〈第四十一話 才能〉
ーー洞窟ダンジョンに潜って、四日目。
今私たちは、十三階層を進んでいる。
生い茂る蔦の一本を両手で掴み、軽くクイクイと引っ張った。大丈夫そうなので、私は倒れた大木の幹に足をかけ、一気に登り飛び降りながら、私たちは最短ルートを進んでいる。
道がないわけじゃない。中型の獣が三頭通れるか通れないほどの、道幅がある道がちゃんとある。道としての機能ははたしてないけどね。木が倒れ道を塞いでいるのは、当たり前。倒れかけた大木から垂れ下がる蔦が、前方を塞いでいることも当たり前。
そう……十一階層から十四階層までは、〈密林のダンジョン〉だった。
〈密林のダンジョン〉だけあって、湿度も高く、気温も高い。立ってるだけで、じわっと汗ばんでくる。
「ねぇ、もうしんどいから、一気に燃やしていいかな」
珍しく苛々しながら、私は従魔トリオに提案する。
道を確保しながら進むのは、非常に時間がかかった。これが〈草原のダンジョン〉なら、当にセーブポイントに着いている時間のはずだ。
「仕方ない。やってもよいぞ」
シュリナも苛々していたのだろう。不機嫌そうな、少し固い声で許可した。
『御守りを作ったのを思い出せ!』
シュリナらしいアドバイスだ。
『うん! 分かった!』
私は頷く。
(昨日は三個も、御守りを作ったんだ。大丈夫!!)
「では、いきます!! 皆、後ろに下がっててね!」
私は右手を前に突きだすと、魔力を掌に集める。御守りを作った時の要領で、少しだけ魔力を練る。時間もかからず、スムーズに出来た。そして、声を出さずに【ファイアーボール】と唱えた。
「「「「「ーーーー!!!!」」」」」
私を含めて、驚愕し息を飲む。
掌から放たれた炎は、柱を作り、周囲一メートル範囲を灰にした。
「やったぁ!! 皆、今までの中で一番まともだったよ。こんな小規模初めて!!」
私と従魔トリオは喜ぶ。
「…………小規模? これが……」
しかし、ミレイだけは違っていた。少し離れた場所で、難しい顔をしながら、喜び合う私たちを凝視している。
この十三階層に来るまで、主に戦っていたのはフェンリル(実際は狛犬)だった。従魔たちの主である少女は後方に回り、サポート役に徹していた。自分の周囲にも結界を張っていてくれていたことを、ミレイは気付いていた。
テイマーが、従魔に戦わせることは普通だ。故に、ミレイはこう考えていた。攻撃は従魔、特にフェンリルに任せ、防御は少女が担っているのだと。
だが、現実は違う。
この威力の魔法を小規模と言い、ましてや、無詠唱で魔法を放っていた。その事実に、ミレイは言葉を失ったのだが、目の前にいるこのパーティーは明らかに違っていた。
正式なハンターになった当日に、潜在能力の高さからシルバーカードを手にし、二回の依頼をこなしただけで、ゴールドカードを手にいれた少女。
ーー今までの歴史の中で、類をみない天才。
そう呼ばれる背景には、従魔の能力が反映されたものだと、ミレイは考えていた。その考えは、ミレイだけではないだろう。多くの者がそう思っているに違いない。それもまた、実力だと。それほど、少女が従えている従魔たちは魅力があり、超がつくほどのレアな魔物なのだ。
二日前。
九階層に入った途端、魔狼に教われた時、何故魔狼のリーダーは仲間を無惨に殺されているのに、自分たちを襲わなかったのか、ずっとミレイは気になっていた。
フェンリルが怖かったからか。
幼体とはいえ赤竜が怖かったからか。
そのどちらか。
それとも、両方か。
答えは分からないが、従魔たちを怖れた結果だろうと納得していた。不意に、ミレイは思い出す。
あの時、魔狼の視線の先にいたのは、従魔たちではなく、目の前にいる少女だったということを……
魔狼は本能的に感じとっていたのだ。もし手を出せば、群れ全体が狩られることにーー。だから、群れを大事にする魔狼が、群れを守るために、仲間を見限った。
ーー類をみない天才。
そう称される少女の才能の一旦を、この時、ミレイはしっかりとその目に焼き付けたのだった。
お待たせしました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




