからね。もし、注意を怠ると、最悪なケースを招くことになる。目の前にいる男のように……



 人の気配にいち早く気付いたのは、従魔トリオだった。



 回廊の影に隠れて、一人の男が力なく座り込んでいた。



 最初に、サス君が男に近付く。音もなく近付いたサス君を魔物と勘違いした男は、サス君に攻撃を加えようとしたが当たらず、力なくその場に沈み込む。泥と汗、そして血の匂いが混じり、幾日も風呂に入っていないからか、数メートル離れた先にいる私たちにも分かるほど、体から悪臭を放っていた。



「……大丈夫ですか?」

 布で鼻を押さえながら、私は小声で男に向かって話しかける。



「ーー!!」



 男は私の声を聞き、弾けたように顔を上げた。光りを宿していなかった目が、私という人間を認識した途端、徐々に光りを取り戻していく。



 その矢先だ。

 サス君が男に向かって【風牙】を放った。



【風牙】はサス君が持つ、固定スキルの一つだ。雷魔法と同様に、戦いの際よく使用している。雷魔法が敵全体を攻撃するスキルなら、【風牙】は単体を攻撃する技だ。魔力を前足に集め放つ。その破壊力は、簡単に大木の幹を抉るほどだった。



「ギャン!!!!」



 獣特有の鋭い鳴き声が響く。と同時に、ドサッという音と、血の匂いが辺りを充満する。



(やばいよね……)



 血の匂いは新たな魔物を呼び込む。今すぐ、この場から離れないと……



 私は男の横に膝をつき座ると、鼻がもげそうな匂いを我慢しながら回復魔法をかけた。これで怪我は治ったはず。なのに、男は立とうとはしない。



「立って!!」



 私が声を荒げても、男は立たない。



 私は厳しい声で、再度「立って!!」と命令する。しかし、男は立たない。怪我は治っているのに。光りを宿していた目は、またしても光りを失う。



「立ちなさい!! 死にたいの!!!!」

 私は男に向かって怒鳴り付けた。



 ここにいるのなら、男もハンターだ。だったら、分かっているはずだ。このままこの場所にいれば、血の匂いに引き寄せられて魔物が集まることぐらい。ハンターでなくても、分かる!! 子供でも分かる!! なのに、男は立ち上がらない。座り込んだままだ。



 まるで……

 魔物に喰われたがっているかのように見えた。見えたけど……本心は違う気がする。だとしても、考えてる時間はない。こうなったら、実力行使だ。



 そう思った私が行動に移すより早く、ミレイが男の鳩尾を蹴り上げていた。男が呻き、床を転がる。男はピクとも動かない。



(死んでないよね……)



 まぁ、自分も似たようなことしようとしたけどね。



「サス君、一回り大きくなって!! 一気に、この階層を突破するよ!!」



 ここは十八階層。引き返すより、進んだ方が早い。



「その必要はありません。サスケ様に、このような汚物を背負わせるわけにはまいりません」



 汚物って……確かに、トイレに似た臭いがしてるけど。



 ミレイの男を見る目が一段と冷たい。凍ってしまいそうなほど冷たい。思わず、身震いしてしまった。



「だったら、どうするの?」

「このまま置いて行きますか? 気を失っていますので、痛くはないと思いますが」

「ミレイ!!」



 冗談でも、言っていいことと悪いことがあるでしょ!



「冗談です」

 しれっと、ミレイは答える。



(嘘をつけ!!)

((嘘だ!!))

(嘘だよね)




 ミレイを除く全員が、心の中で総突っ込みをいれた。



 そんな私たちを無視して、ミレイは男を抱える。マジで、抱えた。お姫様だっこでだ。エルフの血を引いている美少女が、大の男をお姫様だっこ……



 そのシュールな光景に、私たちは唖然とし、顔を引きつかせる。



「早くこの場所を離れましょう。ムツキ様」



「……そうだね」



 考えるのは止めよう。うん、そうしよう。



 そして私たちは、大きなリュックを背負いながら、大の男をお姫様だっこしたメイドと一緒に、急いでその場を離れた。



 十八階層の終点、十九階層に続く通路の手前まで無事到着した途端、ミレイは男から手を離した。支えを失い、男は背中を強く打ち付け、今度は蛙の潰れたような呻き声を上げた。






 お待たせしました。

 またしても、こんな時間になってしまい、本当にすみませんでしたm(__)m


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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