第17話 今日から訓練が始まります。
王様との挨拶を終え、一度部屋へ戻ってきた。
……緊張したけど、無事に挨拶できてほっとした。
ベッドに腰掛け、小さく息を吐く。
そういえば、この世界に来てまだ三日目なんだ。
たった三日しか経っていないのに、ずいぶん長い時間を過ごしたような気がする。
最初はどうなることかと思った。
ルシアスさんもノアさんも、ナタリーさんやオスカーさんも。それに、王様も……。
この世界で出会った人たちは、みんな優しかった。
本当に、よかった……。
コンコン。
「リア殿、お迎えに来ました。」
「あ、ノアさん!」
扉を開けると、ノアが待っていた。
「それでは、昼食へ向かいましょう。」
朝食は緊張であまり食べられなかったから、お腹がペコペコだった。
(お昼、いっぱい食べよう……)
そんなことを考えながら歩いていると、
「今日は昼食をたくさん食べられそうですね。」
「えっ!?」
思わず足を止める。
「な、なんで分かったんですか!?」
「朝食、あまり召し上がっていませんでしたから。」
「……見てたんですね」
恥ずかしくなって頬をかくと、
「食事はしっかり取らないと、午後の訓練で倒れてしまいますよ」
そう言って、ノアは優しく笑った。
結局、朝食を食べられなかった分までしっかり食べてしまった。
「食べすぎたかも……」
お腹をさすりながら、オスカーの待つ魔法研究室へと向かう。
コン、コン、コン。
「お疲れさまです。ノアです」
ノアが研究室の扉を叩く。
「待っていたよ、二人とも!」
勢いよく扉が開き、オスカーが笑顔で迎えた。
「今日から、よろしくお願いします!」
リアはぺこりと頭を下げる。
「こちらこそ。こんな可愛いお嬢さんと魔法の訓練ができるなんて光栄だよ」
オスカーは口元を緩め、リアを見つめた。
「先生!」
ノアが呆れたように眉をひそめる。
「着いて早々、口説かないでください」
「おっと、これは失礼。事実を言っただけなんだけどね」
肩をすくめるオスカーに、ノアは深いため息をつく。
「リア殿、この人の言うことは半分くらい聞き流して大丈夫です」
「ふふ……、わかりました」
リアがくすりと笑うと、オスカーは胸を押さえて大げさによろめいた。
「ひどいなぁ、ノアくん。先生はいつだって誠実なのに」
「その台詞、昨日も別の女性に言ってましたよね」
「……細かいことは気にしない」
研究室に小さな笑いが広がる。
そんな和やかな空気の中、オスカーは表情を少しだけ引き締めた。
「さて、そろそろ始めようか。まずは、一週間の目標を決めるところからだ」
「はい!目標は、一週間で魔力をコントロールして安定させることです!」
リアは元気よく答えた。
けれど、ふと不安がよぎる。
「あ……でも、さすがに一週間じゃ無理ですかね?」
先ほどまでの勢いが少しだけ弱まる。
「リア殿、大丈夫ですよ!自信を持ってください」
ノアが優しく声をかける。
「そうだねぇ。普通の人なら、一週間で魔力を安定させるのは難しいけど……」
オスカーはリアを見つめ、楽しそうに笑った。
「お嬢さんなら、なんだかできちゃいそうな気がするねぇ」
その言葉に、リアは少しだけ表情を明るくした。
⸻
その日は、ひたすら自分の意思で魔力を手のひらへ集める練習を繰り返した。
最初は思うように魔力が集まらず、何度も失敗してしまった。
それでも、繰り返すうちに少しずつ感覚を掴んでいく。
気付けば、外はすっかり暗くなっていた。
訓練を終えたリアは、汗を流すために浴室へ向かい、その後は夕食を済ませる。
そして――。
長い一日を終え、眠りについた。




