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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
第一章:ダンジョンについての有識者会議
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1−4:ミスリルあるかな

翌日。

 大学は、思ったより普通だった。

 いや、普通じゃない。

 普通じゃないんだけど。

「おはよー」

「おー」

「昨日ニュース見た?」

「見た見た」

 みんな普通に登校している。

 講義もある。

 教授も来ている。

 いつも通りと言えば、いつも通り。

 ただ。

「これダンジョンだったら面白くね?」

「お前ラノベ読みすぎ」

「でもワンチャンあるだろ」

「ねーよ」

 あちこちでそんな会話が聞こえる。

 まぁ、気持ちは分かる。

 俺だって昨日は寝る前に少しだけ考えた。

 もし。

 本当に。

 万が一。

 ダンジョンだったら。

「……」

 いや。

 ないない。

 さすがに現実だ。

 現実でダンジョンなんて。

 あるわけが──

「錬司」

「ん?」

「もしダンジョンだったらさ」

「おう」

「お前絶対行くよな」

「いや?」

「え?」

「目的次第」

「目的?」

「素材ある?」

「は?」

「ミスリル」

「……」

「オリハルコン」

「……」

「アダマンタイト」

「……」

「ある?」

「知らねぇよ!」

 教室中が笑った。

「お前さぁ!」

 友人が腹を抱えて笑う。

「普通さ!」

「うん。」

「強くなりたいとか!」

「うん。」

「魔法使いたいとか!」

「うん。」

「そういう発想じゃねぇの!?」

「別に。」

「別にって」

「刀が作れればいい。」

 それだけだ。

 強くなるとか。

 有名になるとか。

 正直、その辺はどうでもいい。

 もしダンジョン素材なんてものが本当に存在するなら。

 その金属で刀を打ってみたい。

 ただ、それだけ。

「変わってんなぁ……」

「よく言われる。」

「お前ダンジョンあっても戦わないの?」

「戦う必要ある?」

「いや、モンスター倒さないと素材取れないだろ。」

「あ。」

 それは盲点だった。

「……」

「……」

「どうした。」

「倒さないとダメかぁ。」

「そこかよ!」

 また笑われた。

 いやでも。

 考えてみればそうだ。

 鉱石だけ拾って帰れるほど甘くないよな。

 ゲームでも敵はいるし。

 ……ゲーム基準で考えてる時点でどうなんだって話だけど。

「まぁ、まずダンジョンじゃないし。」

「それな。」

「夢見すぎ夢見すぎ。」

 そんな話をしながら席につく。

 教授が入ってくる。

 講義が始まる。

 ……始まるはずだった。

 ピロン。

 教室中のスマホが、一斉に鳴った。

「あ。」

「緊急速報?」

 誰かが呟く。

 教授もスマホを見る。

 数秒後。

 教室の空気が変わった。

 教授が、小さく息を呑む。

「今日は……休講だ。」

「え?」

「全員、すぐ帰宅しなさい。」

 その声は、さっきまでとは違っていた。

 教室中がざわつく。

 俺もスマホを見る。

 画面には、短く一文だけ表示されていた。

【政府発表】

全国で確認されていた空間の歪みに、新たな変化が確認されました。

「……変化?」

 その一文だけでは、何も分からない。

 だけど。

 胸の奥が、少しだけ高鳴った。

 怖い、というより。

 期待してしまっている。

 そんな自分がいることに、苦笑いする。

「……いやいや。」

 落ち着け。

 まだダンジョンって決まったわけじゃない。

 でも。

 もし、本当にそうだったら。

 ミスリル、あるかな。

 そんなことを考えてしまうくらいには、俺も立派なファンタジー好きだった。


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